213162 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

佐遊李葉  -さゆりば-

佐遊李葉 -さゆりば-

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

vyゆりyv

vyゆりyv

カレンダー

カテゴリ

カテゴリ未分類

(0)

露野

(129)

心あひの風

(63)

孤舟

(59)

かるかや

(68)

蒼鬼

(253)

光明遍照

(53)

山吹の井戸

(52)

きりぎりす

(217)

遠き波音

(50)

羅刹

(193)

コメント新着

vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -193-(10/05) 千菊丸2151さん いつもお読みいただいて…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -193-(10/05) 是非このブログを残してください。 ゆり様…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -192-(09/14) 千菊丸2151さん だらだら更新に最後まで…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -192-(09/14) 漸く完結しましたね。 ちょっと後味が悪い…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -190-(09/08) 千菊丸2151さん 花山院皇女は惚れた弱み(…

サイド自由欄

QLOOKアクセス解析
2016年09月14日
XML
カテゴリ:羅刹
 いつの間にか、兵藤太は握り締めていた能季の手を離し、その顔を心配げに見守っている。

 その目には、まことの父のような慈愛の心が映っていた。

 そこにも、あの餓えと渇きを満たす方法が記されているように、能季には思えた。

 誰かへの、一身を投げうった愛と献身。

 それによって、兵藤太は己の心の中の暗闇を照らしてきたのだろう。

 私にも、何かあるだろうか。

 斉子女王を失った今、その餓えと渇きを満たす何かが。

 能季にはわからなかった。

 ただ、今は胸が苦しく、焼け付くように痛むだけだ。

 だが、やがてそれは見つかるだろう。宮中の日々の勤めと責任の中にか、誰かの優しい眼差しや腕の中にか、それとも幼い者への鍾愛(しょうあい)の想いの中にか……一体どこにあるのかは、まだ知れないけれど。

 いつか必ず。

 中秋の明るい月が、いつの間にか堀河殿の軒端の下にまで傾いている。

 少し肌寒いほどの風が、庭池を渡って釣殿の上を吹き抜けて行った。

 いつの間にか、もう夏は過ぎ、秋がやってきたのだ。

 こうやって、日は過ぎ、旬は巡る。人の想いも知らぬげに、飛ぶように速く。

 ふいに、庭先の草葎(くさむら)の中から、今年最初の虫の音が聞こえてきた。

 それは、涼やかな声で、能季に問い掛ける。

 虫であろうと人であろうと、その一生の儚(はかな)さには変わりはない。その短い生を、お前は一体どう生き抜いていくのか。

 姿の見えない秋虫の問いに、能季はいつまでも耳を傾けていた。
                                
                        (了)


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年09月14日 11時50分17秒
コメント(2) | コメントを書く
[羅刹] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
別の画像を表示
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


Re:羅刹 -192-(09/14)   千菊丸2151 さん
漸く完結しましたね。
ちょっと後味が悪い結末となりましたが、人の業や欲次第で鬼となるというメッセージに考えさせられました。 (2016年09月14日 12時40分14秒)

Re[1]:羅刹 -192-(09/14)   vyゆりyv さん
千菊丸2151さん

だらだら更新に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!!!!

いつもコメントをくださって、とてもうれしかったです(*^_^*)

まだボツ原稿はたくさんありますので(号泣)、よろしかったらまた遊びに来てください(@^^)/~~~
(2016年10月05日 16時58分10秒)


© Rakuten Group, Inc.