マクドナルド【2702】が虚偽記載!?
ちょっと古い話ですが、日本マクドナルドホールディングスが外食として初の売上高5,000億超というニュースがありました。(以下、マックと略します。なお、関西の方はマクドと読み替えてください)モスバーガーが1,000億ちょっとですから相対シェア5倍・・・とは言いつつも、マックの損益計算書の売上は4,000億ちょっと。このニュースで出ていた売上高との1,000億の差は、どこから来ているんでしょうか?マクドナルドの決算・財務分析◆「売上」ってなんぞ?マックの決算書を見ると、システムワイドセールス(以下、SWSと略記)なる単語が出てきます。このSWSの数値は5,100億円ちょっと。前述のニュースの数値と合致します。SWSとは、直営・フランチャイズ(以下、FCと略記)の合計売上のことです。つまり、マックの看板のお店で、みんながそれだけお金を払った、ということです。ここでさっきの問題をもうちょっと正確にする必要があります。つまり、SWSと損益計算書上における、数値の違い(1,000億)はどこから来ているか?答えは、ざっくりいうと、損益計算書ではFCからの上納金だけを売上として計上しているためということになります。ハンバーガー作って、人件費を払って、残ったのが儲け。その濃い儲けの一部をロイヤリティとして、本部に納め、本部(損益計算書)ではその額を売上として計上しているのです。決算書の売上高4,000億円は、直営店舗2,674店の売上3,600億円と、FC店舗1,072店の‘ロイヤリティ’400億円の合計値です。(下で述べますが、正確に言うと、これに「その他」の売上が加わって、4,000億円です。)そして、5,100億円は、直営店舗の売上に、FC店舗の‘ロイヤリティ’ではなく、‘売上’を合算したものなのです。売上を直販とFCからの‘上がり’だけでみるか、FCの売上を含めてみるかの違いですが、紛らわしいことは確かです。◆マック不動産さて、実はその他にも、決算上の売上高とニュースで言われていた額における中身の違いを産んでいるものがあります。それは、FCのオーナーに対する店舗売却収入です。マックは豊富な土地を所有していることから、その実質はハンバーガー屋ではなく、不動産だ!という指摘をされたことがありましたが、損益計算書だけを見ると、「本当に不動産屋さんでした。」ということになります。ただ、その額は43億円で、損益計算書上の売上の1%ちょっと。そこまでの大きな影響はないでしょう。(とはいえ、これは売上でなく特別利益に持ってきたほうが良いのでは・・・? と個人的には思います)。◆まとめここまでの教訓をまとめると次の2点でしょうか。1.定義に注意(有報の【財政状態及び経営成績の分析】なども細かく見ていきましょう)2.恒常的なものと、一時的なものを峻別すること(店舗売却収入とハンバーガーの売上は性質が異なります)財務諸表は、会社によって違います。同じようにFC経営を行っている会社でも、マックのように、FCのロイヤリティだけを売上として計上する会社もあれば、FCの売上をまるごと計上する会社もあります。売上の内容も、現金なのか、売掛金なのかで重要度合いも違うでしょう。掛売ばかりをたくさんやってしまうと回収リスクが高まります。そして、その売上の“安定性”も大事。顧客が固定されているインフラ系の事業なのか、一見さんばかりの居酒屋なのかでは、その意味合いも変わってくるのです。大事なことは、「売上」という言葉だけに縛られないこと。その「意味」は千差万別であり、しっかりビジネスの特性を捉えた方が実は本質がわかるということなのです。「数字をみないで、企業をみて、数字を想像してみる」有報を見て考えるのでなく、考えて自分の導き出した結果の‘答え合わせ’として有報をみるようになると、きっと別の世界が見えてくると思います。マクドナルドの決算・財務分析