入院生活その2
病院の個室で朝を迎える。白い無機質な感じの小部屋だけれど、トイレやなんとシャワーまでついていて、小綺麗な印象だった。ERから病室に移るまで、娘はぐったり目もうつろだったのに、薬のせいか、明け方突然目を覚まして、おしゃべりを始めた。目覚めた途端、窓の外の夜景の光を見つめ、「♪twinkle,twinkle,little star~」と歌い始めたので、仰天。お陰で付き添いの私は身体を休める間もなく、娘の傍らで共に歌を歌い続ける羽目になった。こうして病院で朝を迎えるのは出産以来。病院の朝は、空気の流れががらっと変わる、その瞬間に立ち会えるような感覚がある。夜勤のナースは帰っていき、新顔のスタッフがにこやかな笑顔で仕事を始める。人が変わると、そこの空気もすうっと色を変える。アメリカの病院でびっくりしたこと。食事がオーダー制だということ。ちょっとしたレストランのようなメニューが置いてあって、自分で内線をかけてオーダーする。中身もサラダからシリアルから、サンドイッチ(パンの種類や中身まで選べる)、メインディッシュ、デザート、、、などなど。病院食とは思えない。そして、きちんと正装したウェイトレスさんがトレイに載せて運んでくれた。味もしっかり美味しかった。どうも病院で食べると味気なく感じるし、徹夜明けは体自身が麻痺している感じだったけど、、ほかにもオレンジジュースや、クラッカー、なんとコーラまでナースがくれたりした。夫は喉が渇いて、コーラをもらって驚いていた。日本ではそんな身体に悪いもの、考えられない。。アメリカ人のコーラ好きはここまで浸透しているのか。朝の検診の結果、陽の肺炎は思った以上に広がっており、もう一泊病院に入院することが決まった。昨晩2時過ぎに一旦家に戻った夫は、娘と私の着替え、おもちゃ、そしてstarbucksのコーヒーをおみやげに病室に現れた。口に馴染んでいるはずのコーヒーは、普段より苦く身体に染みる。もう一泊。可哀相だけれど、こうなったら病気をきちんと治すしかない。昨日の元気のなさから一転、娘は病棟ではりきって走り回った。右手には点滴をぶらさげながら。小児科病棟にはplayroomがあって、おもちゃが山のように置いてあった。娘は狂喜乱舞で、その部屋に入り浸り、これが肺炎患者かと思うほど喜んで遊んでいた。昼。ママ友達の一人が、ドーナツ・果物を山のようにもってお見舞いに来てくれた。彼女は2人目の赤ちゃんを妊娠中で大変な時期。その気持ちに、本当に胸がいっぱいになった。彼女は、実は前の日ERにも来てくれていた。在米3年でもうベテランさんで、何でも一通り知っているので、本当に助けられた。きちんと行き届いた人で、頂いたバックの中に果物ナイフまで入っていて、その心遣いに感動した。こういうことができるのは、すごいことだ。「こういうとき、人の優しさの意味がわかるね」夫とそう話しながら、グレープフルーツを剥く。しゅわっとした柑橘の香りが白い病室に広がる。娘は2つ目の点滴が終わり、遊びつかれたのかベットでうとうとはじめた。もう一日。そう思うと、気が遠くなりそうで、心から家のベットが恋しかった。肺の黒い影がにくたらしい。徐々に小さくなってくれ、、と点滴を祈るような気持ちで見つめた。