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2013/06/22(土)13:02

中国、労働者の権利は

経済(506)

 中国人民大学労働関係研究所長・常凱さんがインタビューで「不公平な富の分配、経済発展の犠牲に甘んじない新世代」と説いているので、紹介します。 中国における労働争議受理件数 常凱さんへのインタビューを6/22朝日デジタルから転記しました・・・無料で見せるのが木鐸というものでは?) 中国で労働争議がたえない。賃上げを求めて経営者を軟禁したり、予告もなく集団で職場を放棄したり――。「世界の工場」を支えてきた働き手たちの怒りの背景には何があるのか。日系企業で起きたストの仲裁役を務めたこともある常凱(チャンカイ)さんは、主要国では当たり前の労働者の権利が守られていない構図がみえるという。 Q:中国で働き手が実力行使する事案が目立ちます。なぜですか。 A:労働者の意識、経済や政治的な環境が、彼らの親の世代のころとは大きく変わっているのです。 Q:というと?。 A:労働者の保護や雇用の安定を定めた労働契約法が2008年に施行され、権利意識が強まりました。同時に、賃上げや労働条件の改善は、団結して要求しなければ実現できないことも分かってきました。  携帯電話やインターネットの普及により、情報量も組織力も格段に増しています。賃金や福利厚生など待遇に関する情報があっという間に広がるだけではない。ストの計画までネット上に設けられた専用サイトで議論されているのです。 Q:経済的な変化とは。 A:中国は安い賃金を売りにして世界から投資を呼び込み、輸出を増やし高成長をとげました。ある意味、この30年、労働者を犠牲にして発展してきたともいえます。働き手からみれば、国や企業の成長に比べて給料の伸びが小さく、物価や住まいの急騰に追いつかない。富の分配の不公平感が争議の根底にあります。  私が仲裁に呼ばれたホンダの子会社の部品工場でおきた『南海本田』ストもそうでした。近所の工場より給料は高かったんです。だけど従業員たちは、会社のもうけの伸びと比べて、賃上げ幅が小さすぎる、と怒っていたのです。 Q:広東省の最低賃金は現在、日本円で月2万5千円ほどですが、中国政府は15年までの5年間で最低賃金を毎年13%ずつ上げる方針です。 A:2000年代半ばまで抑えてきた反動ともいえます。中国の出稼ぎ労働者は、農村出身の労働者という意味で『農民工』と呼ばれてきました。農民工は2億6千万人とされますが、ほぼ半分は1980年代以降に生まれた若者で、一度も農業をしたことがない人が増えています。  彼ら『新世代』は、ふるさとにいつか戻る前提で我慢して働いてきた親の世代とは違います。都市に定住したい人が増えています。スマートフォンを持ち、それなりに生活を楽しみ、結婚し、子育てするなら最低賃金ではとうてい足りません。      ■     ■ Q:労働者を取り巻く政治の環境はどう変わりましたか。 A:中国共産党・政府はここ数年、労働争議を政治的な紛争ではなく、労働者の経済的な交渉ととらえるようになり、以前より寛容になりました。彼らが貧しいままではストより深刻な社会の動乱を引き起こしかねない、という危機感が生まれているのでしょう。公平感のない経済成長では、政権の基盤となる社会の安定は築けませんから。  労使のもめごとは、80~90年代はもっと激しかった。道路を車でふさいだり、ガラスを割ったり。それに比べればいまは、労働者の抗議活動は会社の敷地の中にとどまるものがほとんどです。外でやれば、治安を乱したとして逮捕されかねないと分かっているからです。ただ、大きな問題は、労働者を本当の意味で代表する組織がないことです。 Q:中国には「工会」と呼ばれる労働組合がありますが。 A:中国で唯一の労働組合『中華全国総工会』が、すべての企業の工会を束ねています。しかし企業の管理職が工会の幹部になっているし、選ぶのも地方の共産党です。地方政府の影響も強い。経営側と権力が結びつく『権貴資本主義』の表れです。  工会が従業員を代表しているとは言い難く、ここ数年、何百件と起きたストも工会が組織したものではありません。従業員が自発的にやったものなのです。 Q:いわゆる「山猫スト」なんですね。 A:そうです。ホンダの子会社のストでも、従業員が経営者に対して、労組の代表を自分たちで選びたいという要求がありました。それは経営側ではなく従業員側の問題だよ、と話して鎮めたこともありました。  中国には労働者の声を反映する仕組みが必要です。経営側にとっても、ストや賃上げ交渉がもっと秩序だって進む利点があるでしょう。しかし、共産党は工会を通じて労働者を管理しています。これを変えるのは、中国の政治制度にもかかわるので、なかなか難しい。 Q:スト権も82年に憲法から削除されたままです。 A:文化大革命のあと、社会を乱す行為として削られました。もちろんストそのものは禁止されていません。中国も批准する国際条約で認められているから、ストは違法ではないという解釈です。ただ、私は労働者の権利として、きちんと規定すべきだと考えています。 Q:労働争議が増えている背景には、一人っ子政策の影響で、若い働き手が減り始めて「売り手市場」になっていることもあるのでは。 A:中国の人手不足は季節要因がとても強い。多くの工場労働者が2週間ほど休暇をとって里帰りする旧正月前後が顕著です。彼らは休み明けに職場に戻るさい、より良い待遇の会社を見定めようと、働き続けるか否か、いったん保留する。企業側は労働者が帰ってくるか分からず、焦る。毎年、この場面で『人手不足』が吹聴されるのです。個人の行為でも1億人以上が同じ考えで動けば、結果的に集団交渉の効果をうんでいる。中国版の春闘ともいえます。  私は現時点では、中国の労働者が本当に不足しているとは思っていません。足りないのは技術が必要な労働者です。中国の雇用の現場は、ミスマッチが問題なのです。 Q:外資系のみならず、中国企業のなかにも、賃上げが続く中国から工場を移す動きが出ています。競争力の低下が心配ではありませんか。 A:経済のグローバル化が進み、企業の競争は激烈です。企業は賃金が安いところに工場を移そうとする。お金は自由に国境を越えるが、労働者はそうはいかない。同じ労働に対して同じ報酬を与える『世界同一賃金』を考えると、労働者の賃金は一部の幹部を除いて安いほうに引き寄せられるでしょう。しかし賃金の安さは、その国の競争力の一部にすぎません。労働者の質、法整備をはじめとする投資環境、生産ネットワーク、市場の大きさや文化などいろんな要素があります。 Q:中国に進出している日本企業は、多発するストに悩んでいるだけでなく、「反日」の行動にもリスクを感じています。 A:頻発する労働争議は『反日』の表れではなく、経済的な理由だと思います。従業員を見下すような態度をとれば感情的な反応が返ってくるかもしれませんが。日頃から、彼らが何を考えているか、情報を得られるルートをきちんともっておくべきでしょう。日本の会社が本当に嫌なら最初から就職しないか、ストをしないで辞めてしまうはずです。      ■     ■ Q:国際競争のなかで、日本の安定した雇用関係も大きく揺さぶられています。 A:戦後日本の復興と繁栄は、伝統的な労使関係にあったと思います。終身雇用や年功序列、企業内の組合、仕事の要求は厳しくても社員を大切にする中小の家族的な経営は、社会に安定をもたらしました。それを基礎として日本企業は力をつけたし、国民も国家の成長とともに豊かになった。いまの中国に欠けているものです。  80年代以降、経済のグローバル化が進み、日本的な雇用も変革を迫られました。世界中で臨時や短期、派遣といった融通のきく雇用形態が広がっています。経済情勢の変化に応じて働き方が変わっていくのは当然ですが、日本のもつ良さを完全に捨ててしまわないでほしい。 Q:なぜですか。 A:長い目でみれば、安定した雇用には、企業や社会全体を安定させ、経済の発展を支える積極的な意味もあるのです。中国は豊かな人と貧しい人が二極分化し、社会の不安定化が著しい。日本は『失われた20年』といわれても、社会は成熟と安定を保っている。これは労使関係の伝統と無縁ではないと思います。 中国人民大学労働関係研究所長・常凱(チャンカイ)さん:52年生まれ。中国で労働契約法など労働にかかわる法律づくりに助言している。現在、北海道大大学院法学研究科教授として札幌に滞在。 <取材を終えて> 「南海本田」ストに参加したある女性社員(21)はその後、大学に移って労働問題を学んでいるそうだ。奨学金の獲得を知らせる携帯メールをうれしそうにみせてくれた。労使の力の均衡なくして社会の安定なし――。働く現場から中国社会をみる常さんの言葉は、いまの日本にも響く。 (聞き手:吉岡桂子) 唯一の労働組合『中華全国総工会』は共産党の飾り物みたいですね。 斯様に、共産主義の中国に労働者の声を反映する仕組みがないことこそ、根本的な矛盾なんでしょうね。

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