2007/07/12(木)12:52
『神様のパズル』機本 伸司/ハルキ文庫(2006/05)
表紙のイラストからすると、ふつうのライトノベルかとおもいきや、読んでみると量子論の議論が飛びまり、コンピュータ内仮想宇宙まで出てくるばりばりのSFだった。
しかし、ベースにあるストーリーは青春小説だったりする。
主人公は、大学4年生。好みの同級生の女の子を追っかけて同じゼミを取る。そこは、素粒子物理学研究室。
このゼミの学生は、16歳の天才少女の理論を実体化させた加速器の試験稼働を手伝うことになる。
その天才少女も同じゼミにいるが、不登校になっている。
主人公は、担当教授から、その少女をゼミに参加させる任務を与えられる。
そのきっかけになったのが「人間に宇宙は作れるか?」という疑問。
宇宙を作るには、宇宙の正体を理解しなければらない。
天才少女は、その疑問を解決するため、統一場理論を完成させる。
その過程で、グリッドコンピューティングを使い宇宙創成シミュレーションを行う。
とまぁ、現在の物理理論に明るくないぼくとしては、この小説の中で展開される量子論から統一場理論までの理屈を理解できたわけではないし、どこから想像された理論なのかも判断できない。
興味深いのは、光(光子)とは何か、という疑問に答えが出たところだ。
光とは、場が高速で移動しているものだ、と結論づけ、それにより粒子と波の相反する性質を持つことができる、と説明している。
はたして、この考え方は、現在物理学では常識なのか、作者のフィクションなのかは、判断つかないのだが、なんとなく正しそう、と思わされたところに、すっかり作者の術中にはまっている。
メインストーリーの青春小説部分は、あまり好ましい話ではなかったが、こうした量子論を楽しむ部分においては、十分に読む価値がある小説だと思う。
それにしても、ハルヒシリーズの直後に読んだためか、妙に印象が似ている。
破天荒な少女に振り回される主人公の少年、という構図がそっくりだ。
こうしたキャラ作りが、いまどきの流行りなのだろうか。