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カテゴリ:企業を見抜く目(分析編)
![]() 外食として初の売上高5,000億超というニュースがありました。 (以下、マックと略します。なお、関西の方はマクドと読み替えてください) モスバーガーが1,000億ちょっとですから相対シェア5倍・・・ とは言いつつも、マックの損益計算書の売上は4,000億ちょっと。 このニュースで出ていた売上高との1,000億の差は、 どこから来ているんでしょうか? マクドナルドの決算・財務分析 ◆「売上」ってなんぞ? マックの決算書を見ると、システムワイドセールス (以下、SWSと略記)なる単語が出てきます。 このSWSの数値は5,100億円ちょっと。前述のニュースの 数値と合致します。 SWSとは、直営・フランチャイズ(以下、FCと略記)の 合計売上のことです。つまり、マックの看板のお店で、 みんながそれだけお金を払った、ということです。 ここでさっきの問題をもうちょっと正確にする必要があります。 つまり、SWSと損益計算書上における、数値の違い(1,000億)は どこから来ているか? 答えは、ざっくりいうと、 損益計算書ではFCからの上納金だけを売上として計上しているため ということになります。 ハンバーガー作って、人件費を払って、残ったのが儲け。 その濃い儲けの一部をロイヤリティとして、本部に納め、 本部(損益計算書)ではその額を売上として計上しているのです。 決算書の売上高4,000億円は、直営店舗2,674店の売上 3,600億円と、FC店舗1,072店の‘ロイヤリティ’400億円の 合計値です。(下で述べますが、正確に言うと、これに 「その他」の売上が加わって、4,000億円です。) そして、5,100億円は、直営店舗の売上に、 FC店舗の‘ロイヤリティ’ではなく、‘売上’を 合算したものなのです。 売上を直販とFCからの‘上がり’だけでみるか、FCの売上を 含めてみるかの違いですが、紛らわしいことは確かです。 ◆マック不動産 さて、実はその他にも、決算上の売上高とニュースで 言われていた額における中身の違いを産んでいるものがあります。 それは、FCのオーナーに対する店舗売却収入です。 マックは豊富な土地を所有していることから、 その実質はハンバーガー屋ではなく、不動産だ! という指摘をされたことがありましたが、 損益計算書だけを見ると、「本当に不動産屋さんでした。」 ということになります。 ただ、その額は43億円で、損益計算書上の 売上の1%ちょっと。そこまでの大きな影響はないでしょう。 (とはいえ、これは売上でなく特別利益に持ってきたほうが 良いのでは・・・? と個人的には思います)。 ◆まとめ ここまでの教訓をまとめると次の2点でしょうか。 1.定義に注意 (有報の【財政状態及び経営成績の分析】なども 細かく見ていきましょう) 2.恒常的なものと、一時的なものを峻別すること (店舗売却収入とハンバーガーの売上は性質が異なります) 財務諸表は、会社によって違います。 同じようにFC経営を行っている会社でも、マックのように、 FCのロイヤリティだけを売上として計上する会社もあれば、 FCの売上をまるごと計上する会社もあります。 売上の内容も、現金なのか、売掛金なのかで重要度合いも 違うでしょう。掛売ばかりをたくさんやってしまうと 回収リスクが高まります。 そして、その売上の“安定性”も大事。 顧客が固定されているインフラ系の事業なのか、 一見さんばかりの居酒屋なのかでは、その意味合いも 変わってくるのです。 大事なことは、「売上」という言葉だけに縛られないこと。 その「意味」は千差万別であり、しっかりビジネスの特性を 捉えた方が実は本質がわかるということなのです。 「数字をみないで、企業をみて、数字を想像してみる」 有報を見て考えるのでなく、考えて自分の導き出した結果の ‘答え合わせ’として有報をみるようになると、きっと別の 世界が見えてくると思います。 マクドナルドの決算・財務分析
最終更新日
2009年06月29日 15時54分56秒
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