カツラの葉っぱ 大好き!

2021/03/01(月)00:10

『翻訳教室』1

気になる本(3636)

図書館で『翻訳教室』という本を、手にしたのです。 先日、柴田さんの『翻訳に関する100の意見』という本を読んだのだが面白かったので・・・チェーン読書というわけです。 特に柴田さんと村上春樹の対談が載っていて、興味深いのです。 【翻訳教室】 柴田元幸著、新書館、2006年刊 <「BOOK」データベース>より チュアート・ダイベック『故郷』、バリー・ユアグロー「鯉」、レイモンド・カーヴァー「ある日常的力学」、ハルキ・ムラカミ=村上春樹(英訳はジェイ・ルービン)“かえるくん、東京を救う”、イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』より「都市と死者2」、アーネスト・ヘミングウェイ『われらの時代に』より第5章と第7章の抜粋、ローレンス・ウェシュラー「胞子を吸って」、リチャード・ブローティガン「太平洋ラジオ火事」、レベッカ・ブラウン「天国」。村上春樹、ジェイ・ルービンもゲスト参加!東大文学部の翻訳演習を完全収録。 <読む前の大使寸評> 柴田さんと村上春樹の対談が載っていて、興味深いのです。 rakuten翻訳教室 村上春樹との対談を見てみましょう。 p149~ <村上春樹さんを迎えて> 柴田元幸:前々回、レイモンド・カーヴァーをとりあげて、村上春樹さんの翻訳も参照したり、前回は村上春樹さんの作品を取り上げたり、と、なんだか授業が村上モードに入っていたことにみなさん、気づいていただろうか。というわけで今日は村上さんご本人においでいただきました。 村上春樹:(教室に入ってくる) 一同:(びっくりして息を呑む。数秒おいて一斉に拍手) 柴田:今日は主にみなさんから質問を受けて、村上さんにお答えいただくという形にしたいと思います。ええと、村上さん、質問を受ける前に、まず学生に向けて何かお話しされますか? 村上:特に話すこと考えてないんですけど…でも、何か話しましょう。えーと柴田さん、これは翻訳の授業ですよね。 柴田:そうですね、はい。 村上:では、翻訳の話をします。僕は25年ぐらい翻訳の仕事をしているんですけど、翻訳を正式には勉強したことはないんですよね。大学のときも、早稲田の演劇科というところに行っていて、英語を専門にやっているところではなかった。  演劇科にいたときにあった英語の授業は一つぐらいかな。そうだ、テネシー・ウィリアムズを一年読んだんですよね。そのときの僕の先生というのが、テネシー・ウィリアムズが大嫌いなヒトだった。それなのに一年間ずっとテネシー・ウィリアムズを学生に読ませて、毎週悪口を言っていました。テネシー・ウィリアムズがいかに二流の書き手であって、戯曲の内容がいかにくだらないかというのを全部いちいち言うわけ。名前の付け方が気に入らないとかね、この筋の展開が気に入らないとか。僕はテネシー・ウィリアムズってわりと好きだったんだけど、一年後にはなんとなく嫌いになってた(笑)。だから大学の授業っていうのにはあんまりいい思い出がないんです。 柴田:アメリカ文学以外にも、英語に関する授業はいろいろあったんですか? 村上:いや、演劇科ではフランスとかドイツとかのほうが多くて、英語の授業は少なかったです。なのに、どうして翻訳をするようになったかというと、やはり好きだから家でずっとやってたんですよ。英語の本を読んで、これを日本語にしたらどういう風になるんだろうと思って、左に横書きの本を置き、右にノートを置いて、どんどん日本語に直して書き込んでいきましたね。そういう作業が生まれつき好きだったみたいです。  それで結局、30歳のときに小説家になっちゃったんだけど、小説書くより翻訳してたほうが楽しい。だから最初に『風の歌を聴け』とう小説を書いて「群像」新人賞をとって何がうれしかったというと、これで翻訳が思う存分できるということでした。だからすぐにフィッツジェラルドを訳したんですよ。 柴田:へーっ。(柴田の驚きを学生たちもおそらく共有している) 村上:以来25年間、小説書いては翻訳やって、翻訳をやり終えると小説書いて、っていう風に…僕は「チョコレートと塩せんべい」と言ってるんだけど、チョコレートを食べて塩辛いものを食べたいなと思うと塩せんべい食べて、甘いものがいいなと思うとまたチョコレート食べて…永遠に続くんですよね。雨の露天風呂ともまた同じ。出ると冷えてお風呂に入るとまた暖まるからまた出て冷える。一種の永久運動ですね。 柴田:作品Aを訳すと、その次にご自分の作品Bを書かれるときに前に訳したものが直接影響したりするんですか? 村上:しないです。 柴田:そういうものではない? 村上:そういう影響がもしあるとしても、時間がかなり経過してからのことでしょうね。だから直接的な影響を受けることはあまりない、と言ってしまっていいでしょう。ニ、三日前にグレイス・ペイリーっていう女性作家の短編集を訳し終えたんです。彼女については五、六年前に別の短編集、えーと、『最後の瞬間の… 柴田:…すごく大きな変化』。 村上:そう、『最後の瞬間のすごく大きな変化』を訳していた。で、今度、『人生のちょっとしたわずらい』という短編集をニ、三日前に終えて手が離れ、いまいちばんほっとしてるところなんです。と言いながら一昨日からまた別のものを訳してるんですけど。 柴田:今度はなんですか 村上:マルカム・カウリーの「フィッツジェラルド論」。これもほとんど趣味ですね。 『翻訳に関する100の意見』3にも村上さんの凄さが述べられています。

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