クリスタルのかけらに眠る勇者の心

2006/10/30(月)08:28

ストームブリンガー

ミステリとファンタジイの館(55)

「ストームブリンガー」マイケル・ムアコック 最愛の妻を何者かに拉致されたエルリック。魔剣ストームブリンガーを手に探索の旅に出るが、“新王国”の地は、“混沌”と手を結んだパン・タン=ダリジョール連合軍に侵略されつつあった。戦乱の渦中に否応なく巻きこまれるエルリック。だがこれらは、迫り来る“混沌”と“法”の怖るべき戦いの前哨戦にすぎなかったのだ!「魂の盗人」「闇の三王」「忘れられた夢の隊商」の3中篇と、表題長篇『ストームブリンガー』収録。 『魂の盗人』  これでようやくパン・タンとの因縁の対決に決着。シンプルな世界観の中でのエルリックの活躍の方が、私好みなのかも知れない。  でも、相変わらず「親しき者・愛する者」が失われるというエルリック・ルールは遵守?されていて、何だかやりきれないが、エルリックに話を持ちかけた商品達の狼狽する様は、滑稽で面白い。  『闇の三王』  美女ザロジニアとの出会い。一瞬で恋仲になってしまうのが憎たらしい。悪名高いエルリックのどこがそんなによいのか?なんて憤ってみてもしょうがない。何故か女性に人気あるんだよね。  このストーリーも割とシンプルなオーソドックスなスタイルのヒロイックファンタジーなので、内容を深く考えずに楽しめる。映画の「ゾンビ」を彷彿させるようなシーンもあるから、映画では見たくないけど、、、 『忘れられた夢の隊商』  このストーリーの主役はエルリックとストームブリンガーだ。蛮族の行う虐殺を見て、キレてしまうエルリックが妙に人間っぽい。捨てたはずのストームブリンガーが勝手に戻ってきてしまうとは、切っても切れない仲ということか。 『ストームブリンガー』  エルリックの悲劇的なサーガの終章。北欧神話の影響なのか、このシリーズ全体に破滅的ムードが漂っているので、ラストは予測できた。  混沌と法の争いに終止符が打たれる。なんか「ナルニア国」シリーズにも似た雰囲気があるなあ。ここまで徹底して悲劇的なファンタジーは類がないのでは?  今後、発刊されるのは、以前のエピソードなのか、新世界の新たな冒険なのか、待ち遠しい。 

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