今現在神経症で苦しんでいる人へ
生活の発見誌2月号に、水谷啓二先生から指導を受けた人の話がありました。その時「これから先も苦しむことがあると思いますが、その時の心構えを教えてください」と質問されたそうです。すると水谷先生は鬼のような厳しい形相で、「まだわかないのか、そんなに苦しいなら苦しめばいいじゃないか!」と激しく叱責されたそうです。今現在神経症で苦しんでいる人にそんなことを言うと、すぐに森田から離れてしまいそうな話です。今現在神経症で苦しんでいる人は、何とかこの苦しみを取り除いて楽になりたいと思っているのに、相談に乗ってもらえるどころか叱責されてしまうのですからやりきれない話です。現在は神経症治療として、薬物療法、認知行動療法がありますので、森田よりはそちらの方に走ってしまうでしょう。水谷先生は、神経症的な不安は取り除こうとしてはいけない。不安から逃げ回ってはいけないということを伝えたかったのだと思います。不安と格闘すると、サバンナで草食動物がチーターやライオンのような肉食獣に追い掛け回されるようなことになってしまう。森田では、神経症的な不安を敵に回すと、強迫観念で身動きが取れないようになってしまうといいます。しかし、その理屈を今現在神経症でのたうち回っている人に伝えたところで、そっぽを向かれてしまうのが落ちです。森田理論は神経症に対して正面突破の考え方ではありません。少々遠回りになりますが、迂回作戦をとっているのです。正面突破を試みて、跳ね返された人が第2の選択肢として取り組んでいるものといえばわかりやすいのではないでしょうか。怪我をして止血が必要な人に、とりあえず止血をして、その後で怪我の原因を考えてみませんかと提案しているのです。そのためにどんな対策をとっているのか。神経症で苦しんでいる人は、症状のことで頭がいっぱいになっています。考えることが内向きになっています。一つの不安に意識や注意を集中しています。これでは精神交互作用でそのうちアリ地獄の底に落ちてしまいます。神経症として固着してしまうと自力では抜け出すことは困難になります。森田では精神交互作用に風穴をあけていくという戦法をとっています。症状以外のことにも目を向けていくという戦法です。たいていの人は仕事をしています。毎日の日常茶飯事もこなしていかなければなりません。子育てや介護に取り組んでいる人もいます。町内会や集談会での世話活動も抱えています。これらに取り組んでいけば、考えることが内向き一辺倒から少しだけ外向きになります。その割合を少しずつ増やしていくという戦法です。私が一番効果があったと思うことは、規則正しい生活習慣をつくるということです。神経症で苦しんでいるときは、そんなことは眼中にありませんでした。その時々で思いついたことを仕方なしにこなしていました。このブログを始めるにあたって、起床時間を6時20分に決めました。その後はあらかじめ決めたルーティンワークに淡々と取り組むようにしました。すると頭の中でこの次は何をしようかと考えなくても、自然に体が動いてくれるようになりました。いつも内向きになって症状と格闘していた自分が、意識や注意を外向きに変えて行動できるようになったのです。この生活習慣が身についてくるとともに、神経症は随分楽になりました。論より証拠、自分の体験で確かめてみて下さい。