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2012.12.02
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カテゴリ:経済
<反TPPの核心>
 京大教授・佐伯啓思さんがインタビューで「過度な自由貿易は資本の奪い合いに国家間の対立招く」と説いているので、紹介します。

佐伯

佐伯啓思さんへのインタビュー <反TPPの核心>
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、12/1朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)

Q:なぜTPPに反対を。
A:ほぼ無条件の自由貿易に突き進もうとしており、非常に危険です。

Q:自由貿易が危険だと?
A:自由貿易が望ましい、という理論は経済学者リカードの国際貿易の比較優位説がもとになっています。二国間でお互いに生産品を特化して交易すれば、どちらも得をすると。そんな絵に描いたような図は現実にはない。製造業は国境を越えて技術移転し、得意分野が国外に移動することもある。むしろ各国は戦略的に比較優位を作り出そうとしている。いったん重要産業を手放したら技術はその国で育たない。農業をやめたら復活はできない。農業、工業、サービス業とバランスが大事。1つに特化するのはリスクが大きすぎます。
Q:そうならないようにルールを作る交渉をすればいいのでは。
A:僕は米国陰謀論者ではない。でも米国はTPPを戦略的に使おうとしているとは思います。日本が戦略性で優位に立てるとは思えません。

Q:かつての日米構造協議のような二国間交渉なら米国の圧力をまともに受けるでしょうが、TPPなら10カ国で米国と団体交渉ができる。その方がやりやすいでしょう?
A:日米FTの方がお互いの利益が明確になる分だけましです。日本の農業、米国の自動車など重要産業だけを関税撤廃の例外にもできる。無理なら決裂すればいい。原則すべて自由化のTPPは、そういう駆け引きがしにくい。TPP賛成論者は日本に利益があるというが、ルールが決まっていないのに利益が得られるとは限らない。

Q:世界貿易機関(WTO)のルールができたのは20年も昔。しかも新ルールをめぐる交渉は、10年のマラソン交渉の末に破綻しました。TPPの試みは、空白の世界ルールを埋める土壌づくりではないのですか。
A:WTOが150以上の国で合意するのが難しかったなら、先進国だけ、あるいは中国など新興国を含め20~30ヶ国で改めて決めればいい。それを補うために二国間のFTAもあるのですから。

Q:日本がTPP参加をにおわせただけで中国が刺激され、停滞していた日中韓FTA交渉まで動き出しました。日米がこうやって中国をなんとかルールのある世界へ引き込もうとする。いいことではないですか。
A:中国が容易に国際的なルールに乗るとは思えません。それに今のTPP賛成論にはあ、「いずれ中国が入る」「対中ブロックになる」という正反対の見方がありますよ

Q:どの自由貿易圏にも入らなければ、日本はルールづくりで孤立してしまいます。空洞化で国内の雇用機会をますます失います。
A:孤立はしません。現状だって孤立していないでしょう。今の産業の空洞化は、むしろ円高と過度なグローバルコスト競争の結果です。

Q:コメの典型例ですが、国内市場に閉じこもってきた日本の農業は縮小し続けています。成長の無い産業や市場は持続可能なものですか。
A:農政の失敗もあるが、一番の理由は日本人がコメを食べなくなったっことです。日本の農業を米豪のように大規模農業で国際商品として成功させるのは難しい。世界は食料戦争の様相を呈してくるでしょうから、最も大事なのは自給率をあげ安定した供給を確保することです。

Q:中国で日本の高いコメを買ってくれる富裕層が急増しています。貿易自由化を進めればコメも輸出できる。有望市場が隣りにあるのになぜチャンスを生かさないのでしょう。
A:同時に中国から安価な食料品も入ってきます。時に粗悪なものも来るでしょう。いずれにしても中国市場への過度な依存は、逆に中国経済がクラッシュした時に大変な影響を受けてしまう。中国の将来は不安定で日中関係も波乱含みです。過度な中国依存はリスクが高すぎますよ。

Q:戦後の自由貿易体制は、各国の保護主義が世界大戦へと暗転した反省から生まれました。国家間の対立を緩和し、関係を進化させる「自由貿易の効能」をどう考えますか。
A:一般的には保護貿易が大恐慌をひどくしたと言われるが、それは正しくありません。むしろ19世紀から20世紀初頭には、過度な自由競争やグローバリズムによって資本の争奪戦が起きました。それが帝国主義につながり、やがて大戦を引き起こした。その方が危険なのです。1930年代の大不況の直接の原因は保護主義ではなく、20年代の金融グローバル化のなかで生じたバブルです。それが崩壊して大恐慌になった。

 だから閉鎖経済をつくれと言いたいわけではない。今日の世界も金融の過度なグローバル化が進み、投機資本が国内経済を撹乱している状態で、自由貿易が双方の利益にはならない。世界経済が底上げしている間はいいが、やがて条件は崩れる。資源の制約もある。中国、インドなど人口大国が高成長を続ければいずれ行き詰まる。その後に出てくるのは市場や資源をめぐる帝国主義、激しい国家間対立です。そうなる前にグローバル競争を抑えないと。

Q:フランスの歴史学者エマニエル・トッドが言うように「グローバル経済のレベルを落とせ」と。
A:そうです。世界全体が意図的に。ただ、一気にやるのは難しいから、少しずつもっていくしかない。自由貿易のイデオロギーにとらわれず、みんながもう少し「内向き」になった方がいい。欧州はそう考え始めたようにも見えます。

Q:どの国も内向きになったら、日本のエネルギー・食料安保はもっと難しくなる。そのとき日本は内向きでいられますか。日本自身が帝国主義になってしまいかねないのでは。それが太平洋戦争ですよね。
A:そうです。この時代には日本もある程度の軍事力や政治的な発言力が必要になる。外交力ももっと試される。ただ、資源獲得のために無理に海外進出する必要はない。日本経済を縮小しろとは言わないが、低成長でやっていく。成長第一主義をやめて、環境配慮型のライフスタイルに変える。そう腹をすえ、ほかの国とはちょっと違う、独自の国づくりをすればいいじゃないですか。

Q:日中関係が悪化しています。TPP陣営に入って中国の影響を受けずにルールを決める、という安全保障上の戦略を考えられませんか。
A:そういう意見はあるが、なぜ日米同盟ありきなのか。安全保障は、まず日本が独自に自らの国を、資源や国民財産を守る。これが原則です。それをやろうともせず、米国に守ってもらうために経済を委ねるというのは本末転倒です。TPPは経済的利益という別問題。そこを一体にするから話がややこしくなる。

Q:経済学は今の停滞や危機に有効な処方箋を示せていません。脱成長モデルだって確立されていない。どうやって実現するのですか。
A:世界はこれから経済も政治も、そして外交も不確実性が高くなる。グローバル化のもとではこれが予測のつかない形で国内経済に影響し、雇用を不安定にする。できるだけリスクを避け、国内でお金が回る構造を生み出した方がいい。「内向き」というとそれだけでダメという俗な風潮がありますが、あえて戦略的に内向きになることが必要です。

Q:どのようにですか。
A:構造改革で弱体化した生活基盤や地方都市、コミュニティーの復興など国内でやることはいくらでもある。日本企業はできるだけ国内市場を開拓し、国内投資をする戦略をもてと言いたい。民間需要がない今のような時期は、政府が防災や将来の社会像をめざして公共投資を進めることも必要です。日本は国民が働いきに働いてここまで来た成熟社会。さらに新興国と競争すれば、個々の労働者は大変な負担を強いられる。コスト競争から賃金が下がり、デフレが進むからです。これ以上、新自由主義的な競争システムでやるべきではない。競争主義や成果主義、金銭主義から少しずつ撤退すべきです。

<取材を終えて>
 いまだに誰も処方箋を示せない。それが今の経済危機の恐ろしさだ。この半世紀、私たちは歴史上、際立って高い経済成長を謳歌してきた。それが何かを狂わせているのかも知れない。佐伯さんの「スピードを落とせ」との主張には、とても共感する。だとしても「内向き」の先に本当の解があるとは、まだどうしても思えない。
(編集委員:原真人)

反米スタンスで、中国のリスクも見すえた非常に明解で納得のゆく経済論でした。
アメリカ仕込みの竹中さんなんかが雑音を入れるので、経済学が難しくなるんでしょうね。

『経済学の犯罪』著者・佐伯啓思インタビュー米国発の「市場主義経済学」では、いまの危機は解決できない!がええでぇ♪







Last updated  2012.12.02 00:09:40
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