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やさぐれ同盟

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書評

Feb 27, 2006
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カテゴリ:書評
戦争が異常事態だというのは嘘だ。戦争が始ってしまえば、戦争下で生きることもまた日常になってしまう。
荒俣宏の『決戦下のユートピア』は、大東亜戦争下の庶民の生活を、当時の新聞や雑誌などの資料から読み解く本です。
語られる内容は、結婚相談所、ファッション、出産育児、科学教育、貯蓄、保険、芸能、宗教など。
はっきり言って笑えるエピソード満載。戦争というシリアス極まりない状況が、滑稽極まるナンセンスの集大成だったりするのは、人間の悲喜劇なのですなー。

本書は、軍国主義の時代にも、庶民は健全に生きていたのだ…ということを言外に言っているのだろう。かつて吉本隆明が言った「大衆の原像」というやつだ。「大衆のしたたかさ」こそ真実信頼に値する…という知識人の自己言及的な批判だ。でも、この考え方は決して正しいわけではない。
大衆は無知蒙昧で愚劣だ。大衆とは、特権階級の鏡面作用に過ぎない。大衆と特権階級は両義的であり、補完的である。だから、個人が個人として自律的に生きなくてはいけないのであり、アナーキズムとは、そういう個人の孤立の思想なのだ。






Last updated  Apr 11, 2012 11:17:09 AM
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Feb 26, 2006
カテゴリ:書評
元ゼルダにして、どんとの奥さんであらせられる小嶋さちほさんによる沖縄での生活記録。文庫化に際して、なぜか町田康と小嶋さちほさんとの対談が収録されている。これ読む限り、沖縄は楽しそうなこと、このうえない。でも、とても遠い世界のように感じられて仕方がない。季節感を完璧に漂白された僕は、海も山も祭りもリゾートのそれでしかない。
東京から抜け出すことは、逃亡することだ。では、どんとは逃げ出したのか? そんな疑問が、本書を読んでいるうちに柔らかく氷解する。
オルタナティヴ。どんとが沖縄で色々やってた頃、そんな言葉でポップ・ミュージックを語ってた人達は気付きもしなかったんだろうが、この頃のどんとこそが、真の意味でオルタナティヴであり、歴史と伝統を下地にして何か新しいものが生まれる萌芽だったに違いない。それをフォローするのがメディアの役割なのだが、怠慢で、感性の鈍磨した彼等は、その芽に水を与えなかった。かつてピート・タウンゼントはこう言った「ロックとは、バンドとオーディエンスとジャーナリズムの三者との関係性である」。その言葉が正しいとしたら、日本のロックを殺したのは、ジャーナリズムの責任だ。「オルタナティヴを殺したのは誰か?」だと? お前のせいだよ! 
さて、それはさておき。実際のところ、沖縄で浄化されちゃったかのように語られがちだった、どんとですが、多分、その原因は小嶋さんの語り口にあると思われます。この本を読むと、どんとはいわゆるスピリチュアル系は大嫌いだったみたい。「目に見えないものをわかったふうに言うのは信じられない」と、実にまっとうな言い分だと思います。でも、どんとの歌詞やMCなんかは、とても預言的だったりするのも事実。そしたら、小嶋さんが対談の中で「どんとの言葉は、あらゆる宗教が言ってきたことの、新しいヴァージョン」的なことを言ってた。僕もまったく同じことを思ってた。ライブDVD観る限り、神が降りてきてるとしか思えない瞬間があるのです。新しい宗教、生きている宗教、形式化されていない宗教…。ひょっとしたら、ボ・ガンボスっていうのは、そういうものだったのかもしれません。






Last updated  Mar 5, 2006 01:12:31 PM
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Feb 19, 2006
カテゴリ:書評
来る23日、重信房子に判決が下るらしい。求刑は無期懲役。罪状は旅券法違反、ハーグ事件での逮捕監禁、殺人未遂。
テロが最大の社会悪として定着しつつあるかのような現在、重信さんの立場は相当、厳しいのだろうと思います。
さて『りんごの木の下であなたを産もうと決めた』は、逮捕後、重信さんによる法務局宛の上申書であり、娘に向けた自らの半生の告白であり、とても理解しやすいパレスチナ側から見た中東紛争のガイド本となっています。
日本赤軍が持っているイメージを覆すことは難しいでしょうが、少なくとも、本書で語られる言葉に目を向ける価値はあります。ただし注意しなければならないのは、これがあくまで法務局宛の上申書だという点。重信さんが、「日本人民に」本当に言いたいことは、もっと深くて重いはず…。
「これからも武装闘争を続けますか?」と聞かれて「私たちは今まで、その時代、その民衆が必要とする闘争をしてきた。今の日本はそれを必要としていない」と弁護士に答えた彼女は、社民党と市民団体と自身で政党を結党して、今後の活動の場を日本で…と考えていたみたい。でも盟主アメリカの真似っこで「テロには屈さない」とバカの一つ覚え、駅のゴミ箱を撤去して「テロ対策」と堂々としてるような現代日本では、日本赤軍の華麗なる戦歴は、それこそ極刑ものなのです。
僕のような心情テロリストにとっては、「抑圧された人民の語る言葉は銃以外にない!」という悲痛な宣言に120%共感を覚えます。また「ラスコーリニコフの苦悩」を真に(←ここ重要!)理解できた人ならば悲劇を恐れて、さらに恐ろしい悲劇を招く愚を犯さないように行動せざるを得ない時があることを知っているでしょう。重信房子、日本赤軍は「アラブの英雄」か? はたまた「国際的なテロリスト」か? 僕自身の評価は、いまさら書くまでもないでしょうが、とにかく多くの人に本書を読んでもらって、もう一つの側の考えを知ってみるのも良いと思う。そして、一刻もはやく、駅とか公園とか街中にゴミ箱を設置してもらいたい。テロ対策なんて糞食らえ。

フリー・重信房子!

頭脳警察「赤軍兵士の歌」を聴きながら。






Last updated  Feb 19, 2006 08:47:51 PM
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Feb 10, 2006
カテゴリ:書評
仕事が暇で暇で仕方がなかったので持ってた文庫本を一冊読み終えてしまいました。『「あさま山荘」籠城 無期懲役囚 吉野雅邦ノート』。
連合赤軍のCC(中央委員)吉野雅邦の親友であった著者、大泉康雄さんによる、連合赤軍事件の分析というよりは、吉野雅邦という人物についての評伝のような内容。こういう言い方は不謹慎かもしれないけれど、とても面白い。
本書は著者と吉野氏との幼少時代からの思い出や、手紙のやり取りなどから、かなり詳細に吉野雅邦、そして当時の若者の空気感を伝えている。吉野雅邦は恋人(実質上、妻)であった金子みちよの殺害に深く関与していて、僕はそこらへんの事情について知りたかったのだけど、正直、やはりこの本を読んでも良く分からない。恐らくは本人にだって良く分からないのでしょう…。でもこれは決して他人事ではない。いみじくも著者が語っているように、連合赤軍事件は、一部の狂信的な過激派の引き起こした特殊な事件などではなく、日本の(日本人の?)組織が抱え持つ構造的な欠陥が突出してしまった象徴的な事件なのだ。
「唯銃唯軍主義」「銃を軸とした遊撃戦」「銃による殲滅戦」そんな理論なき理論に拠って、行われた「総括」の嵐。十四名の同志を殺したというのは、確かに異常な事態ではあるのですが、僕らが属している組織だって根は同じなのだということを忘れてはならない。我々はみな潜在的に森恒夫であり永田洋子であり坂口弘であり坂東国男あり…そして何より吉野雅邦であるのだ。
「おれは吉野たちが引き起こした事件というものが、日本の組織の形態をもっとも生々しいかたちで見せつけたものという見方をしているんだ。戦争中の軍隊とか、いまの企業とか学校、あるいは家族といった単位にまでしみついている、自分たちを客観視できない閉鎖的な独善性。人間関係も理性的なものでなくて、自分たちにだけしか通用しない論理で互いに縛り合っていくような仲間意識。そういった組織が引き起こした象徴的な事件だと思う」というのは著者と吉野雅邦と深く親交を持っていた人物の話だが、まったく正鵠を射た意見だと思う。
連合赤軍事件…これは革命ではない。だが、これもまた革命のひとつの結果である。無血革命などというのは戯言に過ぎない。革命とは、すなわち戦争を意味するのであり、そこには当然、血が流れる。そこを批判するのはまったく荒唐無稽である。連合赤軍事件を批判するなら、その組織性についてでなければならない。組織の論理が、個人の論理を封殺するような有様は、まったくおぞましい限りだ。
だが、革命とはそういうものだ。前衛党の建設、そして前衛党による軍の創設。これなくして革命は成功しない。そして、そこにはやはり矛盾が宿っている。だから僕はアナーキストのままでいたいし、武装闘争の形態はテロであって欲しいと思っている。そしてそんなことでは革命は成就しないのも分かっている。
じゃあ、どうしよう? いやどうしようもないんだけどね…ほんと。






Last updated  Apr 18, 2012 09:59:06 PM
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Nov 29, 2005
カテゴリ:書評
なんで僕はこんなものにばかり惹かれてしまうのでしょうか…?
福満しげゆき『僕の小規模な失敗』というマンガなのですが…。
「このままじゃダメになる… すべてがダメになる 大いなる予感!」「恋愛ゲームに参加できず、学歴コースからも脱落し、現状打破をねらった漫画コンクールでは相手にされない、そんな主人公の将来は一体どうなる?」という帯の文句もあんまりなマンガ。「一体どうなる?」なんて聞かれても、「どうにもならないよ…」としか答えられません。
まあ誰しも身に覚えがあるはずの思春期の苦悩(身に覚えのないような人ととは絶対に分かり合えません!)が、悶々と続く。痛いなあ…。

僕が最近、同人誌用に書いた小説も似たような感じだったので、がっくり落ち込む。誰かもっと明るい話をしてください。もっと笑えるようなヤツを!






Last updated  Nov 30, 2005 01:42:09 AM
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Nov 15, 2005
カテゴリ:書評
en-taxi最新号の付録に『実録・共産党』の脚本がついている。
知ってる人は知ってると思いますが、『実録・共産党』は、深作欣ニ監督、笠原和夫脚本の『仁義なき戦い』の反体制アナーキストコンビによる、戦前の共産党の実態を東映実録路線で映画化しようとした幻の企画。
笠原和夫という取材魔の脚本家は、資料調査、実地調査はいうに及ばず事件関係者に直接話を聞きに行くほどの徹底ぶりで、特に歴史認識に関して、かなり異質なものを感じさせる。戦後民主主義、高度経済成長に対する疑惑が滲み出ている。そしてそのような視点はアナーキストでなければ得られないものなのです。
さて、『実録・共産党』の脚本は、渡辺政之輔、徳田球一を中心に、初期共産党の弾圧の歴史を、『仁義なき戦い』方式で描かれている。多分、映画化されたら『仁義なき戦い』の一作目に近い雰囲気の映画になったんだと思う。とにかく、最初からやたら人が死んでいく。しかもみんな若くて、20歳そこそこの青年達。関東大震災の際に次々と警察に捕まって処刑されていく社会主義者達。それでも活動を諦めない人々。治安維持法公布。渡政の死。芋づる式の逮捕。裁判。転向。そして太平洋戦争勃発。その間に社会主義者の若者達はいとも簡単に殺されていく。これはそんな青春の物語のようでもある。映画化されていれば、『日本暗殺秘録』に優るとも劣らぬ傑作となったことでしょう。






Last updated  Apr 6, 2012 07:09:19 PM
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Nov 8, 2005
カテゴリ:書評
仲間とやってる同人誌用の小説約50枚を書き上げへとへと。
そして通勤用に持ち歩いていた文庫本が中上健次『十九歳の地図』。ああ…なんかかぶってる気がする…。読んでて辛かった。中上健次は言うまでもなく天才ですが、今の僕にはこの内容はきついですよ。この主人公はまだ十九歳だから許されるけど、僕なんて…僕なんて…ああっ!
何もそんなに世界を憎まなくたっていいじゃないか? 世の中には素敵なことだっていっぱい溢れてるよ…多分。なんて。
しかし、何だって僕は中上健次なんて読み返しているのでしょうか…? なんかもっと軽いものを読みたくなってきた。それなのになぜか今手元に『「あさま山荘」籠城』なんて本が…読まなきゃいいのに、多分、明日ポケットに忍ばせるのでしょう。こんな自分が嫌だ。
もう少し、リラックスしないと、精神的にはちきれそうです。最近、疲れ易いからかなぁ…? 体力つけるために運動でもしようかな? なんて。

というか書評になってないね。
中上健次に関して、別に言うことなんてないけどさ。うらぶれた若者が読んだら、絶対、影響を受けると思う。中上健次の文体はよく「謳いあげるような」と評されるんだけど、僕が死ぬほど好きな『岬』あたりに較べると、まだまだ文体がこなれていない気もする(←不遜!)。この時点で充分に偉大な作家ですが、ここからさらにとんでもない大作を書くんですよね…この人。こんな化物には絶対に勝てっこないよ。別に勝負を挑む気すらないんですが…。しかし上手いですよね。公衆電話で世界に繋がってる(しかもネガティブに)、どうにもならない孤独な主人公の、その世界に対する無尽蔵の憎悪。ああー辛い。誰かオブラートちょうだい!






Last updated  Nov 8, 2005 10:10:57 PM
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Oct 25, 2005
カテゴリ:書評
銀河ヒッチハイク・ガイドの続編『宇宙の果てのレストラン』読了。
ああー! はやく続きが読みたい! 訳者の方、頑張ってください! 全5作完訳してね!
というわけで、「宇宙、生命、その他もろもろ」についての究極の問いと究極の答を求める(答は42と分かっている)地球の生き残りとヒッチハイカーと元銀河大統領と鬱型ロボットのSFコメディの傑作なわけです。
宇宙を支配する男、太陽に宇宙船を突っ込ませる大爆音ロックバンド、不必要なノータリン集団を冷凍睡眠させてどこぞの惑星に不時着する箱舟やらのエピソードが、おそらく今後の伏線になっているのでしょう。
僕のお気に入りのいつも調子が最悪で落ち込んでいるロボットのマーヴィンの見せ場が増えていて、にっこり。でもマーヴィン、敵に襲われた一行の囮にさせられたり、5760億3579年間置き去りにされたり、太陽に突っ込む宇宙船に取り残されたりして、あいかわらず可哀想(笑)。というか、その宇宙船から逃げ出せたのかどうか不明。まさか死んじゃってないとは思うんだけど、うーん…やっぱり続きが気になるよー!

本書中マーヴィンが最高に輝いていたやりとりを引用

「いい加減にしてよ、このネジのゆるんだみじめったらしい鉄くずが……」
「どういうご用件ですかって訊いてくれないんですか」
昆虫は口をつぐんだ。細長い舌が飛び出し、目玉をなめて、また引っ込んだ。
「訊く意味があるの?」
「この世に意味のあることなんてあるんですか?」マーヴィンは即座に答えた。
「どう、いう、ご用件、です、か?」
「人を探してるんです」
「だれを?」昆虫はきいきい声で尋ねた。
「ゼイフォード・ビーブルブロックスです」とマーヴィン。「あそこにいるあの人」
昆虫は怒り狂って全身を震わせた。口もきけないほどだった。
「知ってるのなら、なんだって訊くのよ!」
「ただ話がしたかったんです」マーヴィンは言った。
「なんですって!」
「情けない話でしょ?」

ははは……ほんと最高に可愛い奴ですね、マーヴィン。






Last updated  Apr 13, 2012 11:07:39 PM
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Oct 16, 2005
カテゴリ:書評
映画がすっかりお気に入りなので原作も読んでみました。ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』。なぜか新宿あたりの大きな本屋の店頭にも置いていなくて、注文しようかな…と思ってた矢先、神田の岩波ブックセンターで発見しました。
内容は映画と大体同じ。でも映画で大きく取り上げられたイルカのくだりは、原作ではあまり重要な部分ではなかったみたい。僕としては鬱型ロボット・マーヴィンの台詞が映画より多いので、それを楽しみに読みました。マーヴィンは本当に可愛い奴です。
「先にお断りしておきますが、わたしはとても気が滅入っています」これが登場して最初の発言です(笑)。「うっとうしいやつだと思ったでしょ?」「うっとうしいやつだと思われたくないんです」「これ以上に悪くなりようがないと思うと、とたんにもっと悪くなる」「話をしたいふりなんかしないでください。あなたがわたしを嫌っているのはわかっているんです」とかとかとか…大好きだー、マーヴィン! 
映画のテンポのはやい展開で、うっかり見落としていた部分というのも、これを読むと理解の助けになるはず。地球の本当の役割とか、ゼイフォードの人格とか、ヴォゴン人の詩の内容とか(これは別にどうでもいいけど)…。
しかしダグラス・アダムス面白いです。早川から出てないので、すぐ絶版になってしまったらしい(新潮社め!)。ヴォネガットを心優しいニヒリストと呼ぶなら、ダグラス・アダムスはニヒルなモラリストってところでしょうか? まあ典型的なイギリス人とでもいうべき皮肉の効いたユーモア。コメディなのでSFマニア以外の方にも受け入れられて然るべき傑作でしょう。なにはともあれマーヴィンです。さっそく続編『宇宙の果てのレストラン』を読みます。






Last updated  Oct 16, 2005 11:00:53 PM
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Oct 4, 2005
カテゴリ:書評
なんだこれ…面白過ぎる…!

木村哲人『テロ爆弾の系譜-バクダン製造者の告白-』読了。
テロルの恐怖が吹き荒れる、こんな時代にこそ読んでおくべき一冊だと思います。著者の木村哲人さんは映画、テレビ業界で録音技師として活躍した人らしい。いわゆる技術者。ひらたく言って機械オタク。木村さんの書いた音響効果の解説『音を作る』はアホンダラ三谷幸喜の『ラヂオの時間』の原作になったらしい…。

この物騒なタイトルの本の骨子は4点。
(1)タイトル通りテロ爆弾の歴史的考察。
(2)著者本人の爆弾製造と、そこに絡んでくる共産党、そして何者かによる陰謀。
(3)『球根栽培法』にまつわる謎。
(4)日本のテロおよび暴力革命神話の解体。

(1)に関しては、モロトフのカクテル(火炎瓶)から始り、ロシア革命で皇帝を爆殺したグリネイド(着発式手投弾)を発明した天才キバリチッチの挿話、そして日本における鯉沼九八郎の爆裂弾そして自由党の顛末などが描かれる。

(2)こそ最もスリリングな部分。子供の頃から機械好きだった著者は戦時中の雰囲気に影響されてか、兵器マニアでもあった。幸い叔父さんが軍の兵器廠に勤めていたり、かの鯉沼九八郎の爆裂弾の製法が伝わっている家だったりした(なぜ伝わってるかは本を読んでみて!)りで、環境的には万全。
さて昭和26年、19歳の木村さんは、共産党の友人がいて、ある日『球根栽培法』というパンフレットを見せてもらう。これは当時の共産党がゲリラ戦に備えて党員に配ったといわれる武器製造パンフレットであり後の『栄養分析表』や『腹腹時計』のルーツであると言われている。しかし木村さんは『球根栽培法』を読んで「インチキだ」と憤慨する。兵器マニアの木村さんにとっては、あまりにもお粗末で実用に耐えず、間違いだらけの内容だったのだ。それでその友人に『球根栽培法』を返し、その内容を貶したところ、日共地区軍事委員会の会議に呼ばれる(!)。そこで『球根栽培法』の誤りを指摘したところ、「じゃあ、実用に耐える爆弾を作ってよ」と頼まれてしまうのだった。そこで木村さんは鯉沼式爆裂弾と地雷を作り、共産党員を驚嘆させる。「血のメーデー」直後のある日、日共中央軍事委員会から接触があり、「君は今日から中央直属の武器研究員だ」と言われてしまう。アジトと資金を調達してもらい、木村さんは学校にも行かずに爆弾研究にあけくれ、ついに着発手投弾を完成させる。だが、ある日突然、木村さんはアジトの一室に監禁されてしまう。その頃、共産党内では武力路線が衰えていた。殺されると思った木村さんは持っていた睡眠薬を服用して自殺を図るが一命は取り留めて病院に担ぎ込まれ、ことの真相は有耶無耶のうちに終ってしまう。だが間違いなく木村さんはスパイによって共産党中央から隔離されていた。公安による仕業か、共産党内の非武装派の仕業か、謎は明らかにされないが、ともかく共産党の軍事組織である中核自衛隊は何の武装も持つことは出来なかった。もし木村さんがスパイの罠に落ちることなく共産党のキバリチッチ、鯉沼九八郎となっていたら……。

(3)そして件の『球根栽培法』の謎。なぜこのようなインチキ教本が共産党内部で出回っていたのか? 木村さんは、独自の調査で、おそらくこれが、旧日本軍スパイ養成学校、陸軍中野学校とアメリカ軍の知識を援用したものだと推測。要するにこれも武装路線に走る共産党を内部から武装させないためのスパイ工作に他ならないというのだ。これが事実ならば、いまだに、おどろおどろしく語られる『腹腹時計』なども、実は体制側のデコイなのかもしれない。

(4)そして、最も重要なのがこの点、日本のテロの幼稚さ。木村さんは過去に作られたテロ爆弾を実際に再現し、実験し、そして共産党の実情や、不可解な陰謀に巻き込まれたりして、日本の革命家たちの無知、浅慮について思い知らされる。例えば、大逆事件に使われるはずだった爆弾を再現したら、直径3センチほどの花火程度の玩具が出来あがった。こんなもので人を殺すことは絶対に不可能なのだ。それを事前に大した実験もせず、大言壮語を吐いて、天皇殺害を企図し、結果、幸徳秋水以下24名が刑場の露と消えるのである。日本の革命家は理論家になろうとしてばかりで、技術者になろうとはしない。それが問題だ。共産党の軍事組織が聞いて呆れる、何が中核自衛隊だ。銃も爆弾も地雷も作れずに鉄パイプを振り回して武装革命だなんて、それは革命ではなく、革命ごっこではないのか? 著者はそう言いたいのだ。

木村さんの作った爆弾は使用されなかった。木村さんはテロを肯定しているわけでもない。木村さんは兵器マニアで機械好きなだけで、特定のイデオロギーのシンパなわけではない。無差別テロを憎んでいる人だ。だが、テロを否定してるわけでもないのだ。
一発の爆弾で世界が変わることがある。もし、本当に世界を変えなければならない事態がやってきたら、あなたは爆弾を投げる勇気があるのだろうか? 僕は?

「憎しみのためのテロに荷担することはできない」と有島武郎はギロチン社のメンバーに資金カンパした時に言った。ロシア革命の際、皇帝を爆殺したソフィア・ペロヴスカヤ、この若い美貌の女性は何不自由ない貴族の生活を捨て無残な死と隣り合わせのテロリストの道を選び、爆弾に倒れた皇帝の身体を抱いて泣き「はやくお医者を!」と叫んだ。それから「貴方はお父様のところへ旅立つのよ、それはロシア人民のためなのです」と言った。心優しきテロリストたち…。

テロ…。もちろんそれは殺人であり犯罪である。だが、人間にとって最も大切なのは「必要な時に必要なことをする勇気」ではないのか? だったらテロでしか権力に対抗する手段がないときに、それをしないのは怯惰なのだ。そしてテロは大衆の支持が必要だ。それがなければ、それこそテロリストは、ただの殺人者でしかない。心優しきテロリストたち、あなたがたは今誰と戦っているのか? 願わくば、あなたが憎しみのため、人を殺していないことを…。






Last updated  Apr 10, 2012 02:49:31 PM
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