「白蛇の道」7玄関のコンクリートのたたきに座り込んで泣いていたら、 体の芯まで冷え切ってしまった。 暖房も出かけるときに切っていったきり、まだ付けていない。 あまりの寒さに我に帰ってきた。 目をあげると、そばに白蛇がいる。 ずっとそばに居てくれたのだろうか。 何も聞かずに。 こういうとき、あれこれ聞かれても答えたくないから、 そっとしておいてくれるのはありがたい。 寒気が走ったので、あわてて暖房をつけ、 布団にもぐりこむ。 背中を布団にこすりあわせ、少しでも温まろうとするが、 冷え切った体は、なかなか変わらない。 凍えた心も温まることはないのだろうか。 体を胎児のように丸めながら、 布団を頭からかぶる。 このまま胎内に戻りたいような気がする。 もうどこにも行きたくない。 傷つきたくない。 閉じこもっているわけにはいかないと、 頭ではわかっていても、 心が閉ざされてしまったのだ。 眠れないと思っていたのに、 心身ともに疲れて、まどろみかけた頃、電話が鳴った。 また無言電話か。 でも、もしかしたら彼かも、という気持ちも抑えられずに、 恐る恐る受話器を取る。 「もしもし。どなたですか?」 「・・・」 やはり無言だ。 切ろうかとも思ったが、 今度は、あの彼女では?という疑惑が浮かんだ。 「もしかしたら、貴さんの彼女ですか?」 「・・・」 もちろん返事はないけど、 切る気配もない。 いつも切るのは私の方だ。 今日は切らずに話してみよう。 負けたくないという気持ちもあった。 「もしあなたが貴さんの彼女でも、 私にこんな電話をかける資格はないわ。 どういうつもりか知らないけど、 私は貴さんと別れる気はないし、 あなたとの仲を認める気もない。 こんな卑怯な手を使って、 彼と上手くいく訳ないわ。」 開き直って、強気にまくしたてた。 それでも、何も言えないのか、 相手は黙ったままだ。 変な息遣いも聞こえないから、 Hな無言電話でもなさそうなのに。 心が弱っている時に、追い討ちをかけるように かかってきた無言電話。 「プレッシャーをかけようったって、 そうはいかないんだから。」 自分に言い聞かせるように言って、電話を切った。 急に力が湧いてきたな。 私って、負けず嫌いなのだ。 そのプライドの高さから、今までも 可愛くない女と思われてしまってたけど。 彼にも、もっと甘えれば良かったのかな。 でも、体に触れられると、避けてしまう。 そんなんじゃ誰からも愛されないよね。 下の「続き」をクリックすると、続きが読めます。 続き |