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最近、色々本を物色するようになりました。今日も本屋に行ってきました。そこで目にした最近話題の本と言うことで松原ななみの「天使のラストメッセージ」と言う本を買ってみました。この本は、作者が看護師時代に関わった16人のターミナル期すなわち死を間近にした患者さんの旅立ちの物語です。この本を読んでいて、私もすごく似たような経験をしたり、感じたリしたことがあったので、正直作者の気持ちがわかる気がしました。そして思い出してしまったあの時のこと・・・。
あれは、約6年前。私が看護師の国家試験に合格し、就職して間もない時のことでした。私が配属された病棟にKさんという68歳の男性が入院してきました。前の年の12月に胃癌で幽門側胃切除術(胃の出口側を切る手術)を受けたKさんは、私が学生時代に受け持っていた患者さんでした。手術を受けたKさんはその時は元気に退院していったのですが、実はKさんには胃癌であることは告知されず、胃潰瘍と説明されていました。そして、Kさんには腹膜播種・・・癌細胞がすでに腹膜にばら撒かれているような状態で手術では癌を取りきることが出来なかったのです。Kさんが再入院したのは多分癌の再発でした。Kさんは私の白衣姿を誰よりも喜んでくれ、初めて病室を回った時に「ラピシアさんの白衣姿が見れて僕は本当に嬉しい」と言ってくれました。 ある夜の夜勤のこと、私が巡視で病室を回っていた時にKさんに呼び止められました。Kさんにはオムツがされており、「ラピシアさん、僕オムツされちゃったよ。トイレにも自分で行けないんだ・・・。なんでだろう、力が入らないんだよ。自分で歩けないんだよ。」と落ち込むKさんに「・・・辛いですよね。」その言葉しかKさんに返すことが出来ませんでした。元気になって家に帰りたいと考えていたKさんでしたが、Kさんの身体は確実に衰弱していました。「今の機会を逃したらもう家に帰ることが出来なくなる。だから今退院して家で最後の時を過ごさせたい」そう考えていたスタッフや家族と、癌であることは知らなかったKさんの思いは確実にずれが生じていました。結局Kさんを無理矢理説得するような形で退院させることになったのですが、退院するはずだった日にKさんは急変で亡くなってしまったのです。 Kさんの亡くなった日は私は休みで仕事には来ていませんでした。その前日、あの夜勤明けの朝にKさんに挨拶をした時に「今までありがとう。僕はラピシアさんの白衣姿を見ることが出来て本当に嬉しかった。これからもいい看護婦さんになってね。」と言ってくれました。これがKさんからのラストメッセージになるとは、本当に思っていませんでした。 Kさんが亡くなったことを知った時、Kさんを看取ってくれた先輩(実は看護学校時代の恩師)にその時の話を聞きながら、私はナースセンターで涙をこらえることが出来ませんでした。「なんで、もっとKさんのところに行くことが出来なかったんだろう?Kさんが落ち込んでいた時にもっと話を聞いてあげなかったんだろう?」泣きながらKさんとの関わりを後悔する私に、先輩が「でもね、Kさんが最期にここに入院したのは、きっとあなたの白衣姿が見たいって思いがあったからなんだと思うよ。学生時代に一生懸命関わってくれたあなたが、看護婦として関わってくれたことをKさんは本当に喜んでいたと思うよ。」と言ってくれました。まだ、入職して1ヶ月にもたたなかった時の、悲しい思い出でした。 今になれば、Kさんが術前でかなり状態の悪かったことや腹膜播種がどのような状態になるのか(はっきり言うと予後は短い)はアセスメントできるのですが、正直、あの頃は「Kさんは元気になるんだ!」と言ったよく分からない希望でしか物事を観ることが出来ず、腹膜播種がどんなに恐ろしいものなのかなんてあまり考えていませんでした・・・。何も知らないって恐ろしい。 ちょっと思い出して語ってしまいました。でもこの本は、命の尊さや人が生きるってことを考えるのにはいい本だと思います。これから看護を志す人にも読んでもらいたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.02.23 00:07:05
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