思えば遠くへ来た私

昨日娘が午後中爆睡してくれたため

市役所にパスポート申請に行くのが

今日になってしまった。

しかも今日は幼稚園がストライキのため休みである。

先生によってはストライキに参加してない人もいる為

幼稚園に行く園児もいるのだが

うちの息子の先生はストライキ賛成派らしく

もう先週のうちから連絡ノートで

2月2日には子供を連れて来ないように

と知らせを受けていたので

今朝仕方なく息子も従えて

旧市街の市役所まで行って来た。

幸い待合室に入ってすぐに私たちの番になり

係の若い女の人に案内され椅子に座る。

「今日は何の為に？」

と訊かれたので

「娘のパスポートを作りに来ました」

と告げると

「じゃあ、この用紙に記入して下さい」

と一枚の紙切れを渡された。

あら、こんな物書かないといけないんだっけ

と用紙を眺めていたら

「なんなら家で書いて来ても良いんですよ」

と言って来る。

又こんな所まで足を伸ばすのはごめんなので

「いえ、今書きます」

と早速書き始める。

息子は隣の椅子に座って何やら独り言を言ってるし

娘はせっかくはかせた靴と靴下を取り除くのに夢中だ。

少しわからない箇所があったので

「あの、これは・・・」

と尋ねると

お姉さんはとても忙しそうに

「これはこうです！」

と教えてくれる。

別に意地悪なわけではないが

何があったのかとても忙しそうに他の仕事をしている彼女。

私が何か訊く度にどんどん機嫌が悪くなって行く。

やっとどうにか書き終えて

他の必要書類を鞄から出すと

それらの書類をぱっぱとやっつけ始めるお姉さん。

そうそう、収入印紙もいるんだった

と財布から出して渡すと

「あら、パスポートも作るんですか？」

・・・はあ！？

なんと彼女

私が娘の身分証明書を作りに来たと思い込んでいて

書類もその方向で書き込んでいたよう。

書き直すのが面倒らしく

「身分証明書も作ったらどうですか？」

何て言って来たけど

「写真は2枚しか持って来てないので」

と断った。

だいたいまだ一歳にもならない子供の身分証明書なんて

一体なんの役に立つのさ！！

「・・・そうですか」

そうして彼女は渋々

もう書き込んでしまった箇所を修正液で消して

書類をパスポート用に作り変えてくれた。

なんかせかせかしてるけど大丈夫かなあ。

少したって全て終わったらしく

「もういいですよ」

と早く帰れと言わんばかりの彼女。

「いつ頃出来ますか？」

「一ヶ月後です」

「一ヶ月ですか・・・」

「あ、いや、2週間後です」

どっちやねん！！

「その頃こちらからお知らせします」

何か送って来るわけね。

3年前に息子のパスポートを作った時の事は

あんまりはっきり覚えてないけど

とてもスムーズにいったような気がする。

その時は近くの市役所の出張所

つまりあの受付係がいる所に行ったんだけど

別に問題なく作れたんだったっけ。

こんな事ならわざわざ遠くまで足を運ぶ事も無かったかも。

ちょっと後悔しながら帰り支度をしていたら

「ここで産まれたんですか？」

となぜか彼女が訊いて来る。

えっ？私？

「いえ、日本でですけど」

「フランス語、上手ですねえ」

今更ながらにこやかな微笑みを見せて来るお姉さん。

「そうですか？」

と愛想笑いを返す私。

「君のママはすごいねえ」

と息子にまでお世辞を言っている。

きっと自分のせかせかした態度について

最後になって申し訳ないとでも思ったんだろう。

でもそうは思っても

イヤな気分で帰ろうとしてたのに

一気に機嫌が良くなる私って単純。

最近とても暖かいし

今日はとても良い天気だったので

そのまま市場までぶらりと行ってみようかとも思ったけど

時計を見たらもうお昼近かったので

買い物にも行かなければいけないしで

そのまま帰る事にした。

近くのスーパーで偶然

同じクラスのワリッドに会って

大喜びの息子。

ベビーカーで気持ち良さそうに眠り込んだ娘。

ストライキで一日息子を押し付けられた気分だったけど

終わり良ければ全てよし。

今日はなんだか良い一日だった。