2006/01/30(月)00:28
「武家用心集」乙川優三郎
最近読む時代小説の作家さんの中で好きなのは
宇江佐真理さんと、この乙川優三郎さん。
乙川氏の本は装丁も好きなんですよねぇ。
この「武家用心集」は、現代社会にも通じるテーマを時代小説に仕立てた
感じのする短編集でした。
自分の仕事と職場内での有り様とか、肉親や世間とのしがらみとか、
親の介護のこととか…。
それぞれの主人公が深く静かに自分の有り様をみつめ、生きようとしている姿を描いています。
この本の中では、親の介護をめぐって兄夫婦と夫の間で板挟みになり
揺れ動く女性を主人公にした「しずれの音」が印象に残りました。
うちの母親のことを思わせたからだと思うのですが。
いつの時代も人が悩むことというのは変わらないものなのだなぁと
思ったり。
私は乙川氏の文章を読むと、“静謐”という印象が残ります。
時代小説好きなのでいろんな作家さんのものを読みますが
この“静謐”さにかけてはピカイチだと思います。
時代小説はあまり読まない人でも、いけるんじゃないかな。