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2013.03.30
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カテゴリ:歴史
<アジア主義から見た中国>
 中島岳志さんがインタビューで「主権と平等を求め、圧政と闘う連帯がもともとの出発点」と説いているので、紹介します。

中島

中島岳志さんへのインタビュー <アジア主義から見た中国>
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、3/29朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)

Q:アジア主義と言われると、米国から離れて中国とやっていこうと主張しているようにも聞こえます。
A:そう単純ではありません。近年の中国共産党は過剰な資本主義に突き進み、国内においては抑圧的な政治体制を維持しつつ、外には覇権主義的な姿勢を見せてきました。日本人がいらだってしまうのは、その権威主義と国益追求の露骨さにも原因があるのだと思います。それは私たちの中にもある側面ですが。

Q:アジア主義は戦前日本の侵略思想だったのではありませんか。
A:利益や打算に基く「政略」としてのアジア主義はそうです。大東亜共栄圏を目指す帝国主義の道具として利用されました。しかし当初、頭山満や宮崎滔天は西洋列強の侵略にアジア諸国と手を携えて抵抗しようと訴えた。彼らの「心情」としてのアジア主義は、出発点から侵略を意図していたわけではありません。

Q:どう違っていた、と。
A:「一君万民」を掲げて天皇のもとの平等社会を目指したはずの明治維新が変質し、薩長中心の特権支配が生まれたとき、これに反抗する武装闘争が各地で起きました。それがついえると、言論による抵抗として自由民権運動が高まり、その流れの中で頭山も福岡で玄洋社の活動を始めた。そのとき天皇主義とともに掲げた原則が、ナショナリズムと国民主権です。国家は一部の人間のものではなく国民のものだ、というナショナリズムと、「人民の主権を固守すべし」という国民主権の理念が右翼の原点にあったのです。
 この観点で世界に目を転じたとき、頭山には欧米の帝国主義と国内の封建体制という二重の圧政に苦しむアジア人民の姿が見えました。古い王朝を倒し、近代化によって万民が救われる新しい政治体制をつくるのがアジアの王道である、と考えた。各国で闘っているナショナリストたちと盟友として組み、二重の圧政を打破しようと踏み出していく。これがアジア主義の源流です。

Q:そういうアジア主義者なら、今の中国をどう見るでしょう。
A:一部特権層の圧政と格差社会に多くの人民があえいでいる、と見てとるでしょう。彼らを救おうと海を渡って、民主化運動を担う学生や活動家を支援して一緒に闘ったかもしれません。まさに宮崎が上海に渡り、私財をなげうって、日本に亡命して後に辛亥革命を成し遂げる孫文を支援したように。ところが昨年、中国の盲目の人権活動家、陳光誠氏が脱出先に選んだのは米国でした。日本こそが受入れ、サポートすべきだという発想も覚悟も見えなかった。とても残念でした。
 ただ同時に、頭山や宮崎なら日本国内の格差社会にも断固として抵抗したでしょう。それが愛国者の本義ですから。

Q:しかし、中国のナショナリズムは反日と重なっています。それでは支援も連帯も、難しいのでは。
A:21カ条の要求、満州事変、日中戦争という歴史をへたために、民主化を要求するナショナリズムが対外的には反日デモにもなる。そこがとても難しいところです。これは日本が自らまねいたタネでもあります。かつて中国の主権を踏みにじった当事者なのですから、歴史をしっかり見つめ直すべきです。

Q:歴史を持ち出されると、ものが言えなくなりませんか。
A:そんなことはありません。中国にも、かつてあなたたちが抵抗した日本帝国主義と同じ覇権主義の道を進んで一体どこに行くつもりですか、と問わなければなりません。
 そもそも「正しい歴史」などありえない。日中双方が自分が見たい物語の中に歴史をあてはめてきただけです。これは日本国内でも同じで、たとえば私がインドのR・B・ボースを調べたとき、彼は左派から見ると日本帝国主義と手を結んだ誤った革命家なんですが、右派から見ると日本の聖戦の論理をよく理解した同志になる。いずれも都合のいい鋳型にあてはめているだけでした。
 歴史を特定の立場から裁断するのではなく、なぜ相手はそう主張するのかと、議論を近づけていく作業が双方に必用なんだと思います。

Q:歴史以外にも、日中間には問題山積です。
A:「政略」的なものに議論が終始していますよね。もっと長いスパンで大きな議論をしないと真の解決はないと思う。アジアとは何か、をじっくりと問い直さなければなりません。その努力を日中双方が怠って、相互不信の迷路に入り込んでいるように見えます。
 近視眼的で単眼的になってしまった私たちのまなざしを、私はもう一度広くて複眼的なものに引き戻したい。その手がかりが、アジア主義のてんまつにあると思うのです。当初の「心情」が帝国主義にのみ込まれ、踏ん張れなかったのはなぜなのかを考えたい。

Q:しかし、欧米に踏みにじられた「奪われたアジア」の時代は去り、成長を遂げて「アジアの世紀」と言われる時代です。アジア主義は思想になるのでしょうか。
A:政治権力を求めるアジア主義は、もう終わっています。しかし、文明的な抵抗は続けていく必要があると思う。「抵抗としてのアジア」は西洋の物質主義や拝金主義に対する抵抗でもあります。インド独立の英雄ガンジーが唱えたのも、英国支配からの単なる独立ではなく、英国が支えてきた近代的な認識、人間観を乗り越えることでした。

Q:戦後、頭の中まですっかり西洋化してしまった私たちに、アジア的な思想が響くでしょうか。
A:西洋化、近代化にどっぷりとつかっているからこそ、逆説的にアジアに意味が出てくるのではないでしょうか。ガンジーは、アジア的な認識のあり方を山にたとえました。山の頂上はひとつだが、そこにいたる道はいくつも存在する。ヒンドウー教、イスラム教、仏教、キリスト教といくつもの道があり、ばらばらに見えるけれど、究極的な真理は一つであるという不二一元論です。真理の唯一性を求めるとともに、真理にいたる道の複数性を認めた。西洋的な認識では「違いは認め合おう」とはなっても、異教徒に自分と同じ真理が宿っているとは思わない。相対的な多文化主義になりますから。
 そんなアジアの発想が日本美術に表れている、と考えたのが思想家の岡倉天心でした。「東洋の思想」という著書で「アジアは一つ」と書き、「究極普遍的なるものを求める愛」こそがアジア民族に共通の思想的基盤だとした。それが東洋思想と通底し西田哲学へと発展します。
 過去に学び、「思想」としてのアジア主義を抽出できれば、アジアとの向き合い方も見えてくるのではないか。対立が激化し、行き詰まった今の世界を乗り越える手がかりがアジア的な認識論だと思うのです。

Q:「東アジア共同体」構想は、その具体化の一つですか。
A:そうは思えません。政治、経済的な利害に基いてアジアとつながるのが合理的だ、という発想は一番危ない。「政略」的なアジア主義を進めた戦前と同じ道をたどりかねません。アジアと対話を深める場は必要ですが、性急に政治的共同体になる必要はない。かつて評論家の竹内好が書いたように、アジアを単なる地理的空間ではなく、次の新しい文明を考えるための重要な方法論として考えたいのです。
 欧州も中世のころから、キリスト教を基盤として「欧州とは何か」を議論してきました。その積み重ねのうえに、ようやく民族も言語も超えた欧州連合(EU)という枠組みが見えてきた。アジアには共通する宗教もありませんし、「アジアとは何か」という思想的追求もまだまだ足りない。漢方薬のように、時間をかけて体質そのものを変える必要があります。

Q:対立する中国とはどう向き合っていけばいいのでしょう。
A:ともに思想的アジアを追求しつつ、民主化を支援すべきです。そして政治的、軍事的な覇権主義に対しては毅然と抗議する。
 敗戦後、アジア主義は米国に全否定され、私たちは捨てなくてもいい蓄積まで捨ててしまいました。アジアとの人の行き来は増えましたが、本質的な意味で出会えているのか。出会い損ねがたくさんあるように感じています。


<取材を終えて>
 中島さんが私淑する竹内好が、「日本のアジア主義」論文を書いたのは50年前。中国で近年、竹内の翻訳が出版されたという話を聞いて、少し希望を感じた。彼に関心を持つ中国人とは、きっと話が通じるはずだ。言論の自由を求める中国紙「南方週末」の記者たちにもエールを送りたい。日中双方が変わらないと前に進まないのだから。
(聞き手:萩一晶)


大漢族主義にイラつく大使にとっては、漢族に対するアメリカ人の強硬論の方がしっくりくるのだが・・・
米中は覇権主義では似た者同士であり、両者にまかせると破局に向かうような怖さがあるのです。
破局を回避する道は、中島さんの説くアジア主義なのかもしれないが・・・・
軍事力に頼る漢族が自らの論理で破局を避けた先例が、有史以来、はたして有ったのだろうか?と疑うのである。

そして、日米安保に頼ればいいという短絡した考えでは、立ち行かない気もするのです。







Last updated  2013.03.30 12:43:35
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