2009/03/21(土)15:17
「変人 埴谷雄高の肖像」
この本は立花隆氏が東大の教養学部で開設していた
「調べて書く、発信する」から生まれたそうだ。
そのゼミ生だった、木村俊介さんが生前の埴谷雄高氏をよく知る
27人にインタビューして、埴谷さんの多面的な人間像を
描き出している。
あぶりだしている、えぐりだしている、とも思う。
1999年平凡社より刊行された
「奇抜の人ーー埴谷雄高のことを27人はこう語った」
を改題文庫化(文春文庫)されたもので読んだ。
2009年3月10日刊
この本は非常に面白くて、この後にまた埴谷作品を読み返すと
理解が進んだり、シンとした気持ちになったり、
反発したりとゆれてくる。
27人中での、坂本龍一さんのインタビューは「自由度」という
タイトルになっている。
埴谷さんは、
「人が自由意志でできる行為として、自殺と子供を作らないことしかない」
という思想上の理由から、子供を作らなかった。
奥さんは現実に3~4回も堕胎させられたらしい。
坂本さんはインタビューで「何かを評価する際の基準」の一つとして
イデオロギーではなく精神の自由度の度数をあげている。
ドビュッシーは百点満天で89点、埴谷雄高は97点だそうだ。
点をつけるときは、属す共同体からいかに離れるかが大きい。
共同体のパラダイムからいかに自由か。
そこで坂本さんにとって武満徹は点が低いそうだ。
さらに「といってもほとんどDNAが人を規定してるので、
本当は誰も自由になれっこないんですよ」
とも話している。
で、ふいに過日、60歳の同級生の友達と話したことを思い出した。
1000万円もらったら、全身整形して人生やりなおしたい!
自由度限りなく0に近く生きてきた女達の、
可能なら遺伝子操作もしたい、DNAを超越する願いなのだ!
またこのインタビュー中、破壊のエネルギーの表現よりも
肯定的エネルギーの表現が難しいとも語っている。
共生のエネルギーは、破壊のエネルギーよりずっと大変かも、
としみじみ思う。
私は子供を作らない自由は否定しないけれど、埴谷さんの奥さんは
どんな方だったのかな、と知りたくなる。