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2012.11.07
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カテゴリ:歴史
 北京大教授の賀衛方さんがインタビューで「一党統治の強みで景気対策は成功、政治改革には逆行」と説いているので、紹介します。

賀衛方

賀衛方さんへのインタビュー <中国、トップ交代を前に>
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、11/7朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)

Q:北京の知識人が2006年3月、胡政権に政治改革を提言するため、非公開で会議を開きましたね。賀さんは将来の目標として「多党性、報道の自由、真の民主主義、真の個人の自由の実現」と発言されていました。
A:いまの政権が2期目を控えた時期でした。足場を固めて何かやれるのでは、と期待してのことだったのですが、進展しませんでした。二つの理由が考えられます。

 まず、08年の金融危機にあたり、即決で景気対策を打ち、短期的には成功しました。民主的な議論を経ないと動けない先進国と違う、一党統治の強みが発揮されてしまった。欧米が危機にあえぐなか、日本の経済規模も追い越し、相対的に強まった経済力を使って外交の場でも活発に動き始めた。北京五輪や上海万博も開いた。面倒な政治改革を急がなくてよい言い訳ができたのです。

 その結果、巨額の景気対策の実行を担った国有企業が以前より力をつけるなど、改革の逆行も起きている。政治家や役人の汚職の金額が数千億円ともいわれるのは、経済に国家が関与する範囲が広いからです。中国経済を「市場経済」ではなく、行政が強い権限を持つことを揶揄した「市長経済」という言葉まで生まれました。

Q:もう一つは。
A:リーダーたちの関係の変化です。毛沢東時代は、権威ある祖父と孫のようなもので、毛がやる、といえば良いことでも悪いことでも何でもできた。ほかの政治家を圧倒する力があった。トウ小平の時代は父と息子。一部の長老に配慮しながら、完全に意見が一致しなくてもたいていのことはコントロールした。

 しかし、胡錦濤の時代は明らかに違う。トップリーダーたちは、胡を長男とした兄弟のように見えます。全国人民代表会議(国会に相当)、宣伝、治安、経済など、それぞれが自分の担当分野を持ち、強い権限を行使する組織です。しかも、兄弟どうし率直に議論をするというより、他人の領域には口を出さないようです。毛時代の文化大革命のような大きな間違いも起こりにくい反面、関係する領域が幅広い決断を避けてきたのではないか。体制の核心であり、強い抵抗も予想される政治改革には手をつけなかった。

Q:後継者指名にも表れている。
A:毛が選べば完全に決まった。トウも江沢民、胡錦濤まで決められた。いまは誰が決めているのか分かりづらくなっている。飛びぬけた人が決めるわあけではないから「自分の方がふさわしい」と、人選に不満を持って闘争をしかける人がでてくる。

Q:巨額の汚職や職権乱用などで党籍を剥奪された元重慶トップ、薄シー来氏はまさに、そう見えました。
A:彼の性格もあるでしょうが、どんな手段を使ってでも市民や外国人の人気を集め、リーダーにふさわしいのは自分だと思わせるしか、このゲームに参加する手だてがなかったのではないでしょうか。圧倒的な力を持たない誰かが、見えない場所で指導層を選ぶ、という形を続けていれば、似たような権力闘争による政治的な混乱が、再び起きないとも限りません。政治を安定させるためにも、リーダー層を選ぶ仕組みにもっと大勢の党員を参加させ、過程を透明化する必用があると思います。

Q:賀さんは昨年4月「法治のために、心の中の理想のために」という公開書簡を発表しました。薄時代の重慶で、マフィア撲滅運動での法律を無視した逮捕や裁判の横行を指摘し、「文革の再現」と強く批判するものでした。文革時のつるし上げで、賀さんの父親は自ら命を絶たれたそうですね。
A:あの時代、私だけではありませんでした。やっと復活した大学入試に合格し、初めて法律を学んだのが重慶の西南政法大学です。指導者の専横を二度と許してはならない、と教授も学生も身にしみていました。その後の(薄氏の党籍剥奪に至る)展開は仲間たちと喜びましたが、残念なこともあります。
 この事件の裁判は、司法の独立とはほど遠い「政治ショー」です。誰がどんな罪を犯したのか、証拠、証人とも確かでない。あれだけの事件を短時間で判決する。検察官や弁護士の発言もよく分からない。中国では、司法も政治を支えるためにあることを世界に示してしまった。

Q:今年は20年に一度、米国の大統領選と中国のトップ交代が重なる年です。米国では公開討論など選挙運動を通じて外国人にも次のリーダーの考えが伝わります。一方の大国、中国はさっぱり分かりません。
A:共産党はみんな同じ意見を持っているという建前がある。伝統的に意見の不一致を表に出すのは、相手を政治的に打倒してからです。外交を含めて議論の過程はみせない。これでは、外国の中国への懸念が強まるのは仕方ありません。何を考えているのだろうか、と。中国は国際社会での評判、つまりソフトパワーを重視し始めていますが、国家の対外イメージは、内政のあり方と深くつながっていることを理解する必要があります。

Q:尖閣諸島をめぐる対立で、政府間だけでなく、経済、文化やスポーツの交流まで絶ってしまいました。村上春樹さんの本も北京の書店から一時、姿を消しました
A:中国政府は民衆の声が怖いのです。日本と交流することで誰かに責められるのではないか、と。人々から選ばれて統治を担っている正統性がないから、対立が怖い。反日デモのあとも、インターネット上に放火や略奪、日本車の破壊をとがめる意見の方が多いのを見届けてから、理性的な対応を呼びかけ始めました。

Q:言論や人権状況について発言してきた女性作家の「中日関係に理性を取り戻そう」というネットを通じた呼びかけ文に、賀さんも署名していましたね。政治的な対立を文化や経済ににまで持ち込んだことを、賢明さを欠くと批判しています。
A:中国に存在する多様な声が日本に伝われば、少しでも緊張がほぐれると思いました。経済成長を強調し、「論争せず」と言ったトウの改革はすでに限界にきています。人権や民主、報道の自由などを論じることを遠ざけてきましたが、ネット上では「論争」は始まっています。

Q:環境や労働条件に不満を持つ人々が大規模なデモをし、時に暴動にも転じています。先日もセッコウ省寧波市で化学工場の拡張に反対する人々が1週間もデモを続けました。共産党大会を前に、中国当局は警戒を強めていたはずですが。
A:だからいま。起きたのです。当局が緊張し、面倒がおきないよう民衆に圧力をかけてくる。騒動をおこせば、鎮めたい当局はおりてくる、自分の言い分を通しやすいぞ、と。道理のない政府には、道理のないやり方で抗議するしかないと思う人が増えています。当局は、治安維持の予算も人手も増やし、強化することで封じ込めてきました。しかし、あまりに強大化した部隊の怖さは、民衆だけでなく、権力者たちも気づいているでしょう。

Q:というと?。
A:治安・警察、軍隊が大規模となれば、それを管轄する長の権力も強大になります。社会を管理しようと作ったものが、いまの秩序に対抗しうる存在になり、いつか最高権力に向かってくるのではないか。その恐怖から脱するには、健全な批判勢力を抱えながら、人々の声を政治に反映するシステムを作るように本気で取り組むことではないでしょうか。

Q:新しいトップ、習氏は改革に踏み出すでしょうか。彼とほかのリーダーたちの関係も「兄弟」です。
A:中国では最高地位に就くまでは、本人がどんな考えを持っているかを見せないようにするので、よく分かりません。ただ、習氏がこれまでのリーダーと少し違う点があるとすれば、彼は共産党の高級幹部の息子として初めての総書記です。父親は開明的な人として知られています。父親が残した(人間関係などの)資源は、政治的な力なるかもしれません。
 
 経済発展にしか正統性を持てない政党が統治する国家は危険です。しかも、その経済成長も公正な富の分配などを実現するための政治改革と切り離しては考えられない段階に入っています。政治改革は向こう10年、大きな課題になると思います。

<取材を終えて>
 北京はいま、5年に一度の党大会を控え、民主や言論の自由を訴える人たちに当局の見張りがつく。街を離れさせられた人もいる。賀さんは28年来の共産党員。「敏感」なテーマの政治改革についても、法治を求めてきた学者として率直に語ってくれた。強さの源は何だろう。もっと話を聞きたくなった。
(聞き手:吉岡桂子)


 おお♪ 賀さんは、国家資本主義(市長経済)を牽引する国有企業を改革の逆行とまで、断じています。
 共産党員でもある賀衛方さんがものすごく正確な現状認識を披露してくれたが・・・・中国国内に、このような認識をのべる自由はあるのだろうか?
チャイナナインが既得権益をバックにあい争って自壊してくれること望む大使であるが・・・
賀さんのような認識があることに、複雑な思いがするのです。
つまり、もし仮に、漢族の統治者達が、このような優れた認識を持っているならば、侮れないのではないか?と思った訳です。

しかし、新体制になっても危機に変わりはないわけで・・・何らかの暴発が起きることでしょう♪

蛇足かも知れないが、夢も希望もない與那覇教授の中国観を紹介します。

Q:経済成長しながら、中国共産党が政治権力を独占する体制は不安定に見えます。
與那覇:いや、むしろ「経済発展が進めば、議会政治が定着して民主化が進む」という発想のほうが、フランス革命以降に作られたストーリーだと考えるべきなんです。中国は宋代に大変な経済発展をしても、むしろ皇帝独裁が進んだ。経済だけが自由化されて政治は独裁のままというのは、中国史の文脈では矛盾しないので、なかなか民主化を求める人々の声が届かない。

もっとも、民族の特性を熟知した特権階級は中国に見切りをつけて、家族を海外に送り出しているようです。






Last updated  2012.11.08 21:22:51
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