『ドキドキのお披露目会』(BACK NUMBER)
アラフォー帆走生活(KAZI連載)November,2016text by Koji Ida---------------------------------------『 ドキドキのお披露目会 』---------------------------------------9月22日。テレビのチャンネルを回すと、Bリーグの開幕戦をやっていた。長らく分裂していた日本のバスケットボール界が統一されて、新たに発足したプロリーグのお披露目ゲームである。 会場の代々木体育館は超満員だ。試合前の派手なショーイベントが、観客や視聴者の期待を強制的に高めていく。おいおい、こんなに盛り上げちゃって大丈夫ですか。肝心の試合がどちらかのワンサイドゲームになったら、目も当てられない大失態ですよ。 そんなふうに、一視聴者の僕ごときが心配してしまうのだから、主催者側はどれほどドキドキしたことでしょう。結果的に、それなりの接戦になって良かったですね。Bリーグが成功するかどうかはこれからの頑張り次第ですが、日本のプロスポーツに新たな可能性が生まれたことを素直に喜ばしく思います。 ところで、バスケットボール界のドキドキは、セーリング界にとっても他人事ではありません。そうです、11月18日から始まる「ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ福岡大会」が近づいてまいりました。日本開催のニュースが発表されたときには、本当にぃ?と疑う気持ちもあったのですが、この原稿を書いている今(10月初旬)、イベントウェブも公開されて、観戦チケットのインターネット予約も始まりました。ここまで来ると夢ではないのですね。つねった頬もズキズキと痛みます。 勤め先の転勤で一昨年から福岡に住む僕ですが、まさかこんな近くでアメリカズカップを観られるなんて。きっと僕にはセーリングの女神が付きまとっているに違いない。死ぬまでに観ることはないだろうと思っていたビックイベントが、自宅から徒歩2分のゲレンデにやってくるのですから。 福岡では新聞の折込チラシでも観戦チケットの購入を募っており、職場の同僚たちの間でも「ねえ、ビーチで観るだけなのに、二日間で1万2千円って高くねぇ?」と話しておりました。まあ内容は別にして、ヨットレースのことが巷の話題になるのはうれしい限り。周囲のいろんな人にセーリングの魅力を伝えたい僕にとって、このチャンスは、カモではなくて、カタマランがネギ背負って飛んできたぞ、という気分です。 しかしながら、ここまで周囲が盛り上がってくると、心配なのは風なのです。こればかりは誰もコントロールできません。もしもレースの本番がベタ凪の無風だったらどうしましょう。逆に吹きすぎてレースできないっていうのも困ります。ここで失敗したら、次の機会は来ないかもしれない。ちゃんとした風が吹きさえすれば、空飛ぶモンスターヨットたちが迫力満点に博多湾を爆走して、ギャラリー全員を興奮させるのは間違いないのだ。ああ風よ吹け、風よ吹け。吹いてください、お願いします。ずっと僕に付きまとっているセーリングの女神様、どうかお願いいたします。 きっと本番当日まで、このドキドキ感は続くのだろう。バスケットボール関係者の気苦労が、身に沁みて分かる今日この頃なのです。■