鈴木元『ポスト資本主義のために マルクスを乗り越える』
著者の略歴に「日本共産党専従職員」とあるが、今もその所属なのだろうか? そうだとすると、現役時代に知っていた共産党から考えると、絶対にあり得ないような発言に満ちている。客観情勢のなせる技か、お互いに年齢を重ねて、こだわりというものが消えてしまったのか、驚きながら一気に読んでしまった。認識において、私のそれとは殆ど変わりはない。言うべきことをはっきり言ったという感じである。 「はじめに」であきらかにされているように、1戦後「社会党・共産党」が前進した理由、2.80年代以降に後退した理由、3その再生の道、4ポスト資本主義、5マルクス流の「共産主義」は政党の政治目標になりうるか、6まずは「北欧型福祉国家」+「南欧型協同組合運動」、7現代とはどういう時代か、8日本はなぜ停滞・衰退したのか、その克服方向、9コロナ後の世界、10気候変動の大分岐ーー人類文明の存続が問われている、11社会主義国について、の命題が記述されている。 「ポスト資本主義的共同社会」は人類と自然が共生し、地球市民として人類共同体を追求する、違いを超えた平等社会である。結論を言えば簡単なようだが、乗り越え(アウフヘーベン)は様々な要素がどのように対立し統一しているか、その実態を分析する(弁証法)ことが重要である。その真摯な考察がなされていると思う。