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カテゴリ:随想
只野が愚息2、3と散歩して、最後の公園に立ち寄ったとき、一人の自転車の少年が近寄ってきた。
少年は只野に向かって軽く会釈をした。只野も会釈を返した。 聞けば愚息2と同じゲームクラブに所属しているという。ただし愚息2はあまり彼とは話をしたくないような感じであった。 首から鍵を提げている。それが家の鍵だということを、只野はすぐにわかった。 「昼ご飯は?」只野はすでに12時半を過ぎていることを知っていた。 「食べたよ。どこにでもあるようなうどんとご飯」その修飾語に、只野は違和感を覚えた。 少年はコンピュータゲームをしたいらしい。やがて、只野親子が帰路に着くときも一緒について来る。只野は「ちょっと困ったことになったぞ」と思っていた。 「君の家族は?」只野は聞いた。こういうときに「家族が待っているのでは?」などと聞いてはいけない。 「お父さんと2人だけ」少年は「だけ」を強調した。只野は、自分が母親でなくてよかったと思った。 「友達は、ほとんど下級生。上級生は少ない」とも言った。只野は、虚勢のようにも聞こえる少年の言葉を素直に受け取った。 やがて家に着いた。少年は自転車のスタンドを立てて、只野の家に入ろうとした。 「ごめんね。今日はこれからご飯だし遊べない…」「そうですか…」少年は立てたスタンドを元に戻し去っていった。 只野には複雑な心持ちが残ることになった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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