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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「十三夜の面影」27









二人で抱き合いながら泣いてしまうなんて、

自分でも情けないよな。

せめて僕だけはしっかりしないと、と思ってるのに。

かぐや姫はもうすぐ月に帰ってしまうんだ。

頭では分かっていても、とても信じられない。

そんなこと信じたくないのだ。

十五夜の夜だと言うのに、月の使者なんて来ないじゃないか。

たとえ来たって、帰すものか。

彼女を抱きしめる手に力がこもってしまう。

「苦しいよ。」

しゃくりながら、あえいでいる。

少し手を緩めて、彼女の顔を覗きこむ。

「ごめん。離したくなくて。」

「嬉しいけど、痛いよ。」

涙で濡れた顔で笑ってみせる。

こんな時でも笑顔が眩しいな。

こんな時だからこそか・・・。

やっぱり引き止めるのは無理なのかな。

未練を断ちがたい。

月が急に大きくなったように見えた。

光が膨らんで、何かが降りてくる。

月の使者か。

彼女を渡すものか。

肩をぐいと引き寄せた。

降りてきたのは、天女のような女性だ。

最初かぐや姫に逢ったときのような薄絹を着ている。

羽衣というべきなのだろうか。

「今までかぐや姫を守ってくださって、ありがとうございます。」

丁重に頭を下げられると、調子が狂うなあ。

「どういたしまして。」

僕まで礼をしてしまう。

「今日はかぐや姫をお迎えに来ました。」

そう言うと、彼女を引っ張っていく。

言葉は柔らかいが、力は強いのだ。

女性とは思えない。

「彼女は僕といるんだ。」

引き戻そうとするが、力が入らない。

どうしたというんだろう。

彼女はうつむいているばかりだ。

「さあ、帰りましょうね。」

月の使いは彼女を促した。

「帰りたくない。」

声は小さいが、凛として言う。

「そんなわけにはいかないのです。」

有無を言わせず、連れ帰ろうとする。

僕は体が動かなくなって、

口さえも思うように動かない。

目だけが彼女を追っていく。

「十三夜の月を見てね。」

振り返りながら、彼女が叫ぶ。

首を縦に振ったつもりだが、

彼女に伝わっただろうか。

だんだん遠ざかって行く彼女を見ながら、

また涙がこぼれてきた。

せめて彼女の姿を目にとどめたいのに、

霞んできてしまう。

涙をぬぐおうにも、手が動かないのだ。

ただ呆然と立ちすくんでいるしかなかった。

空のかなたの彼女が霧のように消えていくのを見つめながら。

続き



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