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カテゴリ:自作小説
「幸せをもたらす死神」
「なんだね!!この営業成績は!!!君ね・・今月末までにノルマ達成しなかったらクビだよクビ!もしくは依願退職してもらうからね!!」 僕??・・・僕の名前は 吉田富士雄 彼女には3ヶ月前 に振られて・・今は断崖絶壁、超孤独な生活を送る 28歳 の独身 毎日毎日「も~・・死にたい~」が口癖の・・いわゆるへタ レです。 地元、富山県から東京の4流大学に1浪して入学。 就職したものの・・・部署である営業部のお荷物と言われて 何年経ったのか・・会社はリストラ寸前だし・・・・部長に は毎日怒られるし・・・はぁ・・。 趣味は特になし・・・あ・・しいて言えば料理が好きで・・ でも食べてくれる人はいないか・・・。 幼い頃から近所にあった洋食屋さんへお母さんに連れられて 良く行ったなぁ。。 そう言えば、成人式の日に初めてそこで飲んだワインに感動 してワイン集めなんかが趣味ともいえるのかなぁ。。 吉「今日もくたくただぁ・・・はぁ・・もう11時だよ。。同じ部署の連中は定時に帰っても僕より営業成績がいいのに・・なんでだろ。。???」 ガチャッ 吉「ただいまぁ・・・って・・誰もいないのにねぇ・・・笑。」 吉「ん?電気はついていないのに・・・疲れてるんだろうな・・なんだか青白い光が見えるよ・・」 ・・・・・・コ ・ ン ・ バ ・ ン ・ ワ・・・・・ ・ ・ 吉「はい はい・・コンバンワっと♪」 吉「ん?」 吉「うわーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」 吉「な!・・き!き! ききき・ 君は誰?だい?」 死神「・は・い・・・・私は・死神・です。」 驚いた!。。ある夜、目の前に死神が立っていたのだ。。。 という事は・・・。お迎えが来たのか。。。 吉「ねえ?死神さん。君がここに来てるって言う事は・・僕は死んでしまうのかい?」 死神「・・・いえ・・あ、はい・・・死神にも・・強化月間という営業キャンペーンがありまして^^;」 死神「本日は、、飛びこみ営業でコチラに周って参りました。今回はよろしくお願い致しますm(__)m」 あ・・頭下げられても^^; でも・なんて・・・申し訳 なさそうな死神なんだ・・。しかし・・飛びこみで家に来る とは・・・やっぱり僕はなんて運の悪い男なんだろう。。 ・・・でも・・死神の世界にもこんな競争があるのだなぁ。。 でも・・・僕は死んでしまうのか・・・・ちょっと寂しいな ぁ。。 死神「一応、死神界の法律では、私達の姿を見せた人間は連れて行くことになっています。」 そうか・・・・死ぬ事はすでに決定事項なのか。。 僕のつまんない人生に終止符かぁ・・・ そういえば・・ ヴィエッティのバローロ93年物も飲んでいないし・・・ あ・・そうだ。実家のタンスの奥に隠しておいたオーメドッ クの30年古酒・・どうしよう。。 大家さんのワンちゃんの散歩は誰かが行ってくれるのかな ぁ。。。誰も行ってくれないだろうなぁ。。 今のうちの隣の渡辺さんに頼まなきゃ。。 死神「今月の強化月間の成績次第では・・・私はリストラされるかも知れません。」 はぁ?? だからって・・なんで僕なんだよ。。。はぁ・ でも・・今まで仕事も辛かったし・・もういいやって感じし てたもんな。。 でも良く考えて見るとおかしいな(ぷぷっ死神がリストラだ って。。 吉「ねえ?死神さん。なんで僕のところに来たの?」 死神が言うのには 連れて行くのにはそれなりの基準があっ て、常に 死にたい・・死にたいと強く願っている人間から 順番に営業活動をしていくそうだ。 なので・・落ち込んでいたり・・将来に悲観したり、無気力 になっている人間のデータを監視を続けながら会社のパソコ ンにデータ収集しているそうだ。 死神にとって一番やっかいな人間とは 「希望に満ち溢れ」「努力を惜しまない」「勇気を持っている」 そんな人間なんだそうだ。 なるほど・・・だから僕を選んだのか。 納得、納得。って・・僕はそんなにも悲観願望が強かっんだ。 死神「私、今回の仕事に 死神人生をかけてるんです!!!」 吉「そ!?・・そう・・^^;」 吉「あのぉ・・・死神さん???ひとつ聞いても・・・いいかな???」 死神「・・・どぅぞ。」 吉「死神達って、もっとコワーイのを想像してたんだけど・・皆、こんなの???(こんなのって言い方も無いけど・・)」 死神「 私 怖く・・・ありませんか ?」 吉「 全 然(--;」 吉「だいたい・・・死神がリストラに悩んでいたり・・死神人生かけてるって話・・・聞いたこと無いし・・それに。。」 死神「・・・・ それ ・・に?」 吉「なんで・・さっさと連れて行かないの???」 死神「 あ・・ぃえ・・・えぇっ と・・そ・・それにはいろいろとありまして・・・^^; あ・・あの・・」 吉「死神君、君???もしかして今の仕事、不向きなんじゃないの~ぉ??」 ****いつしか二人はお互いの境遇や 仕事 人間関係や死神関係の話について語り合っていた。**** 死神「この仕事をやっていて、一番辛いのは・・・子供が近くにいるときなんです。」 死神「お母さんを前にして泣いている子供を見てると・・・・つい。。」 吉「つい????」 死神「はあ・・つ・・つい・・・現場から連れて行く事をあきらめて、会社に帰ってしまうんです。。。」 吉「へぇ~・・・。それじゃぁ仕事にならないね。」 死神「はい・・・・。。で・・でも!!同じ会社の49号や4219号なんて、平然とした顔で仕事を済ませるし・・・だいたいアイツらには死神の血ってものが通っていないんだ!」 吉「・・え・・・ 死神って・・・・血があるんだ。。。。」 死神「あ・・いえ・・・昔・・人間時代の記憶が少しだけ残っていたので・・・・・暴言でした。。。。(--;」 吉「ねえねえ^^死神君。。。君は営業成績が悪いって言うけど、僕は36ヶ月連続で営業成績最下位だよ♪(笑」 死神「なんのなんの!私なんて924ヶ月連続で最下位なんですヨ。」 吉「924ヶ月~??? ええっと・・・ざっと考えても、80年近く!ひゃあぁぁ・・スケールが違うなぁ~ さすが死神だ~。。」 吉「大丈夫^^君は立派な死神だよ♪僕が認める!」 死神「吉田さんに褒められましても・・・いつも死にたいと思っていたくせに♪」 「うふふ・・」 「ふふ。。」 「あははは」 「はははははは!」 なんだかこの死神は人間っぽいよなぁ。。会社の誰よりも 気が合う気がするよ。。。。 吉「あはは・・・は。。。。 そうか・・じゃ、今回の仕事は成功だね。。」 死神「・・・・・と・・言いますと???」 僕は死神の手をつかみ・・・・そっと・・・僕の手の上に 死神の手を置いた。。 それにしても・・・やっぱり彼は死神なんだなぁ・・と思 った。 彼の手の冷たいこと。。 手をつかみ・・僕のところに死神の手を置いたとき、血が 通っていない彼の青白く ボーっとした顔のほっぺが少し だけ赤くなった。。 いつしかお互いの顔からは笑みがこぼれ・・・気が付くと 明け方になっていった。。 死神「・・・今回の営業は・・。。 またまた失敗に終わりました。」 吉「え?・・なんで。。?」 死神「だって・・・・夜が明けてしまったじゃないですか。(笑」 死神「死神の営業時間は夜だけなんです。。。。」 死神「そうそう・・死神が・・連れて行くのをあきらめた人間は・・・・○X△。」 その言葉を残すと彼は窓の向こうへと すーーっと消えてい った。。。 消えるか・・消えないかの直前に・・忘れたように死神が僕 に何かを話したのだが、聞こえなかった。。。。 その後・・僕は会社を辞めて・・その退職金で小さな洋食屋 さんを始めました。。 結婚もしました。可愛い赤ちゃんも授かりました。 お金は全然貯まらないし、貧乏だけど、妻と二人三脚で・・ 忙しくも充実した毎日を送っています。 でも・・・気にかかる事がひとつ。。 そう・・あの死神の事だ。。。。。 吉「あいつ・・・元気に死神をやってるのかなぁ。。。営業成績は・・・・・・やっぱ駄目だろうなぁ。。」 妻 「え~死神~?営業~?(笑 富士雄さん何を言ってるのぉ~(笑 (笑」 ♪カランコローン♪ 吉「いらっしゃいませー♪」 吉「 あっ! 」 そこに現れたのは・顔を忘れるわけが無い・死神だった。 懐かしさと、同時に一瞬頭をよぎったのはあの言葉。。。 死神界の法律・・姿を見た人間は連れて行く・・・・。 吉「久し振りだね。今どうしてるの?相変わらず営業最下位??」 被っている帽子をおもむろに取る死神。。 その顔からは以前のような青白い顔ではなく間違いなく 生気が宿っていた。 吉「僕のことを迎えに来たのかい?」 死神は・・そんな僕の発言を首を横にブンブンと振りながら 死神「私・・・死神をリストラされました^^♪」 正直ホッとした。。 そして・・・死神が言うには・・妻や子供のために毎日希望 に溢れる生活を送っている吉田さんには、もう死神は近寄れ なくなっている。。のだそうです。 吉「で・・死神・いや・・君は今何をしてるの」 元死神「はい!牧師になりました。」 それは天職だな^^と僕は思った。 彼ならば・・世の中の不幸をみんな間近に見てきたわけだし・ 何より、死神には一番不向きだったもんね。。。 吉「ねぇ・・元死神君。」 元死神「あのお・・牧師になったので・・。その呼び名は・・・^^;」 吉「あ・・ゴメンゴメン^^;帰り間際に何か話したよね???あれ、なんて言ってたの??」 元死神「あ~・・あれですね。。」 元死神「死神が連れて行くのをあきらめた人間は必ず幸せになる・・って」 吉「そーなんだ^^ ありがとうね。。・・でもお金は全然たまらないぞ!」 こうして僕は彼の再就職のお祝いにとびっきり特大のオムラ イスをプレゼントしたんだ。 人生における幸せとは、お金を貯めることや名声広げる事 では無いんだと・・死神に教えられました。 え?その後はどーなったかだって?? 彼はその後一人の女性と結婚して幸せに暮らしています。 ココだけの秘密ですが・・彼の奥さんも元死神なんです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/18 01:59:20 PM
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