トマト等の果菜類は、サラダ菜等の葉菜類に対して、一般的に栽培が難しいとされる。
その理由は、果菜類が、いわゆる栄養成長(種子植物が発芽後葉や茎などの栄養器官だけを分化形成すること)と生殖成長(生殖器官を分化・形成し、開花結実するまでの一連の過程のこと)を早い時期から同時に行うので、そのバランスが上手く取れないと、良質な果実がとれなくなるからだ。
一方葉菜類は、栄養成長の段階で収穫してしまうので、その点が異なるというわけだ。
ただし、例えば、レタス類だと高温長日下で花芽分化が促進されるので、いわゆるとう立ち(抽台という)が発生して困ることもあるが。
ファーマータナカのトマト栽培においては、恐ろしいウイルス病である黄化葉巻病の発生の危険が常に存在するため、選べる品種がほとんどない(良質な耐病性種子が開発されていない)ことや、冬季の暖房のための重油価格の高騰持続で、適正な夜温の確保ができにくくなっているため、トマトの品質確保が難しくなってきているという現実がある。

さて、迸(ほとばし)るスタッフからのラブコールか、はたまた会長(愚妻)からの「惚れなおしたよ。」の熱烈サインと言うのは解らないではないが、見た目には、如何にもハッピーで微笑ましいと思われるだろう、いわゆるこれら乱形果(変形果)の多発は、現実には秀品率の低下により、経営に多大の悪影響をもたらすのだ。
乱形果の果形は千変万化で一定の形には現われず、果頂部の裂開するもの、溝の極端に深いもの、すじが入るもの、ネーブル型、多心型、指出型、楕円型などさまざまである。果実の形の乱れを総称して乱形果としている。
実はこの乱形果は果実の小さいときから現われていることが認められる。
さらに花芽の発育中にすでに乱形の兆候を示し、開花時にははっきりと認められるのが特徴で、花芽分化期ごろに原因があるというのだ。
乱形果の発生は、育苗期の低温、床上の多肥、多湿などによる草勢の旺盛なトマトに多く、低温期の栽培に多いのが特徴であるとされる。
ここで果形と子室数の関係を見ると、正常果の子室数は4~8で少ないが、乱形果では明らかに多いことが示されている。
つまり子室数の多い果実はど乱形果になる可能性が高いことがうかがわれる。

苗の栄養状態が良好なばあいに花芽の発育が助長され、花の各器官の分化発育が旺盛となる。
そして子房が大きく、子室数が増大するが、これら多子室の子房から発育した果実は各子室の発育が不均衡になりやすい。
そのために乱形果として発達することが多いものとみられるそうだ。
まとめると乱形果は、花芽分化期ころに原因があり、その発生条件は低温、多肥、多灌水などによって生長点における栄養状態が濃厚となり、そのため分化、発育中の花芽に過剰の養分が供給され、花芽は栄養過多となって細胞分裂が旺盛となり、心皮の生成数が多くなる。
これら多心皮の花では、開花後果実として発育するときに各子室の発育が不均衡になり、乱形果として発達するというわけだ。
この他にも、軟化をはじめとして、裂果、そしていよいよ尻腐れ果多発の時期となる。
美味しいトマト作りは、毎年困難を極めたチャレンジの連続であることをご理解いただきたい。
参考文献:農業技術体系(農文協) 他