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やさぐれ同盟

気狂いお茶会

気狂いお茶会                                                                  

三月になったのでアリスは三月兎の家に行ってみようと思った。
「三月だからきっと前より狂っているに違いないわ」と考えたのだ。アリスは不思議の国や鏡の国を冒険するうちにおかしな物事が大好きになってしまっていて、お母さんのスカートの下に潜り込んで、「ここが、あたしの生まれ故郷なのね!」と言ってみたり、お姉さんの誕生日に貞操帯(もちろんドジソン教授におねだりした)をプレゼントしてあげたり、お父さんに「あたし将来、高級娼婦になりたいの」と打ち明けたりするのが日課になっていた。
アリスはさっそく兎穴を下って行って、ふさふさの毛皮で屋根を覆われた三月兎の家に辿り着いた。家の前の木の下に据えられたテーブルには例によって幾つものティーカップが置かれていたが、まずアリスの目にとまった光景は紅茶のポットに突っ込まれた、うとうと鼠のヒクヒクした足だった。テーブルの下には帽子屋が酔いつぶれて寝ころんでいる。しまったわ一足遅かった、とアリスは行儀悪く舌打ちしながら思った。
「おや? いつかのお嬢さんじゃないか。確か前に二度と来ないと言ってなかったかなあ?」
テーブルに白い足を投げ出して紅茶を音をたてて飲みながら三月兎が言った。「まあ」とアリスは口に出した、「人のあら探しはしちゃいけないって、前にも言ったでしょう?」
アリスは三月兎が自分の話をまったく聞いていないことに気がついた。倒れている帽子屋の帽子の中に紅茶を注ぎ込んでいる。「狂ってる、狂ってる」笑い転げそうになるのを必至で堪えてアリスは三月兎に優しく話しかける。一体、何がどうして帽子屋は酔いつぶれ、うとうと鼠はポットの中に押し込まれているのか詳しく知りたくて仕方なかったのだ。
「ねえ、三月兎さん? こんなこと聞くの失礼かもしれないけれど…」
「失礼だと思うのなら、何も聞くな!」
アリスが言い終わる前に三月兎は冷たく宣告し、帽子屋の口の中におしっこしだした。「すごいわ」とアリスは小躍りした、「素敵にイカれてるっ!」。帽子屋は小便を喉を鳴らしてごくごく飲み込みながら叫ぶ、「ごぼごぼ…ワインだあ!…ごぼ…もっと……飲ませろ…わしを酔わせろ……ごっくん、ごっくん」
帽子屋が立ち上がり、例によってお歌詞な歌をがなりだした。
   …ホモ太郎さん、ホモ太郎さん、お腰に付けた、き び だ ん ご飢美男子、一つ私に下さいな♪
 アリスはすっかり大喜びで、ポットをひっくり返して紅茶漬けのうとうと鼠を引っぱり出すと、「さあ、あなたも得意のお話をしてごらんなさいよ」と促した。
しかし、うとうと鼠は息もしないで、うとうとと言うより、ぐったりしていた。アリスはがっかりして、うとうと鼠の尻尾を握ってぐるぐる振り回し、三月兎に向かって投げ飛ばした。それは三月兎の脳天に直撃し、彼はその場に倒れ込む。帽子屋は立って歌ったまま寝ている。アリスは、はしゃぎながら大声で世界に向かって宣言した。「今日から、退屈は犯罪です!」                    (おわり)


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