カテゴリ:観念重視から事実重視への転換
私は、森田理論を学習して、「かくあるべし」で現実、現状を否定しているから、精神的な葛藤や苦しみが生まれてくるのだということは理解できました。
しかし、理解したからといっても、精神的に楽になったかといわれるとまだまだだと思っています。 理解することはまず最初に取り組む課題ですが、そこにとどまっていては苦しみは増大していく。 理解することと身に着けるということは別物だと思います。 「かくあるべし」という自動思考が改められて、「事実本位」の自動思考に置き換えられることが大切だと思っています。 例を上げて説明したいと思います。 仕事をしていると、解決の困難な問題に直面することがあります。 ミスや失敗をすると上司や同僚達から非難されて、仕事に対する情熱をなくしてしまうこともあります。 そんなことがなくても、マンネリ化して、仕事は面白くないと感じることもあります。 こんな時、どんな感情が湧いてくるでしょうか。 仕事はしたくない。休みをとって、仕事や人間関係のわずらわしさから解放されたい。 仕事を辞めてしまいたい。宝くじにでも当たれば、すぐに辞表を出したい。 これが偽らざる自分の本音です。 でもこのような感情は、「かくあるべし」で否定してしまいます。 それは自分のわがままだ。常識外れの子供じみた感情だ。 仕事をしたくないなどいう気持ちは気分本位だ。気分本位の考えはダメだ。 有給をとって休むと、他の人に自分の仕事を肩代わりしてもらわないといけない。 たとえ休んでも罪悪感で苦しむことになる。 どれだけ他人に迷惑をかければ気が済むのだ。 また退職すれば、どうやって生活するのだ。 最悪飢え死にしてしまうぞ。社会からも相手にしてもらえなくなる。 家族はどうやって養っていくのだ。 だからイヤなことがあっても、つまらないと感じても絶対に会社を辞めてはいけない。 これだけは肝に銘じて生きていくことだ。 このように本来の自分の気持ちや感情を否定し、抑圧しているのです。 すると、自分の気持ちと「かくあるべし」という考え方の間に埋められない溝ができてきます。 この埋められない溝が葛藤や苦悩の発生の原因になっているのです。 このような場合、主導権を持っているのは「かくあるべし」です。 「かくあるべし」が自分の気持ちや感情を、あってはならないもの、邪悪なものとして取り扱うことが当たり前の状態になっているのです。森田理論で「思想の矛盾」と呼んでいるものです。 これが神経症の発生、固着の大きな原因となっています。 また、生きづらさや全般性不安障害、気分変調性障害、慢性うつ病などの原因となるものです。 ここでは自分の気持ちや素直な感情に光を当てていくことが大切になります。 そこから出発する態度を養成することが重要です。 自分は、「このように感じているのだね。つらい気持ちなんだね」と受け入れることが、真っ先に取り組むべき課題となります。 自分の気持ちや素直な感情を打ち出すことによって、「かくあるべし」という考えを抑え込むことです。 主導権は自分の気持ちや素直な感情の方にあるとよいのです。 この場合は、退職すれば当然路頭に迷うことになりますから、すぐに退職という方向には向かわないと思います。でも、自分の気持ちや素直な感情を楽にする方法をいろいろと考えるようになります。 「かくあるべし」との間で、自分の気持ちや感情を優先にして、折り合いをつけるように試行錯誤するようになります。これは「かくあるべし」に翻弄される生き方とは全く違ったものになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.05.21 06:30:10
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