キタハム 十六夜の月十六夜の月9月6日の夜、キタローは神社のジャングルジムの上で一人佇んでいた。 (この先、どうなって行くのか・・・) ため息を漏らしてまだ満月に近い頭上のそれを見上げる。 昨日は6度目の満月を迎え、新しい仲間と共に無事シャドウを倒すことが出来た。 しかし、ストレガという組織や仲間と思われる昨日の少女の出現など目まぐるしく変化していく非日常に、自分はリーダーとして上手くやっていけるかどうか。 そんな疑念が頭をもたげてきたのだ。 (だが、リーダーたるもの弱音など吐いてはならない・・・) そんな心の迷いをSEESのメンバーには見せたくなくて、 折角の日曜日にもかかわらずこうして一人ジャングルジムの上で月を眺めてはため息をついていたのだった。 「・・・ヤッホー」 そんな自分に声を掛けてきた人物がいた。 「ハム子・・・」 ハム子。自分と同じペルソナを持つ不思議な少女。 キタローはハム子のことをそんな風に感じていた。 「ちょっと手を貸して。・・・よいしょっと。ありがとキタローくん」 「どういたしまして」 どういう訳だか、この少女。声を掛けるな否や自分の隣に腰をかけて来る。 強引とも言える行動なのに何故かそう思わせないのが彼女の強みだな、とキタローは常日頃思っていた。 「月が綺麗だね」 「うん」 キタローが見上げていたそれをハム子も見上げ呟く。 「満月じゃないんだよね」 「うん」 束の間の沈黙。 「満月を十五夜っていうから、今夜は十六夜(じゅうろくや)。別名は十六夜(いざよい)」 次に口を開いたのはキタローだった。 「キタローくん詳しいね。でも、なんで十六夜(いざよい)って言うんだろ?」 「昔の人は、この十六夜の月を見て『人の心が揺れ動く様』つまり『いさよう気持ち』とかけてそう呼ぶようになったみだいだ」 「人の心が揺れ動く様、かあ・・・。昔の人って詩人だね」 「うん。・・・でも、人の心は昔も今もあまり変わってないかもな」 思わず、意味深に言ってしまう。 「・・・キタロー君も、揺れ動いてるの?」 「揺れ動くって言うか・・・。うん。まあそんな感じかな」 しばらく間をおいて、そっか・・・。とハム子のつぶやく声が聞こえた。 「・・・リーダーって、大変だもんね」 「え・・・」 まるで自分の心を見透かされたかの様な言葉に驚く。 と、不意に左手に温かな感触が伝わってきた。見る間でもなく、ハム子が自分の手を握ったのだと分かる。 ・・・温かくて、柔らかい。 「でも大丈夫。みんなや・・・、もちろん私もいるよ」 「ハム子・・・」 ギュっと、手のひらに力が込められる。 どうして、この子は自分の思っていることが分かったのだろう。 どうして、この子の「大丈夫」という言葉ひとつでこんなにも気持ちが楽になるのだろう。 目が合うと、ハム子がふわりと微笑んだ。 その笑顔に、キタローは自分の心臓がドクンと跳ねるのを感じる。 「あ、ありがとう・・・」 思わず述べたお礼の言葉が上擦ってしまった。自分の今の気持ちも伝わってしまっただろうか・・・? 「じきに影時間になるし、そろそろ帰ろう・・・」 なんとなく気恥ずかしくなって、キタローはすぐにその視線を外すとジャングルジムから飛び降りる。 「あ、待ってよキタローくんっ・・・!」 ハム子もキタローに続いて降りようとする。 が、ちょうどハム子が降りようとしたその時。月が雲間に隠れてしまった。 「わっ・・・!」 「え?」 周囲を照らしてくれていた月明かりが無くなってしまい、ハム子はバランスを崩してしまう。 転ぶ。 そう思った瞬間、キタローは咄嗟に腕を伸ばした。 「危なかった・・・」 「・・・うん、ありがと」 どうやら転ばずに済んだようだ。自分の腕の中におさまるハム子を確認して一安心すると同時に、ふと思う。 9月のそして夜とはいえまだまだ暑い季節なのに、このままでいたいと思ってしまうのは何故なのだろうか、と。 (せめて、少しの間だけでも・・・) 雲間から月が顔を出すその時まで・・・。 いつまでそうしていただろう。長いとも短いとも言える時間の中で、二人は抱き合ったまま佇んでいた。 やがて・・・。 「・・・帰ろう」 再び月の光が二人を照らし出すのを合図に、キタローはゆっくりとハム子から離れる。 「・・・うん」 月の光に照らされたハム子の顔はほんのりと赤くなっていた。 そんなハム子を見て、再び離れがたく思ってしまうのは何故だろうか・・・。 (・・・この気持ちは、きっと十六夜の月の所為だ・・・) そう、自分に言い聞かせるキタローであった。 初キタハム。イモットが書いたテーマが「月」とのことだったので(その他雨とかあったけど)書いてみました。 ちなみに、二人の設定は「同一存在」ということで本来は、平行世界としてキタローかハム子の世界になるのかなあ、と。 何らかの形でキタロー世界の一通りの様子(一週目)を知っているハム子が同じ世界にいる、という感じですかね。詳しくはまた書けたらと思います。 ちなみに「お互い気になっている存在」というぐらいの関係です。 ペルソナ3小説へ戻る ジャンル別一覧
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