食料・農業・農村に関する意識調査
全国農業協同組合中央会(JA全中)は、全国の20歳から69歳までの男女1,000人を対象に、「食料・農業・農村に関する意識調査」を実施した。(goo ビジネスEX プレスリリース 平成22年12月16日)この調査は、食の安全性や、日本農業への関心、食料自給への考え、食料品の購入基準などについて毎年実施しているものだ。今年の調査結果のトピックスとして、食料品の購入基準について、前回調査まで1位回答であった「賞味期限(鮮度)」より「価格」と回答した方の割合が高くなったということが挙げられる。食料品購入基準は「価格」が最優先!となり、リーマンショック以降、長引く不況による節約志向の傾向が顕著になっているのだ。具体的に見ていくと、食料品を購入する基準としては、前回調査で1位回答であった「賞味期限(鮮度)」(58.2%)に代わり、「価格」(58.9%)を基準にする人が最も多くなった。性・年令別にみると、「価格」を購入基準としているのは、男性30代と女性20代で特に多い。「国産品であること」を基準にしているのは、女性が全般的に高い。一方、国産食料品の輸入食料品に対する優位点は「安全性」「品質」「鮮度」が上位3点であり、前回調査と同様となっている。ついでに主だったものを以下にもう少し詳しく見ておこう。・ 3位 国産品であること(52.0%)・ 4位 味がよいこと(28.9%)・ 5位 産地(生産者)(23.6%)・ 6位 食品添加物が含まれていない(少ない)こと(13.7%)・ 7位 無農薬(低農薬)生産であること(11.3%)・ 9位 有機栽培で生産されていること(3.7%)・ 12位 生産履歴(1.6%)等となっている。これによれば、一般的によく言われる、生産者の顔がみえる・食品添加物・減農薬まではまあそこそこだが、有機栽培・生産履歴(トレーサビリティ)に至っては、現実の消費者は殆ど意に介していないといってよい。ファーマータナカは、現実がそうだからと、下位の購入基準はどうでもいいのではといっているわけではない。ここまで行き着いた、デフレと「低価格志向」を真剣に憂えているのだ。流通業界の中でも特に「味」にこだわってきた大手小売業セブン&ホールディングのカリスマ経営者も「時代は価格優先に変化した」とコメントしたいう。低所得者層が増えると巨大資本の大量生産、大量仕入、低価格商品が競争力を増す。本来品質、外観、サービスに煩(うるさ)かった日本の消費者が低価格品にシフトせざるを得ない社会状況があり、その現実は逆に、彼らにはチャンスとなっているのだ。一時期、本当に美味しくて安全な食材を手に入れようとする動きもあったし、一部(高額所得者)にはその動きは継続あるいはエスカレートしているのも事実だろう。しかし八百屋、魚屋、肉屋などの専門店は、様々の理由もあってだが、安値競争に負けてほとんど姿を消した。高級量販店やデパ地下が賑わっているともいうが、渋滞・駐車・交通機関による買物では荷物が重い等一般の中高年には、足が重い。 味や新鮮さを売りにした直売所も増えブームとなったが、その直売所にスーパー・JA・民間業者等が2匹目のドジョウを狙って相次いで参入、結果は安心安全新鮮の御旗を掲げた直売所自体が安値競争に巻き込まれ、農家の高齢化もますます進んでいることもあり、良心的直売場は姿を消しつつある。一方、こだわりや高級さや付加価値食品を勝ち残りの活路のひとつと想定していた量販店や外食企業は、その取り巻く環境の激変と、実際上はそういった食材がロット・実売数・利益・安定供給等の問題もあったと思われるが、建前はともかく、流通側の本音は「価格最優先」に切り替わってしまい、テーマとしての理想はいいのだが、現実には関心は薄れてしまっている傾向があるようだ。自由化の流れも誰にも止めることはできないだろう。今回は、上記レポートをきっかけに、「低価格志向」の現状と問題点を見ていったわけだが、その解決策を、生産者・流通業者・消費者が一体となって緊急に論じ、対応していかねばならないのだ。(参考URL:いい野菜.com>ブログ)