66525329 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

FINLANDIA

FINLANDIA

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Category

Keyword Search

▼キーワード検索

Archives

2024年04月
2024年03月
2024年02月
2024年01月
2023年12月
2023年11月
2023年10月
2023年09月
2023年08月
2023年07月

Freepage List

2017年08月05日
XML
カテゴリ:Hiekka aikaa
14523809394_51642cda4e_z.jpg
Photo by Dale's Eye View
images.jpeg
 
 
 

 

“蘇生”
「“皆土”を盛って作ろうぞ生活環境」9
 “エルの物語”  戦士エルは、炎を浴びる前に蘇える。

 
「引き寄せの法則」の考察から始まった本稿、
『国家』第10巻末の“エルの物語”でひとまず締めようと思います。
プラトンの「正義」と「不正」の定義は『国家』前半部を読んでもらうとして、
ソクラテスは、「魂の「正義」を実行する者は、
(日本でいうところの“天狗の隠れ蓑”に相当する)
ギュゲスの指輪やハデスの兜を持っていようがいまいが、
正しいことを心がけねばならぬ」と述べているのです。
何しろ、姿が透明になる魔法のアイテムを使えるならば、
巨万の富も! 海外旅行も! 豪華クルーザーでのパーティも! あれもこれも!
たとえ凡夫の身であれ、やろうと思えば
容易に実現できるであろうこと、想像に難くありません。

__そのような条件に関係なく、正義を行なうものの行く先と、
不正を行なう者の末路についての、ソクラテスの言葉を読んでみましょう。
 
 
 
 
  「さて」とぼくはつづけた、
 「これでわれわれは、さまざまな問題を議論のなかで片づけたわけだが、
 特に君たちが言っていたようなヘシオドスやホメロスのやり方と違って、
 われわれは正義について、その報酬や評判を讃えるということはしなかった。
 われわれが発見したのは、
 正義はそれ自体として魂それ自体にとって最善のものであるということ、
 そしてギュゲスの指輪を持っていようといまいと、
 さらにそのような指輪に加えてハデスの兜をもっていようといまいと、
 魂は必ず正しいことを心がけねばならぬ、ということだったね?」
  「まったくおっしゃるとおりです」と彼は答えた。
  「では、グラウコン」とぼくは言った、
 「いまならもう、これまで論じた事柄に加えて、
 正義その他の徳が本来もつべき報酬のことも認めてやったとしても、
 何も文句は出ないだろうね
 __正義の徳は魂に対して、人間たちからも神々たちからも、
 人がまだ生きている間も死んでからのちも、
 どれだけの、またどのような報酬をもたらすかを語ったとしても?」
  「ええ、おっしゃるとおりです」と彼。
  「それならひとつ、前に君たちが議論のなかで僕から借りたものを、
 返してくれるつもりはないかね?」
  「いったい全体、それは何のことですか?」
  「先にぼくは、君たちに一歩譲って、正しい人が不正な人間だと思われたり、
 不正な人が正しい人間だと思われたりするということを許した。
 それはほかでもない、君たちが、
 たとえ正と不正が神々と人間の目を逃れることは実際に不可能だとしても、
 なおかつ議論のために、そのことを認めねばならぬ、そうでなければ、
 正義そのものを不正そのものとくらべて判定することができないからと、
 ぼくに要請したからなのだ。
 __憶えていないかね?」
  「憶えていないとしたら不埒〔ふらち〕な話でしょう」と彼は答えた。
  「では」とぼくは言った、
 「その判定もすでに終わったいま、
 ぼくはこんどは、正義のためにその点を返還しよう
 __それが神々からも人間からも実際に受けている評判を、
 そのままわれわれも正義について認めるべきだとね。
 そうすれば正義は、正しいと思われることから獲得して
 正義の持ち主に授けるところの褒賞もまた、確保することになるだろう。
 正義が、正しくあることから由来する数々の善きものを与えるということ、
 正義をほんとうに自分のものとする人々をけっして裏切らないということは、
 すでにあきらかになったのだからね」
  「そのように要求されるのは正当なことです」と彼は言った。
  「では」とぼくは言った、
 「そのようなぼくの返還要求に応じて君たちがまず認めるべきことは、
 正しい人も不正な人も、
 それぞれどんな人間であるかは神の目を逃れることができない、ということだ」
  「返還に応じましょう」と彼。
  「しかるに、神々の目を逃れえないとすれば、
 一方は神に愛される人間であり、他方は神に憎まれる人間だということになろう。
 これは、われわれがそもそもの最初に認めていた結論とも一致する」
  「そのとおりです」
  「そして神に愛される人間には、およそ神から由来するかぎりすべてのことが、
 可能なかぎり最善のものになるということに、われわれは同意しないだろうか?
 その人が前世の過ちのために、
 何か避けられぬ不幸をはじめから背負っているのでないかぎりはね」
  「たしかにそのとおりです」
  「したがって正しい人間については、
 たとえその人が貧乏のなかにあろうとなかろうと、病いのなかにあろうと、
 その他不幸と思われている何らかの状態のなかにあろうと、
 その人にとってこれらのことは、彼が生きているあいだにせよ死んでからのちにせよ、
 最後には何か善いことに終るだろうと考えなければならぬ。
 なぜなら、すすんで正しい人になろうと熱心に心がける人、
 徳を行なうことによって、人間に可能なかぎり神に似ようと心がける人が、
 いやしくも神からなおざりにされるようなことは、けっしてないのだから」
  「たしかにそのような人間なら当然」と彼は言った、
 「彼が似ている相手からなおざりにされはしないと考えられます」
  「そして不正な人間については、
 ちょうどそれと正反対のことを考えなければならないのではないかね?」
  「大いにそのとおりです」
  「では神々からは、およそ以上のようなことが、
 正しい人への褒賞として与えられることだろう」
  「少なくとも私は、そう思います」と彼は答えた。
  「では、人間の側からはどうだろう」とぼくは言った、
 いまこそ真実を言うべきだとすれば、事情は次のごとくではあるまいか。
 __腕利きの不正な人々というものは、
 往路はよく走るが帰路はそうではない走者と、同じではないだろうか?
 彼らは、最初はすばやく跳び出すけれども、
 最後には、栄冠をいただくこともなく、耳を肩に垂らして逃げ去り、
 みなの笑いものになる。
 真の走者こそが、決勝点に達したとき賞を獲得し、栄冠をいただくのだ。
 正しい人々についても、事の成行きは多くの場合、これと同じではないかね?
 ひとつひとつの行為や人とのつき合い、また人生全体において、
 彼らは最後に至って好評を得て、人間たちから褒賞をかちうるのではないかね?」
  「たしかに」
  「それなら君は、君自身が前に不正な人々について言っていたことを、
 そのままここでぼくが正しい人々について語るのを許してくれるだろうね?
 つまり、ぼくが言おうとしているのはこういうことだ
 __正しい人々は、年が長じてから、望むならば自分の国において支配の任につき、
 どこからでも好きなところから妻をもらい、
 誰でも好きな者と子供たちを結婚させることができる。
 さらにそのほか、君が不正な人々について言ったことをすべて、
 そっくりそのまま、ぼくはいまこの人々について言うわけだ。
  他方もまた、不正な人々についてもぼくは言おう。
 __彼らの多くは、たとえ若いうちはその正体に気づかれずにいたとしても、
 競争路の最後まで来たときに、捕われて笑いものになり、
 年老いてからは、よそ者からも同市民たちからも惨めなありさまで辱めを受け、
 鞭打たれ、さらに、
 君がいみじくも残酷な話だと言ったさまざまな刑罰を受けることになるのだ。
 どうか、ああいうすべてのことを不正な人々は身に受けるのだと、
 ぼくが君にくり返すのを聞いたつもりになってくれたまえ、
 __しかしどうだね、
 もう一度言うが、ぼくがこういうふうに語るのを許してくれるかね?」
  「ええ、よろこんで」と彼は言った、
 「あなたの言われるのは正当なことですから」
 
  「それでは」とぼくは言った、
 「先に語られたような、正義がそれ自体だけで提供する数々の善いものとは別に、
 正しい人が神々と人間から褒賞や報酬や贈物として生存中に授かるものは、
 だいたい以上のようなものだということになる」
  「ええ」と彼は言った。
 「それらは大へんすばらしい、しかも確実なものです」
  「さてしかし」とぼくは言った、
 「これらのものは、正しい人と不正な人のそれぞれの死後において
 待ちうけているものにくらべるならば、
 数においても大きさにおいても、何ものでもないのだ。
 それがいかなるものかを、いまやわれわれは聞かなければならない。
 正しい人と不正な人のそれぞれが聞かされるべきことを聞いて、
 われわれの議論から借りとして支払われるべきものを、
 すっかり完全に受け取ってしまうために」
  「どうか話してください」と彼は言った。
 「わたしがこれ以上よろこんで聞くことは、ほかにはあまりたくさんないのですから」
  ぼくはその話を、次のようにはじめた。
  「さてそれでは、ぼくがこれから話そうとするのは、アルキノオスの物語ではない。
 これはひとりの勇敢なる(アルキモス)戦士であった、
 パンピュリア族の血筋をうけるアルメニオスの子、エルの物語である。
  そのむかし、エルは戦争で最期〔さいご〕をとげた。
 10日ののち、数々の屍体が埋葬のために収容されたとき、
 他の屍体はすでに腐敗していたが、エルの屍体だけは腐らずにあった。
 そこで彼は家まで運んで連れ帰られ、
 死んでから12日目に、まさにこれから葬られようとして、
 野辺送りの火の薪の上に横たえられていたとき、エルは生きかえった。
 そして生きかえってから、彼はあの世で見てきたさまざまな事柄を語ったのである。
  彼が語ったのは次のようなことであった。
 __彼の魂は、身体を離れたのち、他の多くの魂とともに道を進んで行って、
 やがてある霊妙不可思議な場所に到着した。
 そこには大地に二つの穴が相並んで口をあけ、
 上のほうにもこれと向かい合って、天に別の二つの穴があいていた。
  これらの天の穴と地の穴とのあいだに、裁判官たちが坐っていた。
 彼らは、そこへやってくる者をつぎつぎと裁いては判決をくだしたのち、
 正しい人々に対しては、その判決の内容を示す印しを前につけたうえで、
 右側の、天を通って上に向かう道を行くように命じ、
 不正な人々に対しては、これもまた
 それまでにおかしたすべての所業を示す印をうしろにつけて、
 左側の下へ向かう道を行くように命じていた。
  エル自身がそこへ近づくと、彼らは、
 お前は死後の世界のことを人間たちに報告する者とならねばならぬから、
 ここで行なわれることをすべて残らずよく見聞きするように、と言った。
  そこで彼は、一方において、魂たちが判決を受けてのち、
 天の穴と地の穴のそれぞれ一つの口から、そこを立ち去って行くのを見た。
 別の二つの穴のところでは、地の穴のほうからは、
 汚れと埃にまみれた魂たちが大地のなかから上ってきたし、
 天の穴のほうからは、別の魂たちが浄らかな姿で天から降りてくるのであった。
  こうしてつぎつぎと到着する魂たちは、
 長い旅路からやっと帰ってきたような様子に見え、うれしそうに牧場へ行き、
 ちょうど祭典に人が集まるときのように、そこに屯〔たむろ〕した。
  知合いの者どうしは互いに挨拶をかわし、
 大地のなかからやってきた魂は、別の魂たちに天上のことをたずね、
 天からやってきた魂は、もう一方の魂たちが経験したことをたずねるのであった。
 こうしてそれぞれの物語がとりかわされたが、
 そのさい一方の魂たちは、地下の旅路において
 __それは千年つづくのであったが__
 自分たちがどのような恐ろしいことをどれだけたくさん受けなければならなかったか、
 目にしなければならなかったかを想い出しては、悲しみの涙にくれていたし、
 他方、天からやってきた魂たちは、数々のよろこばしい幸福と、
 はかり知れぬほど美しい観物〔みもの〕のことを物語った。
  そうした物語のなかの多くの事柄をそのまま話すのは、グラウコン、
 長い時間を要するだろう。
 しかしエルの語ったところによれば、その要点というのは次のようなことなのだ。
  すなわち、それぞれの者がかつて誰かにどれだけ不正をはたらいたか、
 どれだけの数の人々に悪事を行なったかに応じて、
 魂はそれらすべての罪業のために順次罰を受けたのであるが、
 その刑罰の執行は、それぞれの罪について10度くり返して行なわれる。
 すなわち、人間の一生を100年とみなしたうえで、
 その100年間にわたる罰の執行を10度くり返すわけであるが、
 これは、各人がそのおかした罪の10倍分の償いをするためである。
 たとえば、国や軍隊を裏切ることによって、
 多くの人々の死をもたらしたり、奴隷の状態におとしいれたり、
 その他何らかの悪業に加担したりしたような者があれば、
 すべてそのような所業に対して、それぞれの罪の10倍分の苦痛を与えられることになる。
 他方また、いくつかの善行を為したことのある者、正しく敬虔な人間であった者があれば、
 同じ割合でそれにふさわしい報いを与えられるのである。
  これとは別に、生まれるとすぐに死んだ者たちや、
 わずかの期間しか生きなかった者たちのことについてエルは語ったが、
 それらはここで取り立てて話すだけのこともないだろう。
 しかし神々や生みの親たちに対する不敬と敬虔について、
 またみずから手をくだした殺人については、
 彼は以上のものよりもさらに大きな報いがあることを物語った。
  すなわちエルの話では、ある者が他の者から、
 『アルディアイオス大王はどこにいるか?』
 とたずねられているところへちょうど居合わせたそうである。
 このアルディアイオスという人は、いまからちょうど千年前、
 パンピュリアのある国の独裁僭主であった者で、歳老いた父親を殺し、兄を殺し、
 その他数多くの不敬な所業をかさねた男だと言われている。
 エルの話では、そのときアルディアイオスのことをたずねられた者の答はこうであった。
 『彼はここへまだ帰って来ていない。そして永久に帰って来ないだろう。……』
 
  (プラトン著 藤沢令夫訳 岩波文庫『国家(下)』より)
 

 (つづく)
 
 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017年08月05日 17時37分04秒



© Rakuten Group, Inc.