7242185 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

MUSIC LAND -私の庭の花たち-

「十三夜の面影」7







「私もうちに居るだけじゃ嫌だな。

迷惑かけるし、何かできることはないかしら?」

と、かぐや姫は畳みかけるように言ってきたので、

僕は戸惑ってしまった。

「うーん、仕事するのは無理だと思うよ。

うちにいて家事をしてくれたら嬉しいんだけど。」

と、哀願するように言ってみるのだが、

「だって面白くないんですもの。

他の人間にも会ってみたいし。」

と、いたずらっぽい目で僕を見る。

「それは困るなあ。」

「そう?」

と、オロオロする僕を楽しんでるかのようだ。

長い髪を指先でくるくると回しながら。

「いまどき珍しい黒髪だよな。

烏の濡れ羽色って言うんだっけ?」

と、彼女の髪に見とれて言うと、

「今はそんなことどうでもいいの。」

と、ぴしゃりと言われてしまう。

「結構きついんだなあ。

もっと大和撫子かと思ったのに。」

とちょっとがっかりして言う。

「あら、昔の方が女性強かったのよ。

私は誰にも頼らなかったわ。」

と毅然としている。

「確かに誰にもなびかなかったよな。

でも今はどうなんだよ。」

とムッとして言い返すと、

「だから、独立したいの。」

と唇をとがらせて答える。

怒った顔も割といいなあ。

「そういってもなあ。

今の常識知らないし、

社会に出るのはちょっとね。」

ともったいぶって、かぶりを振る。

「わかったわ。

自分で探してみる。」

と外へ出ようとする彼女。

「待ってくれよ。

一人じゃ危ないよ。

僕も一緒に行く。」

とあわててついていく。

夜に彼女一人出す訳にはいかないからな。

怖いもの知らずというか、向こう見ずというか、

僕がついてないと、と思ってしまう。

「ついてこないでいいわよ。」

と早足で歩いていく。

「何をするか心配なんだよ。」

と腕をつかむと、振りほどいて、

「仕事なんて自分でも探せるわ。」

とムキになって言うから、

「君に出来る仕事なんてないよ。」

と僕までつい強く言ってしまった。

「何かあるはずよ。

あれはなあに?」

とビルのネオンが輝いてる店を指す。

「あれは、ちょっとやばいよ。

女性が男性にサービスするところだけど、

お酒も飲まされるし、

何をされるか分かったものじゃない。」

と必死で止めると、

「ふーん。面白そうね。」

と笑って、かえって興味を示す。

天邪鬼だなあ。

危ないので、腕をつかんで、引き戻す。

今度はなぜか素直にされるがままにしているが、

時々振り返ってはさっきの店を見上げていた。

「仕事なら、僕も一緒に探してやるから。」

一抹の不安が頭をよぎったが、

振り払うようにどんどん歩いた。

「もう、そんなに引っ張らないでよ。

痛いじゃない。」

とまた腕を振り解こうとするので、

つかんでる指を緩めた。

するっと腕が抜けて、急に彼女が走り出す。

「つかまえてごらんなさい。」

振り向いて言ったかと思うと、

羽のように軽い足取りで跳んで行く。

「待てよ。」

右手を伸ばしながら走るが、

不思議と追いつかない。

僕だって結構速いのに。

それでも、やっと追いついたと思ったら、

急に立ち止まるので、

ぶつかって二人とも倒れてしまった。

彼女の上に乗ってしまう。

「大丈夫かい?」

とそのまま声をかけると、

「早くどいてよ。」

と怒って言う。

「ごめん。」

慌てて跳び起きると、

彼女がきゃしゃな右手を差し出す。

「起こして。」

急に甘えた声を出す。

まったく可愛いんだか、生意気なんだか、

振り回されてしまうよな。

「しょうがないな。」

と言いながら、

右手でつかみ、勢いよく引き起こす。

その拍子に彼女が僕の胸に飛び込んできた。

「つかまえててね。」

ささやくように言うから、

思わず抱きしめてしまった。

「離さないよ。」

声にも腕にも力がこもる。

またキスをしてしまった。

今度はさすがのかぐや姫も

目を閉じて待っててくれた。

その後、肩を抱き、うちに戻った。

僕達二人のうちへ。

続き































Copyright (c) 1997-2020 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.