『鈍色幻視行』恩田陸
撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は2週間のクルーズ旅行に夫の雅春と共に参加し、夫の知り合いの関係者に取材する。一同が集まり話をする前半と、一人一人にインタビューする後半、そして大団円。結局、再婚同士の梢と雅春がお互いに遠慮していた感情を発出するための船旅だったような気がする。船の中はいわゆる密室で逃げ場がないから。「映画や小説などの虚構の中に真実がある」という映画監督の言葉になるほどと感心した。『夜果つるところ』の筋書きは大体わかったが、恩田陸作の『夜果つるところ』を読んでみようと思う。小説の中で別の小説について語る、入れ子のような物語をメタフィクションと言うらしい。15年も雑誌連載していた作品。複数の作品を並行して書いている恩田さんってすごいな、と思った。鈍色幻視行 [ 恩田 陸 ]