その5

その5     初めてのお散歩
 ワインが我が家へやって来た一週間後に、初めてのお散歩に行きました。まだ予防接種が終わっていなかったので、本当は外へ連れ出すべきではなかったのですが、もう夫が待ちきれなかったのです。
「犬を飼ったら、オレが散歩に連れてくからね」
と常々言い募っていた夫でした。
「だっこして連れて行けばまあ大丈夫だよね」
 小さい頃から車に乗せて酔わないように育てたかったので、この日もドライブを兼ねたお散歩にしました。あまり遠い所に出掛けるのも子犬には負担でしょうから、比較的近い「光陵公園」というところにしました。この公園はバラが美しいのですが、この時はツツジが咲き乱れていました。花に近づけると、甘い臭いがするのか、しきりにくんくんと臭いを嗅ぐワイン。
 無事に予防接種も終わった後には、実に熱心に夫はワインを散歩に連れて行きました。でもそれは数ヶ月で飽きてしまったようです。子犬時代のワインは毎朝40分ぐらいのハードな散歩をこなしたわけです。このためにかなりの筋肉がついたのではないでしょうか。
 今考えてみると、あそこまでハードな散歩はダックスフンドには必要なかったと思います。ヘルニアを発症する子が四匹に一匹と言われているダックスフンドですから、何事も無理は禁物だと思います。
 犬を飼ってみて気がついたのですが、わたしは犬の散歩があまり好きではないようです。週末に夫とワインと散歩をすることは大好きでしたが、ひとりで犬を連れて・・・というのがどうもダメでした。でもそんなことも言っていられなかったので、途中からはわたしがお散歩担当になりました。
もともと臆病なところのあるワインは、初対面の人も犬も苦手というタイプに育ってしまいました。本当に小さいときに、ほかの犬や人にたくさん接することができればよかったのですが、犬を飼っている近所の知り合いなどまるでいなかったこともあって、性格そのままに大きくなってしまったようです。もっとあの手この手で、人や犬に慣らせるべきだったと後悔しても始まりません。
お散歩中に、わたし自身はよそのワンコと遊びたいのです。ところがワインときたら
「恐いよ~やだよ~あっち行くう」
という態度を取りますから、よその犬の飼い主さんたちは
「あら、ワインちゃんは恐がりなのね、ごめんなさいね」
と、さっさとどこかへ行ってしまいます。
 本当にこれはがっかりなことでした。ダックスフンドのメスに、このタイプが多いような気がします。もちろん性格的なものですから、誰にでもすぐなつく子もいます。
 いつか大きな犬も飼いたいと言う夫ですが、散歩のことを考えるとわたしはパスです。
それはずっと先の、定年退職した後にしてね!




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