2017/02/21(火)06:30
前頭前野の働きを抑制すること
今月号の生活の発見誌に、 「ガスの元栓が閉まっている」という情報を脳はどうやってしているのかという説明があった。
健康な人の情報収集が、 「五感から情報を取り入れている」のと異なり、強迫行為を行う人は、 「閉まっている」と言葉にして、 「思考回路」を使って情報を取り入れており、 「感覚(五感) ・直観回路」は機能していないのが最大の特徴です。
こうして、 「思考回路」を使うことから「しまっていないのでは? 」という「反対観念」に悩まされることになり、 「葛藤の世界」を越えることができずに苦しむことになるのです。
強迫行為者が、こうした自分の「確認スタイルの特異性」を認識できるようになると、 「なぜ、なんども確認を繰り返すのか」ということが自然に納得できるようになる。
(生活の発見誌 2017年2月号 59ページより引用)
これを私の体験からご説明します。
私は人前でアルトサックスの演奏をします。
演奏するまでは、徹底的に練習をします。
最初は楽譜を見ながら、小節に区切って、少しずつ指の動きを確かめていきます。
試行錯誤の段階です。この時点では、脳の中では、前頭前野が盛んに活動しています。
全てが終わると、録音機に吹き込み、違和感がないか確かめていきます。
問題がなければ、何回も練習して、最終的には暗譜で演奏できるようにします。
暗譜で演奏できるようになっても、そこからさらに30回も50回も繰り返して練習します。
この時点では何回演奏してもほぼ完全に演奏できる状態になってきます。
この時点になると脳の中では、前頭前野が休んでおり、感覚運動野から直接指に電気信号が伝わっていると思われます。
そして演奏当日を迎えます。演奏当日はとても緊張します。
もし途中で間違えてしまうと、観客の人を白けさせてしまうという予期不安が出てきます。
また間違えてしまうと、他の演奏者にも迷惑をかけてしまいます。
私は対人恐怖症なので、その点の不安がとても大きくなりやすいのです。
この時の不安や恐怖は、脳で言えば前頭葉が大きく活動している状態です。
前頭葉は、あーでもないこーでもないと、様々にチャチャを入れてくるのです。
この時点では前頭葉がおとなしくしていてくれることがなによりも大切なのです。
にもかかわらずといった感じです。
今までの猛練習によって、感覚運動野に記憶が刻み込まれているわけですから、本来前頭葉の役割はないはずです。それなのに、前頭前野が活動してくる。
これは迷惑な話ですが、自然現象なのでどうすることもできません。
これは完璧な演奏をして聴いている人から称賛を得たいという欲望があるために、それに応じて不安や恐怖が発生しているのです。
本来の目的は素晴らしい音楽を聴衆に届けたいということですから、不安や恐怖ととらわれることなく、本番に備えて着々と衣装を整え、ウォーミングアップを続けていくことしかありません。
そうした行動をとっていると、多少なりともそちらのほうに注意や意識が向けられて、前頭前野の働きが抑制されてきます。このことの重要性が今までの経験上よく分かっています。
あとは、本番の時間が来ると、不安や恐怖を抱えながら、舞台に向かって思い切って飛び出していくことです。まさに背水の陣と言った感じです。
今までそうしたやり方で、ほとんどの演奏会はほぼ80%から90%の出来でなんとか事なきを得ているのです。
考えてみれば、イチロー選手、羽生結弦選手なども本番前にはとても緊張するそうです。
彼らを見ていると、本番を前にすると、ルーティーンをとても大切にしています。
本番に向けて、いつも同じ時間に同じ動作を繰り返しています。そのことに意識を向けています。
そうしないと、前頭前野が働きだして本番前にネガティブな不安や恐怖を生み出し、パフォーマンスに影響してしまうのです。ルーティーンに専念することは、勝手な前頭前野の働きを抑制する効果があるのではないでしょうか。