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風子の575 あるがままに

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2020.06.14
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カテゴリ:文人趣味


おいのくせせんじのはなしかしわもち  風子​

かしわ餅に年寄りの昔話を持ち出したのは
食い物に困った時代だったという訳ではなく
忌まわしい記憶があるからだ

前にも書いたが
1945年昭和20年敗戦間際のこと
当時の絵日記を紛失したので
月日は定かではないが
今頃の時期であったろう

3月ごろから隣町はじめ県内各地へも
米軍機B29による空襲が始まり
警戒警報についで空襲警報が流れると
子供心にも危険を感じ始めてはいた
そんなある日
授業中に空襲警報がでて
急ぎ下校することになった

ところが偶々その日は
4kmほど離れた母の実家で
野上がりにかしわ餅(この辺ではいばら餅が多い)を作るから
学校帰りに食べにおいでと
祖母から招かれていた

野上がりというのは
田植えなど農作業が一区切り付いたときの行事で
かしわ餅などを作りねぎらう

「かしわ餅」の誘いに食い意地がでて 
愚かにも空襲警報下なのにまっすぐ帰宅せず
一目散に祖母の家に向かった
畷(なわて)を越えれば祖母の村というところで
左上空に米艦載機グラマンの爆音がし
編隊が近づくのが見えた

一軒の軒下に身を寄せて
頭上を飛び行くのを見やってから
一気に上り下りのある畷を駆け降りた
その時
編隊から遅れたのであろう
一機のグラマンが近づくのが見えた
一帯は田植え後の田圃で遮るものはなにもない
ぼくの姿ををとらえたのか
急降下し迫りながら機銃掃射を浴びせてきた
鷹に襲われたネズミのようなものだ

少し左から機銃掃射による水柱が
凄いスピードで迫ってくる
万事窮す!
路肩の草むらに伏せたぼくの眼前を
銃弾が砂利を弾き飛ばして行く
わずか数秒の間だったと思う
生きた心地がしないとはあのことを言うのだろう
黒い機体が低空でぼくを覆うように迫った瞬間は
黒い機影で周りが暗くなったのを覚えている
助かった!と思い首を回して見上げると
急上昇し飛び去るグラマンの機中に
見下ろしながら笑うパイロットの顔がはっきり見えた
今も鮮やかに蘇る嫌な記憶だ

近所の子は皆帰宅しているのに
行方知れずのぼくを心配して
なんども家を出入りしては
待っていた母に
かしわ餅のお土産を手に
のんきに帰宅したぼくが
こっぴどく叱られたのは言うまでもない

「親という字は木の上に立って見ていると書くんや」
それぐらい親は子のことをいつも心配しとるんや
忘れるでないぞ、と
繰り返し言われたことは
母についに話せなかったあのときの恐怖とともに
忘れることはない
九死に一生を得て
食べた柏餅(いばら餅)の味とともに…

* 関西では柏の葉で包むかしわ餅でなく
サンキライ(サルトリイバラ)の葉で包む
いばら餅が一般的だ
また、いま一般にかしわ餅といわれているのは
本来はいばら餅であり
柏餅の原点はいばら餅であったという
ややこしい話は
また別の機会にしましょうウィンク





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最終更新日  2020.06.14 13:31:49
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