冬の七夕
在職当時、密かに『冬の七夕』と名づけていた日がある。年始の業務開始から最初の月曜日。この日の1・2人目に、必ず、この日だけお見えになる方がいた。サービス内容も、きまって年賀状の音訳。和服で見えられ、椅子の上に正座される。宛名から察すると、邦楽の先生のようだ。年賀状の多さから、かなり名のある方かも知れないが、その世界に疎い私には分からない。音訳は、差出人・絵柄の説明・本文・添え書き。その他のポイントは1, 官製葉書か、私製葉書か。2, 印刷か、手書きか。3, 添え書きがあるか。「官製葉書に印刷で、添え書きはありません。」「ふ~ん」とご不満そう。儀礼ではなく、相手を思う心情の一言があればご満悦。読み終わった葉書を手渡すと、上部に、「殿」「様」と点字を書かれ、仕分けされる。通常、1日1人1回(90分)と、決められているサービスだが、お仲間のYさんのお名前を借りて、180分の予約をなさる。Yさんは、会館で、月曜日に、お琴の教室を主宰されているので、ちゃっかり利用されている。予約表を見てYさんの時間ですと、告げる前に「了解して貰ってるから」と先手をとられる。それでも、ご本人を前に「規則違反です」とは、なかなか言えないものだ。視覚障害者の方の外出が、どれほど大変なものか、分かるだけに、断れなかった・・・