2022/01/14(金)21:29
熊澤蕃山『集義和書』卷第十四「義論之七」 二六二
一 陽明〔ようめい〕子〔し〕云〔いわ〕く、
目に体なし、万物の色を以て体となす。
耳に体なし、万物の声〔おと〕を以て体とす。
鼻に体なし、万物の臭〔か〕を以て体とす。
口に体なし、万物の味〔あじわい〕を以て体とす。
心に体なし、天地万物感応の是非を以て体とす、とはいかん。
云う。此の理〔ことわり〕明白也。
唯〔ただ〕心は空を体とす。故に天地万物において感応せずということなし。
ただ心のみならず、目・耳・鼻・口も同じ。
目に色なきは空〔くう〕なり。故によく五色を明らかにす。
耳に声なきは空なり。故によく五音をきく。
鼻に臭なきは空なり。故によく好悪〔こうあく〕を知る。
口に味なきは空なり。故によく五味をわかつ。
これ皆心の空〔くう〕、竅〔あな〕を目・耳・鼻・口にひらくものなり。
心は生々の理を以て神とす。日として生ぜずと云うことなし。
是〔これ〕を性という。性は心の本然也。