<内田先生かく語りき9>
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)
・『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき
・直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」
・人口減社会に向けて
・時間意識と知性
・Madness of the King
・吉本隆明1967
・大学教育は生き延びられるのか?
・こちらは「サンデー毎日」没原稿
・奉祝「エイリアン・コヴェナント」封切り
・米朝戦争のあと(2件)
・気まずい共存について
(長くなるので省略、全文は
ここ)
2018/04/03『街場の憂国論』文庫版のためのあとがきより
巻末に僕が不安げに予測した通り、「現在の自民党政権は、彼らの支配体制を恒久化するシステムが合法的に、けっこう簡単に作り出せるということ」を特定秘密保護法案の採決を通じて学習しました。その結果、2014年夏には集団的自衛権行使容認の閣議決定があり、2015年夏には国会を取り巻く市民の抗議の声の中で、安全保障関連法案が採決され、2017年には共謀罪が制定されました。
そうやって着々とジョージ・オーウェルが『1984』で描いたディストピアに近い社会が現実化してきました。
その間ずっと安倍晋三がわが国の総理大臣でした。ほんの一週間ほど前までは、彼が自民党総裁に三選され、年内にも改憲のための国民投票が行われるということが高い確度で予測されていました。でも、3月に入って森友学園問題についての公文書改竄が暴露されて、今は再び政局が流動化しております。ですから、この本が出る頃に日本の政治状況がどうなっているか今の時点では予測がつきません。そういう政局を横目にしつつ、文庫版あとがきとしてはもう少し一般的な話として「国の力とは何か」ということについて一言私見を述べておきたいと思います。
率直に言って日本は急激に国力が衰えています。国力というのは、経済力とか軍事力とかいう外形的なものではありません。国の力をほんとうにかたちづくるのは「ヴィジョン」です。
「ヴィジョン」とは、自分たちの国はこれからどういうものであるべきかについての国民的な「夢」のことです。かたちあるもののではありません。「まだ存在しないもの」です。でも、それを実現させるために国民たちが力を合わせる。そして、そのような夢を共有することを通じて人々は「国民」になる。そういうものなんです。まず国民が「いる」のではありません。「あるべき国のかたちについて同じ夢を見る人たち」が国民に「なる」のです。その順逆を間違えてはいけません。
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2018/03/17直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」より
韓国に毎年講演旅行に出かけている。ご存じないと思うけれど、私の著作は教育論を中心に十数冊が韓国語訳されていて、教育関係者に熱心な読者が多い。ここ三年ほどの招聘元は韓国の教育監である。見慣れない文字列だと思うが、日本とは教育委員会制度が違っていて、韓国は全国が17の教育区に分割されていて、それぞれの区での教育責任者である教育監は住民投票で選ばれているのである。
数年前にこの制度が導入された結果、多くの教育区で教員出身の教育監が誕生した。彼らは自身の教員経験を踏まえて、できるだけ教員たちを管理しないで、その創意工夫に現場を委ねるという開明的な方針を採った。その結果、日本ではまず見ることのできない自由な校風の公立学校が韓国の各地に続々と誕生している。
そういう歴史的文脈の中で、私のような人間が各地の教育監に公式に招聘されて、教員たちを前に講演をするということが起きている。日本には私に講演を依頼する教育委員会が一つもないという現実と比較すると、日韓の教育行政の差異が際立つはずである。
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(長くなるので省略、全文は
ここ)