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カテゴリ:WRC
シトロエン・スポールが開発したクサラWRCは今季からプライヴェーターに委託され、事実上ワークス参戦から撤退しています。しかも、このクサラの起源は古く1999年のFWDベースのキット・カーまで遡ります。実際にはWR カーとなったは2001年からになりますが、実に5年間ものあいだ大幅なモディファイを施すことなく改良に改良を重ねて勝利を積み上げてくる辺りは「熟成のスバル」のお株を奪う長期熟成ぶりです。さすがワインの国フランスのメーカーと言えるでしょう。 シトロエンのエース、セバスチャン・ロウブは今季も既に5勝を上げ、余程のことが無い限りほぼタイトルを手中にした状態。ライヴァルの低迷ぶりから言うと、恐らく今年は心配ないでしょう。まァ、シトロエンを脅かす存在が無いわけではありませんが「今そこにある危機」という感じではありません。 前回までのコラムでIMPREZAが復権するために必要なことを検証してきましたが、それ以上に重要なのは何故そこまでシトロエンが強いのか?という敵を分析検証して知ることでしょう。 シトロエンも毎年改良を加え熟成を続けてきたとは言っても最新鋭のワークス・マシンを相手に今季5勝も上げているにはそれなりの理由があります。 まずエース・ドライヴァーのセバスチャン・ロウブのテクニックもさることながら、シトロエン・クサラWRCは同じクロノス・トタル・シトロエンWRチームからエントリーしたX・ポンスも第7戦のサルディニアで4位。チーム・ダニエル・ソルドからエントリーしたプライヴェーター、D・ソルドも3位フィニッシュし、サルディニアでは1、3、4フィニッシュを達成しています。これはクサラの安定感とドライヴァビりティの良さがなせる業だと思います。 ところがそのエンジニアリングそのものに目を向けるとごく普通の当たり前のような作りでしかありません。技術的にはフォードやスバルのワークスよりも一歩も二歩も遅れつつあるのが現状なのです。それでも8戦中5勝です。ラッキーでこれほど勝てるわけはありません。 悪く言えば時代遅れにさえなりかねないマシンの強さの理由は、あくまで僕個人の意見としては「最新の自動車エンジニアリングのトレンド」をキッチリ踏まえて作られ、一つの完成形に達しているからだと思うのです。 最新の自動車エンジニアリングのトレンドと言えばクルマの四隅にタイアを配置して、シャシが持つ能力とタイアが持つ能力の双方をしっかり使えるようにすることです。最近のコンパクト・カー(軽自動車を含む)はほとんどがこの手法をベースにして設計生産されています。 タイアが四隅にあれば前後左右への過重移動もしやすいため回頭性の高いマシンになります。また、その一方でホイール・ベースは延伸されますので安定性は高まります。回頭性と安定性をバランスさせるなら前後のオーヴァー・ハングは切り詰め、回頭性を犠牲にしない程度にホイール・ベースを確保するのが強いマシンのセオリーとも言えます。そして、この前後のオーヴァー・ハングは無論エアロダイナミクスにも影響を与えています。 実はこの前後オーヴァー・ハングのバランスとホイール・ベースの長さを慎重に吟味しながら設計されたのはフォード・フォーカスWRC2006です。 ホイール・ベースはIMPREZAよりも95mm長く、クサラWRCよりも85mm長いホイール・ベースを持っているにもかかわらず、全長差はIMPREZAに対して63mm短く、クサラに対しては166mm長いのです。このことからも、フォーカスの前後のオーヴァー・ハングは極めて短いことが解ります。 フォーカスはエンジンの搭載位置、サスペンションのジオメトリー等でまだまだ熟成の余地がありますが、WRC 2006のパッケージング自体は悪くないと思うので、今後外野の声や雑念に惑わされずに熟成を重ねていけばクサラを撃墜するマシンになることは可能でしょう。 その甲斐と運が味方したこともあって第8戦アクロポリスでフォーカスは1位と3位でフィニィッシュしています。 スバルもこういったクレバーで速いマシン作りが求められています。最先端の技術ばかりで速くなればエンジニアはいらないですし、常に新しいことを試すことがプラスになるとは限りません。 前回のコラムでも書きましたがぺターのスタイルは一見地味に見える針の穴を通していくような精緻なドライヴィングです。そんなぺターのスタイルには安定性と回頭性のバランスに優れたマシンが絶対条件です。 明日は「シトロエンに見るWRCの戦い方」Part2をお送り致します。なんだか、最近一回では終わらないことが多くなって参りました。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 28, 2006 09:53:29 PM
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