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2023年11月08日
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全8件 (8件中 1-8件目) 1 マネーが切り刻むその先(全8回)
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(8/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●お金も、分子生物学や量子力学と同じように人類の本質を探る一つの試み 木戸 unity(一体性)が担保される世界は次元が違う。 形ある三次元世界は、多様性があり、あなたと私の区別もできる。 区別すること細分化することは悪いことではないし、 他者と区別することによって自尊心も生まれ、やり甲斐も出てくる。 でもその区別が行きすぎれば孤立感や疎外感を生むだろう。 本来は、時空間を越えた、人間で言えば自我を越えた 深層意識で全ては繋がっているんだけどね。 山口 卑近な例をいうと、人はお金がなくて不安だったりもする。 だから安心するポイントを常に探っている。 どういう認識において自分が平常心を取り戻すことができるのかを 知ることが必要だと思う。 それは深いレベルでの自己を発見する旅だ。 木戸 身体感覚の究極は、死を意識した生。 生の意味を死と相対化することで、目の前におきている矛盾を 受け入れていけるような思想が必要かもしれないね。 そうでないと、都市での生活は一見あまりにも機械的で、 生きている実感に欠けるんだと思う。 だから生に意味を見出せない。 死という闇は、弱められた生の輝きを取り戻す鍵になると思う。 そのためには、死を肯定的に受けとめられる世界観が必要で、 輪廻転生ではないけど、時空間を越えた世界と自分が存在する時空間とを、 生命は一回きりではなく常に循環している、つまりある意味での 「生命の永遠性」が理解されることが必要かもしれないね。 ただ間違えてはいけないのは、ここでいう「生命の永遠性」というのは 生と死の循環であって、不老不死とは違うということ。 だから、クローン技術をお金によって実現し、 そのことで長生きしようとする価値観とは、 まったく別物であるということなんだよね。 山口 本当にそうだと思います。 お金は幾つかの社会システムの中の一つにすぎない。 お金があり、教育があり、法がある。 このうちもどれもが必要で、教育がないと市場は理解できないし、 市場の規律を守るのは法である。 何らかのコンセプトが、何らかの軸の中で、 お金に対してケリをつけないといけない。 貨幣が人間を追い詰めてきた。 その先にひらけるお金の役割とは何か。 ポジティブなお金の方向性とはどのようなものなんだろうか。 木戸 お金は、人類をどこへ導くだろうか。 近代社会は、科学的権威が王道を極め 「分析」によって世界を切り拓いてきた。 分けることが、すなわち分かること。 けれども、科学は、詩や芸術といった主観的・一人称的なものに対しては 無力といえる。 一方、対極にある哲学は、カント(純粋理性批判)以来「総合」して 世界を俯瞰して認識することはできないと結論づけた。 そういった意味では、近代における科学も哲学も、 学問としてカテゴリー・フリーズしているわけだよね。 ということは、何らかの新しい世界というものはアカデミズムにおける ブレークスルーから生まれるのではなくて、 細分化を野蛮なまでに推し進めていくお金が、 人間の心にダイレクトにカオスを生み出して、 そのカオスが引き金となって、一見、無秩序な突然変異的な状況から 新しい世界が切り拓かれるかもしれない。 お金は悪役を演じてはいるが、次の時代の牽引役になっているともいえる。 その意味では、進化を司る一つの要因かもしれないよ。 山口 お金とは社会科学の一種ではないのでしょうね。 分子生物学や量子力学と同じように、 人間性の本質を探る一つの試みなのでしょう。 今回の対談を終えて、そのように感じました。(了)
最終更新日
2009年02月03日 12時36分57秒
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2009年02月02日
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(7/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●貨幣による分業によって人間性が追い詰められてきた 木戸 昔からそうした価値観を持っている人はいて、 個人のレベルでは山口さんが言うレベルにまで 深めている人は結構いると思う。 でも、社会システムとしての機能がマクロとして そこまで進化するにはどうしたらいいのかという意味では、どう思う? 山口 結論としては分からない。 お金がどう進化していくか。 お金がどうなっているか。 お金は昔は札束でもらえたけど、今は振込み。 お金はビット(データ)の世界に埋没してしまった。 お金はますます捉えどころのない状況にある。 どう進化するか見えない。 幾ら法律をかいくぐっても、 お金で何でも克服できるところでは欲望はつきない。 お金は勝手に作られてしまう。 法定通貨以外にもポイントカード含めた企業が 発行している通貨はさまざまに創造されている。 木戸 たしかにお金の汎用性の高さは、 他のものに比べて圧倒的な優位性をもっているように見えるけど、 その一方で、それでも尚かつお金に対して 絶対的な価値を見出そうとはしない、 本能的なレベルでそうした価値観を拒否しようとする感性を 人びとは持ち合わせているよね。 それって何だろうね。 山口 それが人間の本質だと思いますよ。 分業しきれない、お金で売買できないという臨界点を 倫理(モラル)という。 売春が禁止されている国もあるし、そうでない国もある。 マネーで交換できる範囲は世界によっても違う。 インディアンは土地の売買すらできなかった。 でも日本の法律では、REITを作ったりもできる。 何でも商品にしちゃう。 木戸 生命の再現性ですらクローン技術で可能になろうとしている今、 それはお金によって分業されていくんだろうね。 最後の砦は、「時間の矢」だと思う。 宇宙の摂理では、時間は一定方向にのみ流れていて過去には戻れない。 究極的なところで再現性のきかない 一期一会の世界を担保するものが「時間の矢」。 人間にとってかけがえのないものとは時代と共にかわっていくのだろうか…。 幸せのかたちは今後どうなっていくんだろうね。 山口 貨幣による分業によって人間性が追い詰められてきたけど、 これから先、貨幣に導かれる形で、 最終的に僕らは新しい「自己」を発見できるのか? 木戸 現代はその臨界点にまで来ていると思う。 細分化できるものは時空間内のもの。 時空を越えた次元を人類が認識しないかぎり、 お金のマジックからは逃れられないかもしれない。 何故なら、時空間にあるものは細分化できるから。 個人的に、CERNの実験によって異次元を科学的に捉えることは 大きな意識変革の契機になると思っているけど、 あの実験はもしかしたら時空間破壊という究極的な環境破壊である可能性が高く、 本来はオーガニックな自然をもたらしている時空間を尊重し、 つまりこの時空間に留まりながら、 時空間を越えた世界を認識することが重要なんだよね。 次元を超えるのではなく、次元を「認識する」ということ。 ここを間違うと本末転倒になってしまう。 山口 つまり、時空の狭間をのぞきつつも、帰ってこないといけないわけですね。
最終更新日
2009年02月02日 10時48分53秒
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2009年01月30日
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(6/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●M&Aという名の人身売買が行われている 木戸 現代は、お金は神だといってもいいぐらい信仰の対象になっていると思う。 霊長として人間に与えられた探究する心を忘れて、多くの人が日常の生活に追われ、 問題をお金によって解決しようとして、さまよっている感がある。 山口 お金の汎用性、つまりお金で解決できる範囲が広まれば広まるほど、 人はお金にコミットしてしまいますからね。 木戸 お金の支配から人が脱却するために、 ただ愚痴をたれるんじゃなくて、お金以上の 価値を見つけ出していくことにもっと本気なチャレンジがあってしかるべきだと思う。 生命というものは本質的には何かに支配されているとしても、 数字に区切られた無味乾燥な世界には支配されたくない。 もっと奥の深い、味わい深い世界を自分のソースとしたいし、 自分にとっては、それがコトタマの宇宙観なんだよね。 山口 一つには、お金と同じレベルの社会的コミュニケーション・ツールが必要だと思います。 言語や思想がそれにあたる。 あるいはお金を扱う市場という場において重要なのは規律・ルールなんですね。 木戸 ただ国際社会においては、国内市場のようなルールはないよ。 国際法では法の対象を国家のみと規定しているから、 国際司法裁判所で罪が確定したとしても処罰することができない。 国家は目に見えない装置のようなものだから仕方がない。 もし国際法によって処罰しようと思ったら、法の対象を個人にする必要がある。 処罰されないと言うことは、法の支配は存在しないということ。 だから国内法で取り締まるしかない。 事実上、国境を越えた世界は無政府状態なんだよ。 トランス・ナショナル的なポジションに立ってFRBでお金を発行している人たちは、 ある面においては法で罰せられる場所にはいないフリーな人達ともいえるんじゃないかな。 山口 資本市場に関しても同じ事がいえる。 ”法人”は”人”です。 つまり魂を持った存在です。 そのためある意味では経済的に売買されてはいけないはずだけれども、 M&Aという名の人身売買が行われている。 市場開放するというのは、魂を持った存在を、人が造ったお金というツールで コミュニケーションするということ。 これはすごく危険な話。 会社は文化をつくる。 それはROEやキャッシュフローでは測れないのに。 市場を開放するにあたっては、市場を市場だけで考えてはだめで、 教育や法律も含めた社会システム全体で会社を位置づけないといけない。 木戸 市場も自然の一部であるという世界観を構築できないだろうか。 人間の経済活動と自然の摂理をつなげていく経済哲学が必要。 そうした世界観と共に市場経済システムが構築された折りには、 お金の役目というものも必然的に次元上昇するんじゃないかな。 もう一度、生命という原点に回帰するべきだと思う。 形ある分子の世界では、分析によって細かく割っていけばいい。 一方で分母の世界を総合的に捉えていくこともする。 分母とは、生命そのものなんだよね。 山口さんは、お金を相対化させるコンテンツがあるとしたら、 どこに切り口があると思う? 山口 コミュニケーション・ツールを汎用性と深さで考えたときに、 お金は汎用性は高いけれど、価格という一点でしかコミュニケーションできない 原始的なツール。 ある意味、単細胞生物に似ている。 言語はお金以上の意味を伝えられる。 あるいは宗教でもいい。 いずれにせよ、自分が流されないためには、 お金以外の価値コミュニケーションツールが必要だということ。
最終更新日
2009年01月30日 10時07分51秒
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2009年01月29日
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(5/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●貨幣を誰がコントロールしているか分からない 山口 貨幣経済は、人間性そのものも奪っていく形にまで発展してしまった。 これ以上に分離分割できるものがあるのか、というぐらいまでになってきた。 1人の人間には得意なことも不得意なこともあって、 いい意味での矛盾が“人間性”を育んできたはずだけども、 お金で解決できるようになると得意なことしかやらなくなる。 不得意なことはやらないから、繋がりが生まれない。 つながり、つまり一体性こそ、幸福の本質なのに ゆきすぎた分断と分業によってそれが得られなくなった。 木戸 お金の流れによって分業が進み、そのことで形あるものだけでなく 心や魂といったカテゴリーに属するものまで細分化されてしまい、 人間性の崩壊にまで影響を及ぼしているというのは、 ある意味でお金が持つ力の必然性なのかもしれないね。 何故なら、Unity(一体性)の本質的実態は時空間を越えた世界にあるものだから。 問題は、お金に罪があるのではなくて、近代の世界観が、 基本的に物質性と自我性というものを世界の中心にそえていることであって、 物質性や自我を越えた先にあるものを科学的に証明できない、 数値化できないというという一面的な理由のみで否定してしまっていることが 根本的な問題の原因かもしれないね。 お金が通用するのは、少なくとも時空間内の出来事だけだと思う。 死んだあと、お金はあの世には持って行けないでしょ。 ただ、時空間の外の世界があったとしても、 それは死後のこと…みたいな世界観でも、お金の優位性は変わらなくて、 今ここに存在し生きていること、自己の内側から溢れてくる 直感やクリエイティビティーが、時空を越えた生命のソースとの 繋がりから生じているということ、 つまり人間という存在が自我と物質性を越えた世界との関わりの中で存在し、 それが真のリアリティーとして自覚されるような文明になったとき、 お金の絶対的な支配から開放されるんじゃないかな。 でも見方を変えれば、お金はお金の役割をきちんと果たしていて、 これまでは交換する媒介としての道具的な意味合いが強かったけど、 宇宙的な意味合いにおいては山口さんが指摘するように 世界を加速度的に細分化する役割を持っていて、そこには善悪はなく、 その細分化が極限にまで至ったとき、必然的な逆作用として 民衆レベルにおいてunity(一体性)を求める爆発的な力を、 これまでの宗教や哲学とは全く違ったかたちで社会に引き起こす 原動力となっているかもしれないね。 木戸 ところで、お金ってどのような支配構造になっているんだろう? 石油どころじゃないよね。 山口 お金はその石油などの生活インフラの上位に位置する概念ですから。 いまや人間の基本的な生活インフラである「水」さえも民間資本に支配されていますし。 このお金というOS(基本システム)の独占を止めようという流れもある。 木戸 マクロでみた時、国家ごとに様々な通貨があり、 その中にドルのような基軸通貨が存在する。 地域通貨みたいなものもあるけど、現実的には通貨発行の権限って 基本的には国家権力という枠組みの中にあるよね。 山口 名目的には、貨幣は、国家の管理化にある。 ポンドやドルやフランといった形で。 ただ現実は、すべてマネーという枠組みで繋がっている。 アメリカは議会に信用創造の管理する力はない。 もはや貨幣を誰がコントロールしているか分からない状態にある。 一定の経済力が前提になるとはいえ、こっそりうまれた企業通貨も莫大に発行されている。 航空会社はマイレージという貨幣の発行体としての力をもっている。 これは会計でも規制できない状態にある。 木戸 存在には、多様性と中心性という二面性がある。 お金はどちらの性質に属するものなんだろう。 人間の文化には多様性が担保されていることが大切だと思う。 だけど、お金の本質は記号的なものだとしたら、その意味では時空を超えた存在、 つまり一体性を担保する役割も秘めているとは考えられないかな。 とすると、現在のように多様な通貨単位があることで全体として 均衡が保たれるというよりは、ひとつの世界共通通貨が流通するほうが 本来の役割を演じられるんじゃないかと考えられはしないか? そもそも通貨同士が競争するのって健全じゃないような気がする。 ちょっと理想主義的かな。(笑)
最終更新日
2009年01月29日 14時07分37秒
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2009年01月28日
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(4/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●貨幣は世界を切り刻む 山口 僕は何かを構造分解する際には、必ず二個ずつに分けるようにしている。 長期/短期、効率/効果、インプット/アウトプットなど。 そうしたパターンで物事を分解していく。 そうすると、いろんなパズルがときやすくなる。 M&Aを行う時には会社を丸ごと分析する。 会社は人間の臓器のようなもので、一万ぐらいのファクト(事象)が 多様に結びついた存在です。 分析を繰り返すと、会社のパズルも解くことができるようになる。 そうすると次は、会社じゃないもっと大きなものを見たくなる。 市場とは何か。 あるいは会社はお金で売買されているけれども、 そもそもお金とは何か?という複雑なパズルを解きたくなる。 木戸 真理を紐解こうとするのが人間の性。 要素分解してもいい。 ただ自然を分子/分母( 分母・分ぶんの分子)の構造と 見立てるとき、形ある目に見える世界は分子の部分であり、 時空を越えてそれを底支えしている分母の世界もある。 要素還元できるのは所詮、分子の部分であり、 意識をも創造する生命の本質は分母にある。 この分母を担っている世界を、叡智を持って認識しなければ、 要素還元の挙げ句の果てに現象世界は無理数化して崩壊してしまう。 分母の世界をどう把握し社会のデザインに取り込んでいくかが、 新たな未来を切り拓く鍵になると思う。 山口 29歳までは、分離分解していくと成果と報酬が上がっていく環境があった。 でも働きすぎて体調を壊したんです。 これでは何も生み出せないと思い、まずは休むために会社を辞めて。 そもそも会社とは何か。 分解していいものなのか。 経済的に処理していいのか。 経済とは何か。 お金とは何か。 そういうことを考え始めたのが2006年ぐらいなんです。 一つ言えるのは、現代社会においてはお金自身が価値そのものになり、 人間の偏差値を決めることになり、世界の唯一の言語になったということ。 木戸 デザイン的には全くイケテないけど、でもやっぱりお金は究極のメディアだよね。 山口 それによって、非情なまでに世界が切り刻まれた。 木戸 世界が刻まれることの意味とは?交換と分業はどう関係するの? 山口 ある意味で、お金によって全てが交換でき、 全てが調達できるようになったのが資本主義社会。 お金さえ持てれば、自分の特化した部分だけで生きていける。 それ以外はお金が解決してくれる。 そのことによって分業が進み、 その分業の幅が所有も含めて膨大に広がってしまった。 情報通信の波にのって、更に多くのことが分業できるようになった。 リストラ屋、CEOの調達、恋愛における別れさせ屋さえある。 値段に換算されるという数値化によって コミュニケーションも必然的に希薄化していく。 お金がないと人生のカードが減るという不均衡も社会の中で生まれてくる。
最終更新日
2009年01月29日 14時06分52秒
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2009年01月27日
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(3/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●知識のみならず倫理を伴った時に叡智が形成される 木戸 科学というのはよく観察しなければならない。 というのは固定観念を持ったまま観察してみても、 固定観念が邪魔してありのままの現象が見えてこないから。 いかにあるがままで見ることができるかは本人の透明性の問題と言える。 限りなく既存の固定観念を外したところで観察する。 そこに初めて、今までにない意味文節が出てくるんだよ。 要素還元による分析とは真逆の思考回路かもしれないね。(笑) 山口 そうかもしれません。 一流のコンサルタントに共通するのは、あたえられた問題を要素還元する前に、 問題自身の前提を疑える姿勢を持っていることなんです。 木戸 どんなに分析しようとも、思考パラダイムという大枠での パターン認識に支配されているという問題がある。 その次元のパターンを越えるには要素還元とは違う 別なやり方が必要なんじゃないかな。 しかも今の時代は複雑化と変化のスピードが幾何学的に加速しているので、 分析された構造もすぐに環境が変化してしまい、すぐに通用しなくなってしまう。 山口 そうですね。 木戸 常に環境変化に対応できるように、自らに対して創造的破壊を意図的に起こそうとする アーティスト的な姿勢を、いかにしてアナリスト達は担保しているの? 山口 そういうときは分析をやめてしまう事もあるんです。 ただ、コンサルティングの世界では少数派。 分析をせず、違う思考パラダイムの指針を示すんですけど、 あなたのそのコンパスに間違いがないという保証はどこにもない。 結局経験がものをいう世界になってしまいます。 一方では、あくまで、一定の思考パラダイムの中でのものごとの 分離・分析で立ち向かい、その際の構造化の抽象度をより高くする、 ということもあります。 木戸 だけど抽象度が高いと、現実的な解決からは遠ざからない? 山口 ええ。 抽象度を高くして問題を包み込みつつも、出てくる解決策は具体的でなければならない。 そこが難しい。 真理を発見することだけでも、具体的なことだけを扱うわけでもない。 できるだけ抽象的なものと、できるだけ具体的なものの両方を抽出することで、 ものごとの抽象・具体間の距離を伸ばし、そしてそれらを結びつけること。 そのプロセスに僕のプロとしての美意識はあります。 木戸 具体的なことも抽象的なことも、両方を精度高くハイブリッドに 突き詰めることは素晴らしいチャレンジだけど、山口という一人の人間だけで それを完結しようとしたら、その距離はどうしても短くなってしまうんじゃないかな。 山口 自分としては、どこまでも抽象と具体を繋ぐことにこだわりたいんです。 木戸 形あるリアルなものには再現性がある。 それは抽象的なものではなく具体的。 例えば遺伝子のクローン技術のように。 一方で、抽象の本質とは「意味性」のことだと思う。 どんなに再現性がある具体的なことでも、そこに意味はない。 意味性は別の次元によって与えられるものであり、 そこにして良いことと悪いことの区別も生まれる。 再現性が意味性を担保しないことは、科学者が原爆を作ってしまうことからも明らか。 ただ、科学者に罪があるかどうかは別で、意味性は哲学者の役割なんでしょう。 ということは、役割の違う両者を繋ぐミッションを持った仕事もあってしかるべきで、 それが山口さんの目指していることかもね。 今の政治家や役人には、正直、期待できない。(笑) 山口 知識だけでなく、知識に倫理が伴った時に初めて叡智が形成される、と思う。 頭とハートがつながっていることを一人の人格の中で確立することが 大事だと思うんですよね。 僕のキャリアを振り返ると、扱う問題が複雑化するにつれ、 コンサルティングの抽象度もどんどん高くなった。 一方で、詳細に説明する時は具体的でもある。 抽象性と具体性が、ロジックの中でつながりをもって説明することが重要なんですよね。
最終更新日
2009年01月29日 14時06分14秒
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2009年01月26日
カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(2/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●問題を解決するとは、答えを出すことではない 藤沢 現在の考え方に至るまでの変化を聞かせてください。 山口 大学は早稲田の政経でした。 木戸 学生時代から金融を生業とするようなビジョンは持っていたの? 山口 そうでもないです。 大学は美大に行きたかった。 大学も最初は文学部に行きたかった。 社会に接したくなかったんですね。 ただ、早稲田は社交性がないとやっていけないんです。 次第に、付き合う人も考え方も現実的になっていった。 木戸 大学卒業後は? 山口 入った会社は監査法人トーマツの系列のコンサルティング会社でした。 そこは収益責任が高くないこともあって、好きにのびのびやらせてもらいました。 木戸 そこでいろんな今に繋がるスキルを学んだんだ。 山口 学びました。 その頃は日本の会社を海外が買収するケースが多かった。 日産にルノーが出資するみたいな話からはじまって、 GMがいすず、リップルッドが長銀を。 そういう時代にいたんですね。 その中で、問題をどうやって解くべきかのスキルを教えてもらいました。 木戸 それはどんなスキルなんですか。 山口 問題を解決するとは、答えを出すことではない。 問題を構造化して分解することだと教わったんですね。 食べられる大きさに切ることができれば、何でも口に入れられる。 問題も細分化することによって構造や背景が分かり、 どのレバーをひねれば売上が改善するかが分かる。 そんな世界でした。 木戸 まさに、ザ・モダンだね。 山口 そうなんです。 でも、経営の現場で問題を分解して要素還元するときは 必ずしも数学的でなくて、国語的なんです。 例えば、経済的問題と感情的問題とか。 個人的問題と家庭的問題とか。 どんな問題が与えられても、すべて構造化させるんですね。 国語的な要素還元が、近代的欧米的コンサルティングの本質だと思うんですね。
最終更新日
2009年01月29日 14時05分39秒
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カテゴリ:マネーが切り刻むその先(全8回)
今事記インタビュー 第九回(1/8)
「マネーが切り刻むその先」 ―山口揚平 ブルーマーリンパートナーズ代表 聞き手:木戸寛孝、藤沢烈 ●はじめに 今回は、日本の株式市場を変革するための事業に取り組んでいる、山口揚平さんのインタビューになります。山口さんは日本の株式市場と、企業分析に関する二冊のベストセラーを出版されていますが、未曾有の金融危機の中、改めて「お金とは何か?」を哲学した現代版の貨幣論を執筆中とのことです。貨幣が今の世界と社会に与えたインパクトについて、深く洞察されたインタビューとなりました。この内容を通じて、お金に関する新しい見方を得ていただければと思います。
最終更新日
2009年01月29日 14時05分12秒
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