「FRONT」という戦争グラフ誌を大学図書館で見たのだが・・・・・
A3版くらいの大きなサイズで、全ページにわたって戦艦、戦闘機、軍需工場、中国戦線の歩兵部隊、満州の鉱山等の大判の写真が載っているもので・・・・・記事は英文のもの、ビルマ語(のような)のものなどで書かれていて、あきらかに対外プロパガンダ用になっています。
このグラフ誌を当時の日本人がどれだけ見たかしらないけど、血沸き肉踊るような高揚感を感じるだろうと思われるシロモノで・・・・
今見ても、色褪せないハイセンスの優れものになっているのが・・・・凄いというか恐い気がするのです。
幻のグラフィックデザイン誌:FRONTより
FRONTという戦争グラフ誌をご存じだろうか。太平洋戦争時、錚々たるデザイナーによって制作された日本のグラフィックデザイン史に輝く傑作である。制作スタッフの一人だった多川精一氏による「戦争のグラフィズム」という書籍に詳しいが、ロシアアバンギャルドばりの「カッコイイ写真」で「ぞくぞくするような画面構成」をノリノリで追究した結果、とんでもない完成度に達することになったが、紙質がよすぎたり重かったりして結局効果的に配布できなかったらしく、まあ本来の目的(対外てきに日本の軍事力を宣伝すること)からはななめ上をいったようなキワモノ雑誌だったともいえる。費用対効果なんて頭になかったのだろう。
第二次世界大戦の少し前に、帝国陸軍参謀本部の肝煎りで、莫大な資金のもと「東方社」なる小さな謎の出版社(しかも株主に縛られる会社組織ではない)が設立された。従業員は、特高警察に追われている共産党員や、日本でトップクラスの芸術家・画家や写真家等で、戦時中も長髪のままスーツを着こなし、そこだけは自由を謳歌出来たという。
ソビエトのグラフ雑誌を参考に作られた、対外謀略用のプロパガンダ雑誌は「FRONT(フロント)」という。モンタージュ写真や、加筆により増えた艦隊や墜落する戦闘機等、改竄も激しいが、これらの技術は、戦后の写真界に多大な影響を与えた。見開き写真の構成も、他の雑誌を圧倒している。1989年~1990年に、平凡社から極めて高価ながら僅かに復刻した事があったが、現在は品切れのまま重版未定の状況である。
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このプロパガンダ誌がどれだけ実効力を発揮したかどうか、私は知らないけど・・・・・・
とにかく、メディアに踊らないリテラシーを持つことの大切さを、思い知らせるシロモノとなっています。
「戦争のグラフィズム」という本に『FRONT』の成り立ちが出ているようです。
【戦争のグラフィズム―『FRONT』を創った人々】
多川精一著、平凡社、2000年刊
<「BOOK」データベースより>
第二次大戦中、対外宣伝誌『FRONT』はいかに計画され、岡田桑三、原弘、林達夫、太田英茂、木村伊兵衛など東方社の人々がどのように関わっていったかを初めて明らかにする。本格的グラフ誌のモンタージュ手法、編集・視覚効果の圧倒的な宣伝力と素晴らしさを、多数の図版で紹介。
<大使寸評>
この本はまだ読んでいないが、図書館で探してみよう。
Amazon戦争のグラフィズム―『FRONT』を創った人々
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