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カテゴリ:随想
ちょっと前、道端に目をやるとあちこちに黄色いお皿が見られたことを、渋滞の車の中で只野は思い出していた。その時期はとうに過ぎていた。
色とりどりの季節の中で、黄色いお皿は目立つことなく、しかし一生懸命そのお皿を広げているように見える感じがよかった。 同じ日、只野はたまたま徒歩で外を歩く機会があった。やはり道端に目をやることになる。そこにはメルヘンボールの集団が風になびいていた。 スッと伸びた茎の先に、デリケートなボールがついている。そのボールから飛び出した落下傘がいくつか宙を舞っていた。落下傘が地上に降りた瞬間、そこが彼らの永住の地になる。 思えば、黄色いお皿は地面に近いところでしっかり根を下ろしていた。安定感があった。それに対してメルヘンボールはより高いところでゆらゆら揺れている。とても同じ植物とは思えない感じがする。 只野は、黄色いお皿の上にメルヘンボールを載せてみたいとふと思った。とうてい無理なことではあるけれど、ぜひ載せて食卓においてみたいと思っていた。ちなみにタンポポを食することはしない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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