「十三夜の面影」16
いつ僕がそばに居たことに気がついたのだろうか。
後ろにも目があるようだ。
月で何でも見えたように地球でも千里眼だったりして。
心まで見透かされてるようで怖いなあ。
かぐや姫への気持ちも分かってしまってるのだろうか。
「何考えてるの?」
無邪気に微笑んでる。
分かってはいないのか。
「君のことだよ。」
「嬉しいわ。」
「何かプレゼントしたいな。」
「急にどうしたの?」
僕を思い出してくれるものを身に着けてて欲しかったのだ。
「何が欲しい?」
遠慮しているのか、考えあぐねているのか、なかなか言わない。
「そうね。・・・香木かな。」
やっと口に出したのは、僕の知らないものだった。
「香木ってなんだい?」
「お香みたいなものなのだけど、
香りを楽しむものよ。」
やはり時代のギャップを感じるなあ。
「じゃあ香水でもいいかな。」
「いいわよ。」
「どんな香りが好きなんだい?」
「さっぱりした香りがいいの。
柑橘系とかの。」
「蜜柑のような月から来たからか。」
つい想像して笑ってしまう。
「そういうわけじゃないけど、
甘ったるい香りは気持ち悪くなっちゃうのよね。」
拗ねたように言うのが可愛い。
「僕もその方がいいな。」
バニラみたいな匂いは、むせてしまう。
「会社の帰りにでも買ってきてね。」
「君が選ばなくていいのかい?」
「あなたの好きな香りを身にまといたいの。」
嬉しいことを言ってくれる。
「ありがとう。」
かぐや姫に似合う香りを選んでこよう。
甘酸っぱい香りがツーンと鼻を刺すような香水を。
その香水だけを身に着けた彼女を抱きたいのだが・・・。
続き