2006/02/24(金)00:36
“ババ抜きゲーム”はやらない
私たちが、企業価値にこだわるのは、単に、株価を予測するよりも、価値を捉えることの方が簡単のように思えるからです。
株価は、短期ではさまざまなバイアスを受けますが、中長期には、価値に収斂してゆきます。
もちろん収斂のパターンには、いくつかあります。
たとえば、横浜丸魚(8045)のような資産株の場合には、価値自体はあまり変わらず、あるとき、カタリストによって一気に価値に収斂します。
また、キャノン(7751)のような有名大企業のように、価値の周辺を株価が行き来するようなパターンもあります。
いずれにせよ、いずれは価値に戻るのであれば、だまって待っているのも手です。
ただ、もし、回転率を上げ、投資収益をさらに高めようとするのであれば、価値だけでなく、価格(株価)の研究も必要です。
株価は、バリュー(価値)とバイアスをもとに日々ゆれうごきます。
バリューとは、企業の「長期的経済的価値」であり、バイアスとは、企業への「短期的感情的評価」です。
株価は、短期ではバイアスに左右されますが、長期では、バリューに収れんしてゆきます。
バイアスが生まれるのは、たとえば、不祥事・裁判・下方修正などの一時的な問題の発生です。
たとえば、ある企業が業績の下方修正を発表したら、「売り」ではなく、ひょっとすると「買い」かもしれません。
理性を失った投資家が、株を叩き売り、株価が、一時的に実力を下回るからです。
昨年は、子供服を扱うナルミヤ・インターナショナルや、パチンコホールの周辺機器を製造するマースエンジニアリングが業績下方修正を出し、株価は急落しましたが、今はその実力水準まで株価は戻ってきています。
ライブドアショックでは、関連銘柄が大きく売り込まれましたが、実際に、価値のある企業については、いずれ元の水準まで株価は戻すでしょう。
一時の悲観から、実力以下まで売り込まれた銘柄は、実は「買い」なのです。
また、ニュースやIRの情報を見たら、それがバリューや株価にどのような影響を与えるのかを考えてみるといいでしょう。
ニュースの中には、株価には影響を与えるが、バリューへは、実質的に影響を与えないものがあります。
たとえば、ライブドアショックで問題になった株式分割というのは、会社の価値は変わらず、ただ売買単位を小口にしただけです。
ピザを5等分にしようが、100等分にしようが、ピザ全体の面積は変わらないのと同じで、バリューへの影響は、ゼロですが、小分けされ株が買いやすくなるとともに株の供給が遅れるので株価は一時的に高騰します。
それから、株主優待も、実は、個人投資家を釣るアメでしかありません。株主優待の原資は、もともと株主が受け取るべき利益です。
それでも魅力的な優待を発表したりすると、株価が上がることがあります。
これがバイアスの正体です。
逆に、経営者の交代による業務の刷新や、前向きな業務提携などのニュースは、地味ながら企業に実態的・継続的な変化をもたらします。
本物の変化とは、人が実際に行なうことであり、一時の流行とは、人が話すことです。
両者の違いを見極め、企業価値に影響を与える実質的な変化をするどく見抜ければ、投資で成功することができるでしょう。
市場のバイアスは利用するものであって、利用されるものではありません。
私は、投資では、常にバリューを軸に考えるのが良いと思います。
ニュースやそれによって引き起こされるバイアスを利用する投資でも必ず、バリューを下支えします。
たとえば、ムサシという会社がありますが、この会社の価値と価格の差はおよそ2倍もありました。
ムサシは、選挙の投票箱などを作っているのですが、総選挙が発表されると株価は、80%上昇しました。
しかし、もし総選挙が行なわれなかったとしても、バリューの下支えがあるため、株価はそれほど下がらなかったでしょう。
総選挙が行なわれなかったときは、そっと株を売り、ポジションを閉じればいいだけです。
私たちが、株価が急落したときに「買い」をいれ、急騰したときに「空売り」ができるのは、感情をコントロールする秘術を知っているからではなく、単に、企業のバリューを算定し、株価はいずれバリューまで戻ることを知っているからです。
バリューこそが、投資家の最後の寄りどころだと思います。
しかし、相場が加熱してくると、私たちはマネーゲームに奔走します。
“ババ抜きゲーム”の幕開けというわけです。
こうなると、株の価値のことなど忘れて、次にババを引いてくれる「自分よりもっと馬鹿」を探し求め
て、株を買い続ける人も出てくるでしょう。
そして最後にババを引くのは?
ひょっとしたら、投資の本質を見失った私たち自身かもしれません。
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