042360 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

フリーペーパー毬 <贈る>

2016.01.17
XML
カテゴリ:贈与のはなし


『愛とか正義とか』(平尾昌宏著)から抜粋してご紹介します。

この本は哲学(と倫理学)の入門書です。
「正義」「自由」「愛」の3つうち、どれを重視して考えればいいのか、いろんな事例を出して学生(読者)に思考を促しています。
「正義」は社会的平等や法的平等、権利などを重視する考え方で、「自由」は個人の自由を重視する考え方。「愛」は身近な人間関係のなかにある感情や、神の愛も含みます。

哲学的にこれら三つは対立します。どれかひとつが勝っていると言えません。
自由を重視する人は、他人との関係である愛を「私を拘束する」と否定的に見ます。自由を重視する人たちの「法的平等は自由を阻害する」とする考えは、思想界で強い影響力を持っています。社会的正義がないと困りますが、それはあくまで社会のなかの話で、身近な人間関係では、場合によっては正義より愛が大事に思えることもあります。でも博愛も不可能。人間はどうしようもなく有限な存在で、どんなに人のためになにかしたいと思っても、すべての人には無理。愛の領域は狭く、大事にする人とそうでない人との間に差もつけます。

このような対立(拮抗)のなかで、著者は対立を超えようとする可能性(道筋)を見出そうとしているように思えました。


※以下<>内が抜粋です。

<授業で「何が幸せか」という問題を出すと、「好きな人と一緒に居られることです」とか「家族と平和に暮らせるのが幸せです」と書いてくる人がいます。実際には自分の自由によって「愛」を選ぶということもありうる…>

<しかし本当に「愛を選ぶ」ということがあるのか?ちょっと考えるべきことがありそうです。感情としての愛の他に、倫理的な関係としての愛というものがありうると考えました。愛は私のなかにあるものばかりではなく、私とあなたの「間」に浮上してくるものでもありました。私が愛を持つのではなく、いわば、愛が私を包み込むようなあり方です。>

<「私」からすると愛は面倒です。「私」を拘束するかもしれない。それでも、自分から愛へと向かう人もいるかもしれない。もっとも難しいのは、愛の場合には相手があって、「私」の自由だけで決まらないことです。だからみんな苦労しているのですが。>

<「私」っていうのはそんなに固定した、確固としたものでなくてもいいかもしれない、とも思います。ひょっとすると、愛が新しい自己を開いてくれるかもしれないでしょう?>

<「正義」は社会的なものだから、「自由」や「愛」の領域とはずいぶん離れています。でも自由と愛、私とあなたはそうではありません。むしろ、私そのものが成り立つためには、広い意味での愛がなければならないのかもしれません。>


著者は別の章で、「義務(完全義務)」と「不完全義務」というテーマを出します。
完全義務は「みんながそうすべきである」こと。場合によってはやならいと非難されたり罰則を科せられる。
不完全義務は「みんながそうすべきであるとは言えないが、やるのはよいことだ」。不完全義務は、「しなくてもいいんなら、私はしたくないし、しないでおく」という意見も生み出します。

<シニカルな見方も大事です。でも、現代のわれわれは、そうした見方に留まっていて、何が大事なのかをあまり考えなくなってしまっているのではないかと思います。(東日本大震災のようなことも起こり)もう「ふふんっ」と言って人の言うことを鼻で笑っているだけとか、思考停止や中途半端な観念にまとわりつかれて身動きができなくなっているときではないように思うのですが、どうでしょう。>

<ボランティアもやっぱりなかなかできないことで、私はこれができる人は普通に偉いと思います。ただ、われわれはまだうまく概念にできていないのです。ボランティアは正義でもないし、愛でもない。なにか別のものなわけです。それはまだ解決されていない哲学的問題なのです。>


自由、正義、愛…これらの対立を超えられるようななにかがありえるんじゃないか、と著者は考えているように思います。

本の最後の文献案内で、義務と不完全義務に関し、『愛と正義の構造』『ボランティアの誕生と終焉』が挙げられ、この二冊がどちらも「贈与」について論じていると紹介し、著者の最近の哲学的関心が「贈与」だと書かれています。
「愛」は人と人の間にあるけど「自由」と対立したまま、しかし社会的正義だけでは足りない…。
そんな社会のなかで、みんなが思考停止に陥ったり、身動きがとれなくなっていないか、でもそれを乗り越えていく道筋を探すことができると思う、贈与がそのヒントかもしれない…と書かれてあるんだと思いました。







最終更新日  2017.08.14 17:55:09
[贈与のはなし] カテゴリの最新記事

PR

カレンダー

カテゴリ

サイド自由欄

連絡先 毬編集局
fpaper.mari@gmail.com
https://twitter.com/fp_mari

毬は、贈る(贈与の思想)がコンセプトです。

Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.