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ファーマータナカのデイリーリポート

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2010年07月31日
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カテゴリ:栽培

7月某日のトマトの収穫量は257kg、そのうち裂果は96kgであった。
実に37.35%、収穫量の4割近くだ。
裂果とは読んで字の如く、トマトが裂けること、すなわち、収穫期近くになり,果実表面が果実内部の圧力に耐えきれず,はじき割れることである。

裂果の山

トマト作りは何年たっても、なかなか極めるには程遠い。
又、何とか収穫まで辿り着けたとしても、全てが商品になる事など有り得ないのだ。
(他の農産物でも同様だろうが、概ね葉菜よりも果菜の方が、栽培技術がより要求される)
障害果と呼ばれるものだけでも、乱形果、空洞果、すじ腐れ果、尻腐れ果、頂裂果、裂果、網果、日焼け果、軟果、ヘタ枯れ果、ゴーストスポット等々があり、まともな出荷をこれでもかこれでもかと妨害するのだ。
各々の原因や対策については又機会があれば後述したいと思うが。

その中でも裂果の発生はトマト農家において、悩みの種の最たるものだ。
まず、規格が厳密に定められているいわゆる市場出荷ができない。
A品(秀品)率の極端な低下は、平均販売単価の大幅な下落を意味する。
今はやりの産直(直売所)に出せばいいと思われるかもしれないが、裂果によって、トマト果汁が漏れ出し、これにすぐ子蝿が集(たか)り、いかにも不衛生であり、当然見た目も悪く、売れるどころかクレームの対象だ。
近所にお裾分け、あるいは加工といっても、ソースやジュースにする手間や設備が必要で、半端な量ではない上に、これだけの量が出るという事は当然収量も多くて、収穫出荷調製に多忙を極めており、ファーマータナカも就農当時は泣く泣く廃棄していたものだ。
(トマトジュース加工場を作ってからは、それはそれで又大変なのだが、他のトマト農家さんよりは、悩みや心労は軽減された。)
要するに裂果の多発は、可販果収量の低下と選別作業に多大な労力を要するという事だ。

裂果には、がくを中心に同心円状に裂果する同心円裂果、がくから放射状に裂ける放射状裂果、側面裂果や裂皮などがある。

裂果

裂果発生の原因をみていこう。
いずれの裂果も、果皮の表皮の弾力性がないのに内部からの膨圧が強いと、それに耐えきれずに裂けるのである。
裂果は一般的に、未熟果では起こらず、着色期近くになると発生する。

まず、最大のポイントは水分との関係だとされる。
すなわち、露地栽培の場合は雨がトマトに当ると割れやすくなり、降雨や潅(かん)水により急激に根から水を吸うと、果実肥大が進むため割れやすくなるとされる。
(果実が結露しても割れやすくなる。)
通常根から吸収された水分は葉から蒸散されるが、その量が少なく蒸散されなかった水分が 果実に流れ込むため、果実が膨張し裂果するというわけだ。

因みに「蒸散」とは、植物体内の水分が、水蒸気となって空気中に放散する作用をいい、葉の裏に多い気孔からおもに行われる。
根から水を吸い上げ、葉温を低下させる役割があるが、その蒸散量を決める外部要因には、気温・ 湿度・ 太陽光の光強度(吸収放射量)・水蒸気の拡散速度(風による撹乱)・ 土壌の水分含量等があり、問題を複雑にしている。
ある報告によれば、施設内で栽培されたトマトの吸水量の95%以上が蒸散に使用されていたといい、又晴天日の水分蒸散量は約1?/株であるという。

次に湿度(と気温)との関係だ。
水分を蒸散させるために、トマトは葉の表皮に気孔という小さな穴を備えており、この気孔は気温と湿度により開閉する。
例えば気温25℃で湿度40%では気孔は55%開き、湿度80%ではほぼ全開となる。
しかし、湿度100%では気孔内の湿度も100%なので水蒸気圧の差が無くなり蒸散が行われなくなるのだ。
梅雨の時期の裂果多発は、この湿度との関係が大きいと思われる。

しかし湿度が低ければいいというものでもない。
高温乾燥や強日射により、果皮が硬くなってしまうからだ。
(なお低温でも果皮は硬くなるというからますますやっかいだ)
果皮が硬くなっているところへの水分の流入は当然裂果を招いてしまう。

又カルシウムやホウ素が不足すると裂果が増えるとされる。
しかしこれも施用すればよいというものではなく、施肥バランスが崩れたり、根が弱ったりしても微量要素不足がおきてしまうのだ。
ホウ素は他の要素と違って、植物体内の古い組織に存在するものが新しい成長点に向かって養分移動することはない。
又 ホウ素が欠乏すると、根における石灰の吸収が不十分となり、その成長が著しく阻害される。
又ホウ素は水分代謝と密接な関係がある。
ホウ素が欠乏すると、葉の中に存在する炭水化物の含有量が増加し植物内の浸透圧は上昇する。
そのため、植物体の水分の保蔵力は増大して葉面からの蒸散量は減少する。
以上のようなメカニズムで、ホウ素不足が裂果を招くとされている。

それから裂果しやすい、品種というものもある。
トマト農家はやっかいな黄化葉巻病という新しい病害に悩まされており、日本でもここ数年やっとそのウイルスに耐病性のある品種が発売されたのであるが、その中の「大安吉日」という品種を栽培しているが、聞いてはいたが、この時期この品種の裂果率は驚くべき事に当ハウスではおそらく60~70%以上だ。
やっとすがった耐病製品種は、病気は発現しないが、割れて商品にならないのである。

以上のような裂果発生原因に対して、対策としては、
・ 多潅水を避ける。
・ 日焼け防止のため、果実を日に当てない工夫(遮光・葉で隠す・葉かきを抑える・小さい葉にしない)をする。
・ 赤くなる前は裂果が少ないので、完熟以前の青いうちに収穫する。
・ 割れない品種選定をする。
・ 高温低温、高湿度低湿度にしない。
等であるが、現実には一長一短だったり、あちらを立てればこちらが立たずといった按配で、これといった決定打はなく、やはり大部分は自然の摂理を受け入れるしかないのが現状だといってよいと思う。

ファーマータナカをはじめとする農業者が、何度も何度も叩かれながら、市場そして消費者の方々に農産物をお届けしている一端を知っていただければ幸いである。






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Last updated  2010年08月01日 08時45分49秒
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