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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「十三夜の面影」8








今朝は灰色の雲がかかって、雨が降りそうな天気だ。

目覚めが良くないな。

朝、うちを出るとき、かぐや姫に念を押した。

「仕事は僕も探すから、今日はうちに居てくれよ。」

頼むように言ったのに、

「そうね。」と考え込む様子。

不安を振り切るように

「じゃ、行ってくるから。」

と言うと、

「行ってらっしゃい。」

やけに機嫌よく送り出してくれる。

なんか心配だなあ。

案の定、雨が降り出してきた。

しとしと降る秋の雨だ。

その雨の中を、かぐや姫は出かけたのだった。

昨日のあの店に一人で乗り込んでいったのだ。

「お願いします。どなたかいませんか?」

店の中を覗き込み、ソファで休んでる男を見つけた。

「誰だ。まだ開店してないよ。」

と目をこすりながら、起き上がる。

「こんにちは。雇ってもらいたいんですけど。」

と近づいていった。

「え?募集みたの? 可愛いね。

今日から早速来れる?」

薄暗い店の中で、目を凝らしていたが、

かぐや姫の顔がよく見えたら、即決だ。

「はい、大丈夫です。」

元気よく答える。

「名前はなんていうの?」

と軽く聞かれて、

「かぐやひめ。」

と平然と言う。

「冗談だろ。」

笑ってから、まじまじと見つめる。

「まあ源氏名にはいいな。

それでいこう。」

「源氏名ってなんですか?」

「お客に呼ばれる名前だよ。」

「源氏物語と関係あるの?」

と身を乗り出して聞くが、

「知らないけど、そうかもね。」

あっさりかわされてしまう。

「とにかく今夜から来てよ。

同伴も歓迎だよ。」

最後、急に声をひそめた。

「同伴って?」

「お客さんと一緒に店に来ることさ。

それだけでも、手当てが上がるよ。」

「そうなの。」

と目を輝かせた。


そんなことがあったとも知らず、

僕は会社から帰ってきた。

うちに入った途端、

「お帰りなさい。

私、仕事決めてきたの。」

とかぐや姫に明るく言われてしまった。

「どんな仕事?」

おそるおそる聞いてみると、

「昨日見たあのお店よ。」

と宣言する。

心配が的中してしまった。

「それだけはやめておけよ。

僕も一緒に断りにいってやるから。」

困ったと思いながら、

内心、興味もあるのだ。

「そんな必要ないわ。

お客さんで来てくれるならいいけど。」

と目を見つめて誘う。

「分かった。そうするよ。」

そんな仕事は心配だけど、

かぐや姫は反対すれば反対するほど、

ムキになってしまうから、

仕方ないなあ。

「さっそく同伴だわ!」

無邪気に手を叩いて喜んでいる。

「なんだって?」

と思わず言うと、

「お客さんと一緒にお店に行くことですって。」

自慢げの様子。

実はそれくらい聞きかじってはいるが、

「僕は、お客じゃないんだけどな。」

と、ぼやいてしまう。

彼女にとって僕は一体何なんだろう?

「じゃあ、早速行きましょうよ。

あなたに報告したくて待ってたの。」

と浮き立って、僕の腕を引っ張る。

「ちょっと待ってくれよ。

僕は今、帰ってきたばかりなんだぞ。

少しは休ませてくれよ。」

本当に勘弁して欲しいよなあ。

「そうね。それに夕食食べてからのほうがいいわね。」

急にかいがいしく夕食を並べ始める。

「なんだ。用意してくれてたんじゃないか。」

やっとうちに帰ってきたという感じがする。

「もちろん。でも、お店でも食べられるのよ。」

また、とんでもないことを言い出すんだから。

「そんな店で食べたら、いくら取られるか分からない。

君だって、ちゃんと食べていかないと持たないよ。」

きちんと言っとかないとな。常識ないんだから。

「そうなの? じゃあ、私もお相伴させてもらうわ。」

にこっと笑って、席につく。

まったく、憎めないんだよな。

続き





















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