「心の声」4音楽サイトyamatomoに、 「あなただけではありません」という作曲した歌を載せてます。 良かったら聞いてくださいね。 彼とは訓練の度、逃げる準備など話し合っていた。 鳥のように飛べたらいいのだが、そんなことはできないしね。 お腹の子も私たちの心の声が聞こえるのか、 つわりもひどくなく、それほど目立たない。 私たちの他にも研究材料にされてる人たちが入ってきた。 ガードしているのか、あまり心の声は聞こえないけど。 こういう特殊能力者は、案外いるものなのかしら。 ともかく私たちから研究員の注意がそれることもあるだろう。 また、ゴミ処理業者が入り込んでいる。 何を研究してるのか不思議だろうな。 ごみ処理のバスケットに潜り込んで逃げることにした。 ごみに埋もれるのは嫌だけど、逃げるためにはしかたない。 パソコンから大量の紙ごみが出て、シュレッダーにかけたものを、 クッションにするから、大丈夫だろう。 こういうときこそ、研究員やゴミ処理業者の心を読まないとね。 なんとか私はバスケットごと研究所の外に出て、トラックに運び込まれた。 バスケットから這い出して、トラックが停車した時、降りる。 彼はどうしたのだろう。 途中まで心の声が聞こえたのに。 トラックから降りそこなったのか。 ごみ処理場に連れて行かれたら危ない。 あわててまたトラックに乗ってしまった。 かすかに聞こえる彼の声。 彼は埋もれて窒息しかけていたのだ。 バスケットの中から彼を助け出す。 息をしていない。 人工呼吸して、 息を吹き返した彼を、思わず抱きしめてしまった。 彼も抱き返してくれた。 良かったと思うのもつかのま、 早くトラックから降りなければ。 他のごみ処理の得意先に着いたのか、 また停まった時、二人で隙を見て降りた。 トラックは走り去っていった。 もう安心だ。 ところでここはどこなんだろう。 元々研究所さえ場所も分からないまま連れてこられたから。 ごみ処理の得意先は、何かの工場らしい。 二人で働いていた工場に似ていて、懐かしい。 小さな町工場だったけど、 人情が残ってて良かった。 心の声が聞こえても、それほど不快にはならなかったのだ。 お給料は安かったけどね。 ここはどういう工場なのだろう。 働かせてもらう訳にはいかないかな。 でも、またゴミ処理業者が来た時、 顔を合わせたら分かってしまうかもしれない。 やはりここで働くのは止めた方がいいな。 二人で歩いて、どこかに辿り着かないと。 彼もだんだん落ち着いてきたようだ。 しばらく休めば歩けるだろう。 まだ顔色は悪いけど。 心配するなという顔をしてる。 久しぶりに会ったのに、 心の声は聞いてたから、 そんな感じはしない。 二人で今度こそ幸せになろうね。 手を繋いで、歩き出した。 続き |