宿敵(下)
6年前に借りて読んだときを思い出すと。熊本の加藤清正、宇土の小西行長、二人を封土したのは豊臣秀吉。なるほど、秀吉には二人を競わせ、競争心を煽ることで豊臣家の繁栄を目論んでいたのか!!という視点で読み進めた。それと秀吉が死去したのは自然死ではなく、子飼いの部下による暗殺という推理小説のようなミステリー要素を織り込みながらその大胆な発想に驚きながら読み進めた。以上のことを知ったうえで読み進めた今回。清正と行長のどちらに感情移入したかといえば、行長のほう。面従腹背という、二面性を持つことを選択した男の苦悩というテーマに通じるのやもしれません。例えば私たち会社に勤務する者にとっては、多かれ少なかれ、『長いものには巻かれろ』ということが多いのですが、そんな中でも腹背しているケースってありませんか?(私もそうです)そういう輩にとって、小西行長の苦悩は身につまされる体験とシンクロしながら読みます。その対比として登場するのが『反逆』でも登場してきた高山右近。『嗚呼、俺もキッパリとNO!と自己主張したいよ』というサラリーマンのため息が聞こえてきそうです。行長の妻『糸』この女性も凛としている佇まいがいいです。遠藤周作はクリスチャン女性の凛としたビヘイビアを美しく紡ぎだしますね。清正の妻が嫁取りの場面でしか登場してこないのに、行長の妻『糸』は行長が選択を迫られたり、苦悩したり、閉塞感に襲われているとき、様々な場面で登場してくる。行長が妻の助言や励ましにより、彼なりの闘いを選択していく物語の展開に今回は感じ入った。 十六 絶望の日々 十七 狐と狸 十八 ひそかな反逆 十九 暗殺の計画 二十 英雄の老醜 二十一 伏見の夜 二十二 大芝居 二十三 夢は破れ 二十四 愛のために 二十五 運命に流され 二十六 幕の降りるとき 二十七 決戦の日 二十八 死の日近づく 二十九 つわものどもの夢の跡 三十 空また空