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カテゴリ:映画評
岩波ホールなんて何年ぶりに行ったのだろうか…?
『亀も空を飛ぶ』という映画を観に行った。 米軍によるイラク侵攻前後のクルディスタンの小さな村に生きる子供達の物語。 アメリカびいきの頭の切れる少年サテライトは子供達のリーダーで、地雷を掘り出して国連の出先機関に売って生活費を稼ぎ、親を失った子供達をまとめている。大人達も、利口なサテライトに何かと頼っていた。アメリカとの戦争の気配が近付いて、大人達は衛星放送でアメリカのニュースを見て情報を得ようと、サテライトにパラボア・アンテナを設置してもらう。ニュースは見れたが、英語が分からず、その内容は理解不能。一方、サテライトは、赤ん坊を抱いた難民の少女と出会い恋をする。そして、その少女の両腕を失った兄は不思議な予知能力を持っていた。 子供達が自分達の力で共同体を作り生きているという設定が面白い。岩波ホール的な退屈さは少なくとも感じられなかった。ユーモアとペーソスのバランスに律儀に気を配られている気がする。子供達もみんな可愛い。 でも想像と違って、この映画には何かが足りない。何か、というのは明らかで、それは紛れもなく「アメリカ」の存在なのだ。この映画にはアメリカ軍の侵攻を描いてはいない。悪として描かれるのはフセイン、悲劇として描かれるのはクルド人の虐殺。監督はイランのクルド人バフマン・ゴバディ、彼の名誉のために付け加えておくと、アメリカの存在が希薄なのは恐らく意図的ではないと思う。イランの映画監督といえば、僕の嫌いなキアロスタミがいるけど、キアロスタミに較べれば、本当にすごく良い映画だと思う。でも、やっぱりイラク戦争を語るのにアメリカが抜け落ちているのは納得できない。そして、あのラストもいただけない。 この映画には、最も重要なものが決定的に欠けているのである。それは何かって? 惨劇の事実と、希望なのだよ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 12, 2005 11:58:30 PM
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