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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「白蛇の道」8

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なぜか白蛇がどこかに消えてしまった。

以前は邪魔だと思ってたのに、居ないと淋しい気がする。

いつのまにか孤独を慰めてくれる存在になっていたのだ。

無言電話にもあんなに強く言ったのに、

まだかかってくる。

本当に懲りないな。

たぶん彼の新しい恋人だろうとは思うけど、

確かなことは分からない。

でも、他に心当たりはないし、

ストーカーされるほど、きれいではないと思う。

白蛇には付きまとわれたけど、

彼も離れていってしまうほどなのに・・・。

なぜか、無言電話に向かって、

独り言のように話すようになってしまった。

白蛇という話し相手も居なくなったせいか、

無言でも聞いてくれるだけいいのだ。

切ってもいいのに、ずっと聞いててくれる。

最初は攻撃していたくせに、段々愚痴になってきてしまった。

「貴さんはなんで電話をくれなくなったんだろう。

あなたを私より好きになってしまったのかもしれないけど、

私だって、本当に貴さんが好きだったのよ。

でも、どうしても触れられるのが怖くて避けてしまった。

だから嫌われてしまったのかしら。

体が思わず拒否してしまうの。

小さい頃、父にいたずらされたことがあって、

それを思い出してしまうの。

頭では関係ないと思ってるのに、

体が忘れてくれないの。」

話しながら、涙声になってきてしまった。

嗚咽が止まらなくなって、話せないときも、

黙ってそばに居てくれるように切らないで待っててくれた。

「きっと貴さんはあなたの方が好きになってしまったのよね。

それは哀しいけど、こうして黙って話を聞いてくれるあなたは

優しい人かもしれないから、

貴さんがあなたを好きになるのも仕方ないことなのかな。

あなたになら、貴さんを任せられるかも。

私は貴さんを諦めるわ。

もう無言電話なんてかけてこなくても、

ちゃんと別れるから安心して。

なぜかこの電話が終わるのも淋しいけど、

もうかけてこないでね。

さようなら。」

と切ろうとした瞬間、

「小百合! 僕だよ。」

懐かしい彼の声が聞こえるではないか。

「ごめんよ。小百合。

僕こそ、君を諦めようと思ったけど、

諦めきれずに、様子を知りたくて、

無言電話をかけてたんだ。」

「なんで、諦めようなんて思ったの?」

「小百合が触れられるのを避けてると分かって、

嫌われてるのかと思ったんだ。」

「そんなことはないわ。

ただ、父のこともあって・・・。」

「もういいよ。事情は分かったから。

辛いことはこれ以上話さなくていいよ。」

と優しく言ってくれたのは嬉しかった。

「ありがとう。でも、私のアパートの前に

一緒に来た女性は誰なの?」

それでも、つい問い詰めてしまった。

「あれは僕の姉だよ。小百合のことを相談してたんだ。

小百合に紹介したかったんだけど、留守だったし、

あれ以上深入りして、傷つきたくなかったんだ。

でも、やっぱり諦めきれないよ。

誤解させてしまって、本当に悪かった。」

電話の向こうで頭を下げている彼が見えるようだ。

「怖かったんだから。これからは守ってね。」

「ああ、守るよ。今までだって遠くから見守ってきたつもりなんだ。

騎士のようにね。でも、これからは、

王子のように、姫のそばに寄り添って守るよ。

だから信頼して、少しづつ心を許して欲しいな。」

懇願するように言う貴さんが、少し気の毒になってしまった。

こんな思いをさせてしまってたんだよね。

「私こそ、本当にごめんなさい。

守っていてくれて、ありがとう。」

凍てついた心が溶けていって、温かくなった気がする。

こわばっていた体まで、ほぐれていくようだ。

私も貴さんと一緒なら、変われるかもしれない。

逃げてばかりいないで、少しずつ踏み出さないと、どこにも進めやしない。

突然、白蛇が目の前に現れた。

「蛇には蛇の道があり、

人には人それぞれの道がある。

誰もそれを妨げることは出来ない。

たとえ、自分であろうと。」

そう言うと、またどこかへ消えていった。

夢のようだったが、彼にも声は聞こえたようだ。

「そこに誰か居るのかい?」

怪訝そうな声できく。

「この間の白蛇よ。

でも、もう自分の道に帰ったようよ。

私たちもそれぞれの道を行きましょうね。」

「蛇が話すなんて・・・。」

彼は半信半疑のようだが、それ以上言わなかった。

あの白蛇は、一体何だったんだろう。

それは自分の道を進めば、いつかわかるのかもしれない。

花畑ライン

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